福祉タイムズ
Vol.882(2025年5月号)
このデータは、『福祉タイムズ』 Vol.882(2025年5月号)(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。データは、下記リンクからダウンロードが行えます。
テキストデータ作成に当たって
このデータは、『福祉タイムズ』 vol.882 2025年5月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。
二重山カッコは作成者注記です。
P1
福祉タイムズふくしTIMES
2025.5 vol.882
編集・発行社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会
Contents
特集 P2 制度の狭間をつなぐかながわライフサポート事業CSWの取り組み-地域と共に育む支援ネットワーク
NEWS&TOPICS P4 本県における外国人高齢者の調査から見えたこと-外国人も安心して老後を迎えられる共生社会へ 多文化高齢社会ネットかながわ(TKNK)
企業の社会貢献活動 P9 「みつばち」の力で広がる社会貢献活動の輪 アズビル株式会社 azbilみつばち俱楽部
県社協のひろば P10 議論を積み重ね社協のコミュニティソーシャルワーク力を高める-令和6年度社協ゼミナールの取り組み報告
今月の表紙
藤沢市明治地区民生委員児童委員協議会の会長を務める三觜壽則さん。
地元で曳家(ひきや)工事の建設会社を営む傍ら、普段は4人の息子さん、9人のお孫さんに囲まれながら楽しく暮らしている“普通のおじいさん”でもあります。詳しくは12面へ→(撮影:菊地信夫)
P2
特集
制度の狭間をつなぐCSWの取り組み-地域と共に育む支援ネットワーク
かながわライフサポート事業
平成25年度に開始した「かながわライフサポート事業」は12年目を迎えます。今号では、令和6年度の相談支援の状況と、生活の困りごとを抱えた方々に対し地域の支援者とつながりながら相談支援に取り組み、関係者とともに「地域のチカラ」を育む本事業のコミュニティソーシャルワーカー(以下、CSW)の姿をご紹介します。
事業の趣旨
かながわライフサポート事業は、本会経営者部会の「社会福祉法人の使命、原点に立ち返り、目の前の困っている人に何かできないか必死に考え、実践していくべきではないか」という声を契機に創設された、社会福祉法人による地域公益活動です。
令和7年4月時点で県内81の社会福祉法人が参加し、生活困難者の緊急支援のために資金を出し合い、各法人の職員がCSWとして、地域に暮らす生活困難者の支援にあたっています。
制度に基づくサービスではない本事業は、「対象者を限定しない・できる支援を項目として定めていない」ことを前提とした事業です。相談対応にあたってはCSWと、内容によっては本会に配置するライフサポーター(以下、LS)も同行して本人・世帯と面談を行い、どのような支援が必要か、地域の支援者と一緒に検討しています。
令和6年度の相談の状況
令和6年度に本事業で支援を開始したケースは91件でした。その約7割は、行政や市区町村社協などを経由して相談が寄せられました(図1)。相談者の年齢は50代が最多(図2)。世帯構成は単身世帯が大半で、既存の制度の対象にはなりづらい、地域社会とのつながりが薄いなど、孤立している様子がうかがえます。
〈図1円グラフ〉
相談の紹介経路
〈図1円グラフ終わり〉
〈図2横棒グラフ〉
相談者の年代
〈図2横棒グラフ終わり〉
本事業では、支援機能の1つである「経済的支援」の要請からはじまる相談が多いのですが、CSWやLSが支援者と一緒に相談者本人と面談していくと、「電気・ガス・水道が止められそう」「家賃が払えない」といった表出された経済的な困りごとだけにとどまらず、本人・世帯が抱える複合的な問題や支援者が孤軍奮闘している状況など、さまざまな課題をキャッチすることになります。
CSWやLSは、本事業の相談の入口で期待されている経済的支援の実施ができるか否かという視点のみで相談内容をとらえず、関わる支援者が本人・世帯が抱える問題の整理を行うことをサポートしたり、本人・世帯が利用できる制度や社会資源等を探したりなど、本人・世帯が自らの問題に対応していくことを他の支援者と一緒に支えながら、関係者間のつながりをつくっています。
本事業のCSWの具体的な関わりは、本事業に寄せられた相談内容への対応のめどが立つまでとなりますが、その後も支援者の一人として、関係者のつながり強化を地域のみなさんとともに進めていきます。
CSWは地域を基盤に活動している身近な存在です。まずはお気軽にご相談ください。(福祉サービス推進課)
P3
ライフサポート事業CSW(以下、ライフCSW)へ相談があった8050世帯への支援事例
社協生活福祉資金貸付担当(以下、社協貸付担当)より「生活費の貸付の相談で窓口に相談に来た方が、電気が2日後に停止すると話している。滞納分だけ貸してくれればよいと相談されているが、滞納分は貸付の対象とはならないので、ライフサポート事業で支援できないか」と相談がありました。
社協貸付担当からの情報
相談者(以下、息子)は50代男性。80代の両親と3人暮らし
収支:・息子は以前仕事をしていたが、うつ病になり休職の末、退職。現在無職で無収入
・両親の年金は二人で合計5万円/月。息子名義の持ち家のため、家賃の支出はない。
・息子は手続きをすれば生命保険解約金が2カ月後に200万円もらえる予定と話している。
・ 息子が生活保護の相談をしたようだが、生命保険解約金の収入見込みがあるため、受給対象にならないと言われたようだ。
ライフライン:電気が2日後に停止すると話している。他のライフラインの滞納までは未確認
家族状況:父は脳血管疾患を患い、要介護2
1
?,息子が相談に来たが、両親はどうしているの?
