【第2回】地域を元気に!社会福祉法人による連携・協働ーハッピー餃子ぱんからの地域のエンパワーメント
社会福祉法人寿徳会
- 分野 障害 /
- エリア秦野市 /
- 推進主体 社会福祉法人・事業所 /

人気ベーカリーを制し、パンのイベントでシルバー賞を受賞した「ハッピー餃子ぱん」。これには、地域を元気にする社会福祉法人の連携・協働によるアイデアと、利用者のエンパワメントを引き出す仕掛けがありました。
今回は、社会福祉法人寿徳会のハッピーラボに取材に伺いました。
地元食材を活かした餃子
秦野市にある(福)寿徳会ハッピーラボは、知的障害のある人たちによる餃子の製造を中心とした障害者就労支援施設です。地域の就労の場としての期待を受けて、平成28年に開所されました。ここで作られる「幸せ餃子」の製造では、地域に密着した活動が行われています。
「自然に恵まれている秦野には、おいしい野菜などの特産品があります。特に神奈川の名産100選にもなっている高座豚と新鮮なキャベツを使った『幸せ餃子』は、地元に人気の商品です。市内のいくつかのお店に餃子を納品しているのですが、もっと販路を拡大できないかということは、常に考えてきました」と、サービス管理責任者の西山さんは言います。

真剣に餃子を作る利用者の皆さん
コロナ禍の逆境での販路拡大
コロナ禍では外出を控える人が多く、ハッピーラボに餃子を買いに来る人は少なくなりました。
以前からインターネット販売をしていたものの、人の流れが少なくなるコロナ禍で販売数を保つためにはどうしたらいいか―。思いついたのは自動販売機での販売です。ハッピーラボが、大きい道路に面しているメリットを活かしました。これで人との接触なしに24時間餃子を購入してもらうことができます。さらに、おうち時間を過ごしている人や在宅勤務をしている人のところに出向いて販売するアイデアも出ました。そこで、コロナ禍で地域のイベントや福祉施設の催しが無くなり、出番が減ったキッチンカーを利用して、一度に効率よく売り上げられるよう、タワーマンション前をターゲットにした移動販売を始めました。
こうしてコロナ禍の逆境をチャンスに変え、人々を楽しませた餃子は、さらに地元の人に愛される人気商品になりました。なお、この「幸せ餃子」は秦野市のふるさと納税の返礼品にもなっています。
コラボで誕生「ハッピー餃子ぱん」
さらに販路拡大へのチャレンジは続きます。温めていたアイデアの一つは「餃子を挟んだ餃子ドッグ」。しかし、何度試作しても、なかなかうまくいきませんでした。そんなとき「湘南みかんぱん」など数多くのヒット商品を手掛けるサンメッセしんわ((福)進和学園)でも、パンの商品開発に試行錯誤していましたが、日頃、給食の食材として購入していた「幸せ餃子」を見て、パン生地でさらにまるごと包むというアイデアが生まれ、餃子に合う生地の試作を重ねた結果、鶏がらスープを生地にねりこんだ新感覚の総菜パンが完成。ハッピーラボとサンメッセしんわによるコラボ商品「ハッピー餃子ぱん」が誕生しました。


利用者の皆さんの思いがつまったハッピー餃子ぱん
サンメッセしんわは、この「ハッピー餃子ぱん」を目玉商品に、本年3月に横浜赤レンガ倉庫で開催された日本最大級のパンの祭典「パンのフェス2023春」に出店。その中の「アワード2022」にエントリーし、並み居る全国の人気ベーカリーを制し、新しい時代を担うパンに与えられる「ぱんてな賞」を受賞。また来場者が投票で選ぶシルバー賞もダブル受賞するという快挙を成し遂げました。その発表を聞いた利用者の皆さんは大喜び。自分たちが作った餃子が入ったパンがメディアに取り上げられるたび、「もっと売れるといいね」と、期待が膨らみます。
餃子が売れれば、自分たちの工賃に反映されるということ理解している皆さんにとって、仕事のモチベーションとやりがいにつながっているようです。
農家との連携を通じた障害者理解
一方、秦野市では、地域の特性を踏まえて農福連携を進めています。
西山さんは言います。「市主催の農家さんたちとの意見交換会に出席した際、障害者雇用でうまくいかなかった経験がある農家さんもいました。畑の草刈りを依頼したら『雑草ではなく、植えた苗の方を引き抜かれてしまった』のだそうです。そこでは、こう説明しました。障害のある人でも作業が理解できるよう、例えば、抜いてはいけない苗の場所をマーキングしてから作業を始めるなど、環境を工夫することによってできるようになりますよ、と」。
障害のある人の就労支援の場では、周りのちょっとした工夫で苦手としていたことが得意なことに変わることもあると言います。できないことに着目するのではなく、少しのサポートがあることで、本人の「できる」が広がることを地域の人たちに伝えていきます。
ここでは、障害特性があること、必要な配慮事項があること、これらを伝えることで障害に対する理解を促していくソーシャルワークの取り組みが行われています。
地域共生社会に向けては、地域の資源や多様性を活かしながら、人と人、人と社会がつながり合う取り組みが生まれるよう、環境を整えることが求められています。
地域の元気と利用者のエンパワメント
ハッピーラボとサンメッセしんわ、各々の生産品の強みを生かした「ハッピー餃子ぱん」は、法人という枠を超えた緩やかな協働によって生まれました。メディアに取り上げられたことで、遠方から餃子やパンを求める人が訪れており、これから、秦野や平塚の地域を盛り上げていくことでしょう。
さらに「ハッピー餃子ぱん」の売り上げが伸びればハッピーラボの餃子の出荷量も増え、利用者の工賃に反映されます。工賃アップはもとより、製造したものが社会から高い評価を得ることは、利用者の皆さんの大きなエンパワメントにつながっていくと考えられます。
キッチンカーが出動する日は「今日も餃子を沢山売ってきてね」と、利用者の皆さんからの声援と大きな期待がかけられています。(企画課)
今回取り上げた「幸せ餃子」は、売上の一部が様々な福祉活動に使われる赤い羽根・寄附つき商品です。詳しくはこちらまで
- ホームページ:幸せ餃子