神奈川県社協について
事業報告・決算、社会福祉法人現況報告書
令和4年度神奈川県社会福祉協議会事業報告・決算
令和4年度は「神奈川県社会福祉協議会活動推進計画(令和3~5年度)」の中間年として、計画の基本目標に掲げた実施事業の着実な推進を図りました。
「市町村における包括的支援体制整備の推進」については、昨年度に引き続き、県の委託事業「包括的な支援体制及び重層的支援体制構築支援事業」を、市町村社協部会事業と関連性を持たせながら実施し、現状・課題の把握調査や研修を通じて、行政・社協が協働して取り組むための支援を行いました。
また、新型コロナウイルス感染症の影響もあり大きな課題となっている生活困窮者支援について、緊急小口資金等の特例貸付を引き続き実施するとともに、生活困窮者自立相談支援事業(町村部)、かながわライフサポート事業等を、関係機関と連携して進めました。
「福祉サービスの質の向上に向けた取り組みの強化」としては、感染症の影響や社会福祉制度の動向も踏まえながら、利用者ニーズ、地域に根差した施設・事業所活動が進むよう、経営者部会・施設部会・種別協議会等に共通する福祉課題について取り組みを進めました。
また、福祉人材の確保について、より多様な層に向けた福祉の仕事の理解のための取り組み、就職相談会や出張相談会のほか、社会福祉従事者への体系的な現任研修、介護福祉に関する法定研修等を行い、福祉サービスの質の向上に取り組みました。
このほか本会の重要な役割である「災害時における福祉的支援」については、災害対応に関する協定を結んでいる関係団体との連絡会を通じ、市町村や関係機関の情報収集、平時の関係づくりを進めるとともに、かながわ災害福祉広域ネットワーク事務局、神奈川DWAT関連事業を県から受託し、災害時対応の研修等に取り組みました。
基本目標Ⅰ 市町村域における包括的支援体制整備の推進
重点課題Ⅰ 包括的支援体制構築のための総合的な相談支援の推進
市町村域において、市町村社協や福祉施設・事業所との協働による総合相談を進めるため、関連研修などにより、課題の共有並びに人材育成に取り組みました。
推進項目Ⅰ-1 総合的な相談支援の取り組みへの支援
- 包括的支援体制、重層的支援体制整備事業の推進にむけて、行政・社協の現状・課題の把握、情報共有、研修など両者の連携・協働に必要な取り組みを、市町村社協部会事業と県委託事業を連動させながら進めました。
- 包括的支援体制のもとでの人材育成・確保について、上記の県の委託事業による研修のほか、市町村社協部会にて「かながわ版社協職員育成指針2022」を発行し、それに基づく研修を実施しました。また、生活支援コーディネーター研修(県委託事業)や、地域密着型住民活動の人材発掘を目的とする「地域の担い手づくり検討会(ロコ発掘調査隊)」での検討及び現地調査などにより多角的に取り組みました。
- 「かながわの社協指針2020」の中で県社協の取り組み課題として掲げている社協の専門性と組織特性を踏まえた職員育成において、社協の専門領域ともいえる地域支援のあり方について「社協・地域福祉事業推進プロジェクト」で検討を進めました。また「かながわ版社協職員育成指針2022」に基づき、新たに社協組織マネジメント研修を実施し、組織運営にかかわる知識習得とともに社協職員間のネットワーク形成につながりました。
- 民生委員児童委員部会では、オンラインでの活動推進会議を開催し、コロナ禍だからこそ見えた委員活動の価値と魅力について共有するとともに、民生委員・児童委員のPRポスター・チラシを作成しました。また、令和4年12月の一斉改選後にも部会委員の想いが継承されるよう、委員会での検討を進めました。
- かながわライフサポート事業では、参加法人等からの意見に基づき、ライフサポート通信内容の充実、関係機関パンフレットの作成・配付、10周年記念シンポジウムを開催し、広く関係機関の理解を促進するとともに、事業の原点に立ち返り、参加法人の活動や協力の充実に向けた発信を行いました。
推進項目Ⅰ-2 権利擁護と地域で生活を支える事業への支援
- 身寄りがない方や親族がいても頼れない方等の身元保証機能や死後事務に関する地域の課題に関して、市町村社協との協働により、モデル事業を実施しました。また、県内外の先進的な取り組みについてオンラインによる視察研修の機会を設け、身元保証・終活支援に関する課題共有等を図りました。