?,持ち家とはいえ5万円/月で家族3人が生活できているの?
?,父が要介護2なら、ケアマネジャーや包括支援センターが世帯に関っている?
?,生命保険解約金は、本当に受け取れるの?
ライフCSW
情報が不確かで、この世帯の問題がはっきりしない…息子の同意を得てこの世帯に関わる他の支援者に聞いてみよう!
2
ケアマネジャーからの情報
息子から電気代は「1カ月後に停止する」と聞いてる。
?,社協では「2日後に停止する」と話しているが、どっちが本当なの?!
包括支援センター職員からの情報
息子は高級車に乗っている
?,ガソリン代は払えるの?!車の維持費は?!
新たな情報が得られたものの、情報が錯綜して、ますます混乱してしまった…
ライフCSW
支援者で集まって、情報共有と整理をしませんか?
3
ライフCSWから各支援者にケース会議の提案!
ケース会議の実施
・支援者各々が持っていた情報を共有
・ 会議の前に、ケアマネジャーが改めて息子に電気料金について確認を行い、停止までには約1カ月の猶予があることを再確認した。
会議の結果「滞納に至った生活背景を捉えながら支援を検討していく必要がある」ことを全員で確認し、社協CSWとライフCSWが、息子との面談を行うことになった。
4
相談者との面談
① 電気代以外のライフラインも滞納している。
②生命保険解約金はまだ手続きしていない。
③ 車のローン、母の入院費の滞納、親族への借金返済など、多方面に負債がある。
④ 息子は真新しい高級腕時計や鞄を身に着けており、収入のバランスから家計管理に課題がありそう。
⑤家族3人とも、定期的な通院ができてない。
⑥ 両親の病気・介護と息子自身の今後の生活について、「どうすればいいのか分からない」と話している。
→ 様々な課題がからみ合い複雑化していることが明らかに
〔対応〕
①は、社協独自の給付事業にて対応できるか検討
②③④は、社協CSWから生活困窮者自立相談支援窓口(自立相談)につなぎ、家計相談支援事業等の利用で家計管理や債務整理の相談をしていく。
⑤⑥は、ケアマネジャーに面談内容を報告し、自立相談と連携しながら介護サービスや通院の安定を図る。
5
今回ライフCSWは、この世帯に関わっている支援者同士でケース会議を行い、情報交換しながら課題の整理を進めました。その結果、「各々の専門性を活かして何をするか」「困ったときは誰に相談するか」を確認し合い、支援の方向性を共有することができました。
その後、息子との面談を通じて新たな課題も明らかになりましたが、支援者間で支援の方向性を共有できていたため、スムーズに対応につなげることができました。
この経験は、他の相談者支援にも活かされ、支援チームの再構築へとつながりました。
本事例でのライフCSWは、相談対象者を限定しない立場という強みを活かし、支援者間のつなぎ役を担いました。
ライフサポート事業は、地域の支援者とつながりながら、誰もが困った時に抱え込み孤立しないよう、支えあえる地域のネットワークづくりを目指していきたいと考えています。
個別の支援→課題の共有と協力した支援→つみあげ→地域で困りごとを受け止める関係づくり
※事例掲載にあたり承諾を得るとともに、匿名化のため一部加工して掲載しております。
P4
NEWS&TOPICS
本県における外国人高齢者の調査から見えたこと-外国人も安心して老後を迎えられる共生社会へ
多文化高齢社会ネットかながわ(TKNK)発足背景と活動内容
本県の外国人人口は年々増加しています。2025年1月現在の住民基本台帳上の外国人数は28万4,889人、総県民の3・1%を占めます。総務省の報道資料・統計からみた我が国の高齢者は、2024年9月15日現在、日本人の高齢化率23・9%に対して、2024年6月末の出入国在留管理庁「在留外国人統計」によると、外国人の高齢化率は6・2%で、まだ大きな数字ではないものの、中国、韓国・朝鮮、フィリピン、ブラジル出身者の高齢化が進んでいる状況が分かります。
「多文化高齢社会ネットかながわ(TKNK)」(以下、TKNK)は2020年の冬、中国帰国者や外国につながる方たちの日本語教室や学習支援教室を長年行ってきたユッカの会代表の中和子さんからの「中国帰国者の皆さんも高齢期に入り、老後、介護についての相談を受けることも増えてきた今こそ、取り組みを始めませんか」という声かけをきっかけに、多様な経験を持つメンバーが集まり意見交換からスタートした活動です。
一方、県社会福祉協議会(以下、県社協)もまた、外国人支援事業の実績があり、コロナ禍で外国人住民の生活課題が再び顕在化したことから、改めて取り組みの必要性を認識し、ともしび基金を活用した協働モデル助成のテーマとして「外国につながる住民の高齢化に伴う生活課題への対応」を決めました。こうしたタイミングが重なり、TKNKは、2021年度から3年間の協働モデル助成を受け、活動が始まりました。
3年間を通し①外国人高齢者の現状把握のための外国人住民及び施設(高齢者入所施設・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所等)へのアンケート調査とヒアリング調査、②その課題を県民と共有し理解を深めるための県民講座、③住民や福祉従事者を対象としたやさしい日本語講座やワークショップ、④関連調査・研究等の情報収集とデータベース化(次項参照)、⑤TKNKの活動報告とともに県内外の先駆的な実践者や研究者から学ぶシンポジウムの開催等、大きく5本の柱で活動に取り組みました。
2023年度の県民講座では、様々な国・地域のキーパーソンから学び、互いに理解を深める「小さな交流会」を企画し定期的に開催しました。回を重ねるごとに参加者が増えるとともに議論も活発になり、TKNKの実践のひとつの形として現在も継続しています。
〈写真〉
2023年度に開催した「小さな交流会」では、キーパーソン7名による発表から学び合いました
〈写真終わり〉
調査から見えたこと
調査は、⑴2021、2022年度の外国人高齢者の当事者調査の後、⑵2022、2023年度に施設・事業所等調査を行いました。
まず、⑴外国人高齢者の当事者調査では、中国帰国者、華僑、在日韓国・朝鮮、スペイン語圏、ポルトガル語圏、フィリピン、カンボジアの人々計50人を対象としました。
ヒアリング項目としては、①本人のこと(年齢、来日年数など)、②日本語の理解度(読む・書く・話す)、③家族のこと、④生活上での困りごと、大切にしていること、相談できる人の有無、⑤介護について(介護経験の有無、介護保険制度の理解および利用経験の有無、母国との違い)、⑥老後に向けての不安、⑦老後の暮らし、終末期に望むこととしました。
その中で確認できた当事者の声に共通していたことは、次の7点です。
1介護保険制度の情報がほとんどの人に届いていない現状がある。40歳から介護保険料を払っていても制度のことは知らずにきている。
2母国に介護という概念がないためイメージがつかず、支援があること自体が想定できていない。我慢強く、ギリギリになるまで助けを求めない傾向が見られた。
3翻訳版の資料があっても内容が難しく分かりにくい。
4高齢になると、認知症や障害などによって日本語を話せていた人が話せなくなることが多い。
5帰国するつもりでいたのに、さまざまな事情で帰国できなくなった人もいる。
6高齢化とともに希薄化するエスニックコミュニティとのつながりで、高齢夫婦のみの世帯や単身世帯になったとき、また、夫婦どちらかが認知症になったときなどの不安を抱えている。
7日本の施設等での高齢者サービスに、言葉や文化の違いから不安をもっている。
P5
次に、⑵施設・事業所等調査では、 ①高齢者入所施設・通所施設・訪問介護・訪問看護事業所等(県内7,869カ所、回答618件)、②地域包括支援センター(県内383カ所、回答36件)、③居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)(県内2,174カ所、回答110件)に対して、「外国につながる高齢者の受け入れ状況/今後の受け入れに向けた意向や心配なこと」「外国につながる高齢者への相談支援状況/相談のルート/相談内容/本人とのコミュニケーションの方法/支援が難しいケース」についてアンケートを行いました。回収数は決して高くありませんが、回答からは貴重な情報を得ることができました。
まず、①高齢者入所施設・通所施設・訪問介護・訪問看護事業所等では、外国につながる人の受け入れについて「今、利用者がいる」「過去利用者がいて今後も対応したい」「今も過去も利用はないが今後対応したい」を合わせて79%が肯定的な回答でした。対応への不安は、日本語の会話が最も多く、続いて、宗教・文化、生活習慣の違い、食事の配慮、日本人利用者とのコミュニケーション、施設等と本人・家族とのコミュニケーションがありました。
②地域包括支援センターでは、36件中22件が外国につながる高齢者への相談対応経験が「ある」とのことで、ご近所トラブルから経済的困窮、虐待といったケースまで、言葉や文化の壁がある中、苦労して対応している様子がうかがえました。
③居宅介護支援事業所では、回答110件中31件が外国につながる高齢者への支援経験が「ある」とのことでした。支援が難しかったケースがあるとの回答(14件)のうち、その理由として「説明しても伝わらない」が最も多く、次いで「本人の意思が正確に把握できない」「地域住民との関係がない・地域で孤立している」「治療・医療に関する考え方が違う」「終末期に対する考え方・文化の違い」、また日本人ニーズと異なる特徴的なニーズとして「経済的なニーズ」が挙がりました。
以上の調査結果を2023年度の活動報告会で発表しました。また、外国人在留支援センター(FRESC)、(公財)東京都つながり創生財団、(公社)神奈川県社会福祉士会でも報告する機会をいただきました。
〈写真〉
2023年度TKNK活動報告会での記念撮影。これまでの活動を県民の皆さんと共有しました
〈写真終わり〉
現在の活動及び今後の展望
県社協の協働モデル助成が終了した後、2024年度には外国籍県民かながわ会議からヒアリングを受け、現状と課題を共有しました。そして、同会議の第12期の提言「同じ外国人という立場の高齢者が集う場を作ることで、外国人高齢者が孤立せず、必要な時に必要なサービスに出会える機会を保障する」に反映され、2024年11月「あーすフェスタかながわ」で開催されたフォーラム「神奈川県で暮らすわたしたち~今までとこれから、なりたい私」として実現されました。そのプログラム作りと広報に協力しつつ、TKNKとしてブースを出展することができました。
〈写真〉
外国籍県民、民族団体、NPO、行政等による実行委員会が主催する「あーすフェスタかながわ」にブースを出展しました
〈写真終わり〉
引き続き、小さな交流会の開催や、高齢期の生活を考える最初の一歩となるような多言語版のリーフレットの作成、調査結果から見えてきた「取組みアイディア集」作り等を行いながら、外国人高齢者やそのご家族、地域の支援者の方たちとのつながりづくりに取り組みたいと考えています。(多文化高齢社会ネットかながわ)
TKNK情報サイト
講座・事業のご案内
先行研究等データベース
P6
福祉のうごき 2025.3.26〜4.22
全社協 「社会福祉協議会基本要項2025」策定
全国社会福祉協議会は3月31日、社協活動の指針を示した「新・基本要項」(平成4年策定)を改訂し、新たな「基本要項2025」を策定した。基本要項では、社協の使命として、住民や地域の関係者との協働により、「ともに生きる豊かな地域社会」を創造することを明記。地域の関係者には、企業・商店、NPO、教育、司法等福祉以外の分野も含めており、他分野の関係者との連携の重要性を示した。
また、社協活動・事業の広がりを踏まえ、社協の機能を10項目に整理し、これまで事業として実施されてきた「災害時の支援」や「地域福祉の財源確保および助成」を機能として整理している。
厚労省 2040年に向けたサービス提供体制 中間報告まとまる
厚生労働省は4月10日、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関する中間とりまとめ」を公表した。主に高齢者に係る施策に関して検討を進めてきたものであり、中山間・人口減少地域において、高齢者人口が減少し、サービス需要が減少する中、利用者への介護サービスが適切に提供されるよう、介護事業所が機能を維持・存続できるためインセンティブの設定や、様々なサービスを効果的・効率的に提供できるよう多機能化していくこと、自治体の圏域を超えたサービス提供を行うための移動支援の推進、サービスの質の維持のためのICT・テクノロジーの導入、複数の事業所における人材のシェア等を提案した。
警察庁 ひとり暮らしの孤独死高齢者が75%超
警察庁は4月11日、令和6年に一人暮らしの自宅で亡くなった人が7万6,020人、そのうち高齢者が5万8,044人(76.4%)を占める、初の集計結果を公表した。神奈川県において自宅で一人で亡くなった高齢者は東京・大阪に次いで多い3,659名だった。
P7
〈広告〉
P8
私のおすすめCHECK!
◎ このコーナーでは、子育てや障害、認知症・介護当事者等の目線から、普段の暮らしに役立つ「おすすめ」なものを紹介します。
合理的配慮を考えてみませんか?
いろいろな福祉制度が整い、障害のある人に対する社会の意識も少しずつ変わってきました。しかしひとたび、障害のある人との間で何か不都合が生じると、障害のある人の求める配慮が断られるケースが見られます。
合理的配慮はそうした現状をより良くし、障害の有無に関わらず一人ひとりが過ごしやすい社会をつくるための新しい考え方です。今回は「合理的配慮」について、当事者が参加して広める活動と、理解を深めるためのコンテンツをご紹介します。
今月は→神奈川県自閉症協会 がお伝えします!
1968年設立。横浜市・川崎市を除く県内11地区の自閉症児・者親の会による連合会です。
行政施策の研究・提言、当事者・家族のためのミーティング運営、療育者等に向けた勉強会・セミナー運営等、自閉症児・者と家族の支援や、自閉症スペクトラムの理解を進めるための活動を各市町村及び県に向けて展開しています。
〈連絡先〉
Mail:info-kas@kas-yamabiko.jpn.org HP:https://kas-yamabiko.jpn.org
合理的配慮とは?
普段の生活で提供される設備やサービスなどは障害のない人には簡単に利用できる一方、障害のある人にとっては利用が難しく、結果として障害のある人の活動が制限されてしまう場合があります。
このような、障害のある人にとっての社会的なバリアについて、個々の場面で「社会的なバリアを取り除いてほしい」という意思が示された場合には、その実施に伴う負担が過重でない範囲で、バリアを取り除くために必要かつ合理的な対応をすることとされています。これを「合理的配慮の提供」といいます。(政府広報オンラインより)
当事者が参加した条例制定の動き
令和3年に障害者差別解消法が改正され、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。これを受け、障害のある当事者が参加して「障害者差別解消に関する条例」制定に向けた活動をしている団体があります。
「茅ヶ崎市合理的配慮促進条例を考える会(CGH)」は、令和4年に障害当事者を中心に10人ほどのメンバーで発足した会です。令和5年4月1日現在184以上の自治体で制定されている条例を茅ヶ崎市でも制定することを目指し、定例での話し合いや行政への働きかけ、障害当事者の集まりに出向いた普及など地道な活動を積み上げています。
令和6年度は、地域の商店や郵便局の方々をお招きし、障害のある人との接点について話していただくシンポジウムを開催し、市民目線で合理的配慮を考える機会を作りました。
CGHでは合理的配慮の対象を障害のある人だけでなく、高齢者や子ども、病気やけがにより支援を必要とする方にも広げ、市民同士が多様性を認め、お互いを尊重し、誰もがともに暮らしやすい街を作ることを目指しています。
〈写真〉
CGHの勉強会の様子
〈写真終わり〉
〈囲み〉
茅ヶ崎市合理的配慮促進条例を考える会
公式X:@chigasakihairyo ブログ:https://ameblo.jp/chigasakihairyo
〈囲み終わり〉
合理的配慮を学べるコンテンツ
『令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました』内閣府リーフレット
「不当な差別的取り扱い」と「合理的配慮の提供」の具体例が掲載されています。また、どういうことが「過度な負担」か?という疑問についても分かりやすく書かれています。
詳細は内閣府HPへ
「理解促進ポータルサイト」内閣府
具体的な環境づくりの事例を、障害の種別ごとに紹介しています。
『条例のある街~障害のある人もない人も暮らしやすい時代に~』
野澤和弘 著 ぶどう社
日本で初めて障害のある人への差別をなくす条例をつくろうとした方々の実話です。当事者を含めた官民共同の条例づくりについてのヒントが詰まった一冊です。
この機会に合理的配慮についての理解を深め、身近なところで勉強会を始めてみてはいかがでしょうか。
P9
企業の社会貢献活動 共生社会づくりをすすめる、企業の“チカラ”
「みつばち」の力で広がる社会貢献活動の輪-アズビル株式会社 azbilみつばち倶楽部
本会「かながわ交通遺児等援護基金」に支援をいただき、社員一人ひとりの想いを大切にした社員参加型の社会貢献活動に取り組む、azbilみつばち倶楽部の皆様にお話を伺いました。
―社会貢献活動をはじめたきっかけを教えてください。
弊社は、平成18年の創業100周年を機に新たなグループ理念を制定し、企業理念に基づく自主的な社会貢献活動の検討を始めました。またグループ企業名を「山武」から「アズビル」へ変更し、社員が一体となる企業文化の構築を目指し、平成21年に社員参加型の社会貢献活動「azbilみつばち倶楽部」を設立しました。
企業理念でもある「人を中心としたオートメーション」のもと、社員一人ひとりが社会と関わることを重視し、誰もが参加できる仕組みを整えています。神奈川県内を中心に、地域に根ざした活動を各事業所で取り組んできました。社員の自発的な関わりを通じて、企業価値の向上と地域社会への貢献を目指しています。
〈写真〉
お話を伺った(左から)サステナビリティ推進部の西村さん、復本さん、山中さん、福住さん
〈写真終わり〉
―これまでの取り組みについてお聞かせください。
「azbilみつばち倶楽部」では、会員となっている社員からの拠出金を支援原資とし、会員が参加している、または応援したい活動や団体に対し、年1回の支援を行います。令和6年度は福祉団体やNPOなど、57件(うち、県内27件程度)・総額850万円を超える支援を行いました。審査の過程では、会員から推薦のあった支援先に対し、推薦会員、事務局がヒアリングを行います。そして、全会員による投票で、支援先を決定します。ヒアリングは、書類だけでは伝わりきれない活動への想いや背景を直接伺うことができる貴重な機会となっています。
また、地域で草の根的な活動をしている団体へ支援を行っている点は「azbilみつばち倶楽部」のユニークなところだと思っています。
―社内・外での取り組みによる影響はどのようなものがありましたか。
会員一人ひとりが主体的に関わることができ、活動を通じて得られた「気づき」や「学び」が、個人の成長を促しています。例えば、「食の電子クーポン事業」を行っている団体を推薦した会員が、ヒアリングを通じて支援の必要性を感じたことで、寄付金額の増加や、実際の活動に参加する等、支援の輪が広がるきっかけとなりました。その他にも、難病支援を行う団体から「私たちの活動は理解されにくいものですが、みつばち倶楽部から支援を受け、社会への理解を広めることができ、本当に嬉しい」との声が寄せられました。支援を通じて、これまで実現できなかったことが叶う姿を見ることができるのは、支援する立場にとっても、この活動の意義を強く感じる瞬間です。
一方、社外においても、企業と地域社会との関わりが増え、活動の認知度向上につながり、ありがたいことに取材の呼びかけや広報誌に掲載したいといったお誘いが来るようにもなりました。私たちの活動を知って、同じ仕組みを導入したいと企業から相談を受けることもあります。企業の垣根を越えて、社会貢献の輪が広がっていくことを嬉しく思います。
―今後の展望を教えてください。
今後も、このような取り組みに社員が積極的に関われるような環境を整え、自主的に参加できる場をもっと増やしていきたいと考えています。そのためにも、地域の皆さんとの対話を大切に、社員に向けて様々な活動を紹介していけるよう、コミュニケーションを深め、ご縁を大切にしていきたいと思います。
また、社内においても存在価値が再認識されてきたように感じています。今後も「みつばち」が群れとして力を合わせ、自然に恵みをもたらすように社員一人ひとりの気持ちを集めて社会に貢献し続けていきます。
〈囲み〉
アズビル株式会社
創業:1906年12月1日
住所: 東京都千代田区丸の内2-7-3
アズビル(株)の社会貢献活動の取り組みはHPよりご覧ください
HP: https://www.azbil.com/jp/csr/contribution-to-society/index.html
〈囲み終わり〉
P10
県社協のひろば
議論を積み重ね社協のコミュニティソーシャルワーク力を高める-令和6年度社協ゼミナールの取り組み報告
市町村社協部会では、県内社協の現状・課題を整理するとともに、これからの社協事業・活動の方向性を議論する場として、令和元年7月に「社協・地域福祉推進プロジェクト」を設置。その中で「社協職員の専門性と組織特性を踏まえた職員育成のあり方」について議論を進め「かながわ版社協職員育成指針2022」としてまとめました。
今回は、本指針に基づき、令和3年度より実施している「社協コミュニティソーシャルワーク研修」(以下、CSW研修)の中から令和6年度社協ゼミナール(以下、ゼミ)の取り組みを報告します。
〈表〉
CSW研修の構成
社協基礎研修→社協の位置づけや方向性を再確認し「社協の総合相談」を生かして、コミュニティソーシャルワーク力を高める
社協ゼミ→個々の社協職員の問題意識や主体性に基づき、社協の実践と結び付くよう、指導教授が関わりながら少人数制で学ぶ
かながわ版社協職員育成指針2022の詳細はこちら
〈表終わり〉
武蔵野大学教授の渡辺裕一さんが指導教授となり、市町村社協職員8名をゼミ生に迎え、社協職員として把握した地域生活課題の解決に向けた手法を、部門やキャリアの異なるゼミ生同士が深掘りしながら、社協のコミュニティソーシャルワーク力の向上を目指しました。
全5回のプログラム内容や進め方は指導教授とゼミ生で決めていくことが特徴です。第1回は、社協職員として把握した地域生活課題を共有。そこでは「誰でも行ける居場所が少ない」「地区社協や自治会の担い手が高齢化している」「バスの本数が減少し、移動手段が不足している」などが挙がりました。
第2回は、第1回に挙がった課題に対して、住民主体の活動や福祉以外の分野と連携・協働している〝面白い〟実践事例を出し合い、第3回は、横浜市泉区でボランティアの地域住民が多世代交流スペースの運営などを行っている(N)宮ノマエストロを訪問しました。ヒアリングの中でキーワードになったのが「スピード感」。宮ノマエストロではやりたいと思ったことは鮮度が良いうちに実現することを大事にしています。これを受けてゼミでは、実現が難しそうなことでも無理とは言わず、やりたいという想いのある人を後押しできるよう日頃からさまざまな人や機関とつながり、情報を得ることや、新しいことに挑戦できる組織づくりの重要性などについて議論しました。
〈写真〉
「宮ノマエストロ」では、利用者だけでなく、ボランティアにとっても必要な居場所として、みんなの生きがいが生まれる場づくりに取り組んでいます
〈写真終わり〉
第4回は、横須賀市のコンビニに介護相談窓口を併設した「スマイル介護相談窓口鶴が丘」を訪問。さまざまな人が訪れるコンビニのイートインスペースを有効活用し介護予防のイベントなどを実施しています。
民間企業として利益を追求するだけではなく、地域資源としての価値を考え、地域へ還元する視点を持ちながら居場所づくりに取り組む実践事例を学びました。
第5回は、ゼミでの学びを共有。ゼミ生からは「実践事例を見に行くことで視野が広がった。社協の自由さや臨機応変さを活かした事業を展開していくために、自分の考えを言語化し、周囲に伝えていきたい」と意気込みを語ってくれました。
指導教授の渡辺さんからは「個々の社協職員は個別支援と地域支援の業務を通して向き合う対象、時間が異なっているが、地域に暮らしている人として常に見ていく視点が大事。社協だからこそできる住民との関係性や関係機関との連携を大切にした実践をしていきましょう」とコメントをいただきました。
〈写真〉
「スマイル介護相談窓口鶴が丘」の窓口には相談員を配置。介護系の情報提供の場としての機能も果たしています
〈写真終わり〉
単発の研修ではない全5回の社協ゼミならではの学びを通して、社協のコミュニティソーシャルワーク力を高めるとともに、新しい仲間との出会いやつながりを醸成する機会となりました。市町村社協部会では、今後もCSW研修などを通して、県内社協の職員育成や県域での社協職員のネットワークを構築していくことを目指していきます。(地域課)
P11
information
本会主催の催し
福祉の仕事 就職相談会1st(厚木)
①就職支援ガイダンス(事前申込制)
②福祉施設等就職相談会
◇日時=令和7年6月11日(水)①12時40分~14時②14時~16時
◇会場=プロミティあつぎ
◇参加費=無料
◇ 対象者=福祉の仕事に就きたい方、福祉の仕事に興味・関心がある方
◇申込=URLより申込み
URL:https://x.gd/XmExz
その他のイベント日程についてはHPで確認
HP: https://www.kfjc.jp/event/list.asp
関係機関・団体主催の催し
第61回社会福祉セミナー
社会福祉の「支援」はどこに向かうか
◇ 日時=令和7年7月5日(土)10時~16時、6日(日)10時~15時
◇開催方法=オンライン配信
◇定員・受講料=600名・無料
◇申込締切=令和7年6月19日(木)
詳細はHPで確認
HP:https://www.kousaikai.or.jp/news/detail/
◇問合せ=(公財)鉄道弘済会
TEL 03-6261-2790 Mail: fukushi-seminar@kousaikai.or.jp
神奈川県立福祉機構福祉職職員募集
令和8年4月に設立を予定している地方独立行政法人神奈川県立福祉機構の職員を募集します。
当法人は、障害者の地域生活を支援するとともに、科学的な福祉を研究及び実践し、そのために必要な人材を育成する拠点となり、福祉に関する諸課題の解決に広く貢献することにより、誰もがその人らしく暮らすことのできる地域共生社会の実現を目指します。
ぜひ一緒に、誰も見たことのない、新しい福祉に取り組みましょう!
【福祉職第2回採用試験】(第1回採用試験は受付終了いたしました)
◇申込期間=令和7年6月初旬~6月下旬(予定)
◇第1次試験=書類選考
◇第2次試験=令和7年7月下旬
詳細はHPで確認
HP:https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/1333/fukushikikoulp/
◇問合せ=神奈川県障害サービス課
TEL 045-210-4724
寄附金品ありがとうございました
【県社協への寄附】同期有志
【交通遺児等援護基金】(株)エスホケン、アトミクス(株)、JCOM(株)、自動車交通共済協同組合
【子ども福祉基金】(株)エスホケン、脇隆志
【ともしび基金】古口玲斗、神奈川県立鎌倉支援学校、神奈川県立横浜桜陽高等学校長
以上、合計15件(匿名含む)411,916円
【寄附物品】日タイを言葉で結ぶ会ラックパーサータイ、関東アイスクリーム協会
【ライフサポート事業】〈寄付物品〉
(福)慶優会、(N)セカンドハーベスト・ジャパン
〈写真〉
交通遺児等援護基金に寄附いただき、令和7年4月25日、自動車交通共済協同組合 中山秀雄常務理事(右)に感謝状を贈呈
〈写真終わり〉
〈囲み〉
本会福祉研修センター
令和7年度研修のご案内
法人・事業所職員の皆様のキャリア形成・スキルアップに福祉研修センターの研修をお役立てください。
研修内容は、研修センターホームページからご覧ください。
https://www.kfkc.jp/
〈囲み終わり〉
〈囲み〉
HPコンテンツ
「かながわ ふくしのギャラリー」オープン
県内の地域福祉活動、社会福祉の実践活動を紹介しています。ぜひご覧ください。
このコンテンツは、共同募金の配分金を活用して作成されています。
https://www.knsyk.jp/gallery
〈囲み終わり〉
P12
かながわほっと情報
民生委員活動を通して出会う人とのつながり、民生委員の想いのつながりを意識した取り組み
明治地区民生委員児童委員協議会 会長 三觜壽則さん(藤沢市)
「民生委員・児童委員」(以下、民生委員)は、常に住民の立場に立ち、地域の身近な支援者として見守り、相談に耳を傾け、必要な支援につなげる「つなぎ役」です。今回は、藤沢市明治地区で民生委員として活動し、地区で民生委員児童委員協議会(以下、民児協)の会長を務める三觜壽則さんにお話を伺いました。
三觜さんが地域活動を始めたきっかけは平成6年の藤沢市青少年指導員への就任で、PTA等の活動も行いながら、これからを担う地域の子どもやその環境を支えてきました。
民生委員として活動を始めたのは平成7年12月。「民生委員の“み”の字も知らなかったが、当時の自治会長からの『あなたならできる』という言葉がきっかけになった」と振り返ります。その後、約30年にわたって民生委員を続ける中で、現在では藤沢市と神奈川県の民児協の会長も務めています。
〈写真〉
高校卒業後に建築の世界に入った三觜さん。これまでの人生経験を活かしながら民生委員活動に取り組む
〈写真終わり〉
出会いにあふれる民生委員活動
住民の困りごとや悩み等を把握するために欠かせないことが、ご自宅への訪問活動です。訪問は住民のSOSを受けて訪ねることばかりではないため、活動を始めた当初は訪問に対する厳しい声や、話の切り出しとなるきっかけ作りの難しさから、緊張の連続だったといいます。
一方、苦しいことばかりではなく「出会いにあふれる民生委員活動は、とにかく楽しい」と笑顔で話されます。
地域連携から生まれる安心
活動の中で「関係機関等との連携が一層図れるようになったことが安心感につながり、関係機関等のサポートを心強く感じている」と三觜さんは語ります。
また、さまざまな機関と連携しながら、適切な支援につなげることができた時に、特にやりがいを感じるとのことで、地域のつながりの重要性も伺えます。
民生委員活動をつないでいくこと
会長として三觜さんは、民生委員同士のつながりを大切にするため、明治地区では活動冊子「めいじ」の作成を印刷業者に依頼せず、委員間の交流も兼ねて、委員のみで一から作り上げています。「何もできないということはない。誰にでも絶対に強みがある」と話す三觜さん。それぞれの強みを活かし、全員が作成に参加できるよう役割分担を行い、“つながり”を意識しながら取り組んでいるとのことでした。
〈写真〉
活動冊子「めいじ」
〈写真終わり〉
民生委員の任期は3年。今年の11月末で任期を終え、12月に一斉改選を迎えます。
「一斉改選後も、これまで活動されてきた民生委員の想いや、積み上げてきた活動をつないでいきたい」と語る三觜さんでした。(地域課)
〈コラム〉
5月12日は民生委員・児童委員の日
民生委員制度は、第一次世界大戦末期、大正6(1917)年5月12日に防貧対策として岡山県で創設された済世顧問制度が源になっています。
全国民生委員児童委員連合会では、この制度が公布された5月12日を「民生委員・児童委員の日」と定めました。
〈コラム終わり〉
「福祉タイムズ」は、赤い羽根共同募金の配分を受けて発行しています
バックナンバーはHPから
ご意見・ご感想をお待ちしています!
【発行日】2025(令和7)年5月15日(毎月1回15日発行)
【編集・発行】社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会
〒221-0825 横浜市神奈川区反町3丁目17-2 TEL 045-534-3866 Mail:kikaku@knsyk.jp
【印刷】株式会社神奈川機関紙印刷所