- 日常生活自立支援事業においては、身寄りのない利用者の契約締結能力喪失後の支援や、利用者死亡後の課題に対して、円滑な対応に向けて、利用者死亡後の預かり物の取り扱いや相続人調査について整理を行いました。感染症拡大の影響により、訪問や対面での支援が難しい状況の中、オンライン等を活用した支援として継続できるよう、その対応についての情報発信を行うとともに、市町村社協に対するオンライン相談を実施しました。
- かながわ成年後見推進センターでは、神奈川県成年後見人等候補者調整会議を開催し、本人の特性や状況に応じた適切な成年後見人等候補者の調整を行うとともに、地域において本人の状況を継続的に把握しながら適切に対応するチーム支援や体制整備にかかる助言を行いました。
- 生活福祉資金貸付事業については、新型コロナウイルス感染症への対応のための特例貸付をはじめ、生活福祉資金の貸付の相談を通し、貸し付けを必要とする相談者や借受世帯の自立支援を図りました。
- 生活困窮者自立相談支援事業(町村部)では、新たに生活困窮者支援体制を構築するためのプラットフォーム整備を目指した検討会を開催し、実際の個別事案を通して地域の課題共有や連携支援の在り方についての協議を行いました。
基本目標Ⅱ 多様な参加の機会と役割を生み出す地域づくり
重点課題Ⅱ 地域での活動の関係性を広げるコーディネートへの支援
多様な参加の機会と役割を生み出す地域づくりに向けて、かながわボランティアセンターの機能や役割を踏まえた運営計画の検討や、協働モデル事業として県域のテーマへの取り組みや関係者とのネットワーク構築をすすめました。
推進項目Ⅱ-1 多様な主体をつなげる取り組みの推進
- ボランティアセンター運営委員会において、これからのかながわボランティアセンターの機能・役割、事業の方向性を論議し、運営計画を検討しました。
- 市町村ボランティアセンターの支援として、ブロック別コーディネーター情報交換会を実施するなど、市町村域でのコーディネート機能の推進に向け取り組みました。
- ともしび基金の果実を活用した協働モデル事業として「多文化高齢社会」「人との関係づくりが苦手な人のボランティア活動推進」「身寄りのない方への身元保証・死後事務」をテーマに、それぞれに本会と取り組み団体の協働作業により、調査、ワークショップの実施など、具体的な取り組みを行いました。
基本目標Ⅲ 福祉サービスの質の向上にむけた取り組みの強化
重点課題Ⅲ 多様な福祉人材が活躍する職場環境づくり
多様な福祉人材の確保に向けて、職員育成や働きやすい職場づくりを進められるよう、経営支援の面から情報発信を行いました。福祉の仕事の魅力が多様な層に伝わるようにさまざまなメディアを活用して現場の情報を届けるなど、福祉施設や事業所の取り組みがより効果的になるよう、支援しました。
推進項目Ⅲ-1 福祉従事者の職場環境づくりへの支援
- 利用者のニーズに基づいて、安心・安全な福祉サービスが提供され、地域に根差した法人・施設の活動や取り組みが展開されるよう、福祉経営支援レポートによる継続的な情報発信を行うとともに、簡易経営分析シートを用いた研修会等を実施し、経営支援事業として一体的に取り組みました。
- 経営者部会においては、課題別検討委員会での会員アンケートに基づく事例集等の作成や災害見舞金の支給を継続的に行いました。施設部会では、アフターコロナに向けた施設運営に関するアンケートを実施し、理事長・施設長セミナーのテーマに反映させるなど、会員の共通課題解決に向けた支援へとつなげました。
- 令和4年3月に整理した「今後の福祉サービス第三者評価事業の取り組み方針」に基づき、より効果的な事業の推進を目指し「福祉サービス第三者評価の手引き」の改訂や評価調査者を対象とした研修等、各種関連事業に取り組んだほか、国の評価基準に準拠しながら神奈川の独自性も加えた障害者グループホーム第三者評価では、同じく令和4年3月に改訂した「障害者グループホーム第三者評価の手引き」に基づいて、評価調査者を対象とした研修を行い、新たな評価プロセス等のもと評価を実施しました。
- かながわ福祉サービス運営適正化委員会では、苦情解決委員会による苦情への適切な解決対応や運営監視委員会による日常生活自立支援事業の適正な運営確保に向けた実施主体及び受託社協への実施状況調査等、計画どおり実施しました。また、福祉サービス事業者における苦情解決体制整備状況に関するアンケート調査報告書(令和3年度)から見えてきた苦情対応における事業者の状況等をもとに課題整理を行い、事業者で取り組みができるよう解決のヒントとなる具体的な方法等を冊子に取りまとめました。
推進項目Ⅲ-2 福祉従事者の専門性向上への取り組み
- 法人・施設のキャリアパスに対応した階層・職務別の研修を年間を通じて計画的に実施し、社会福祉事業従事者が生涯にわたり、福祉サービスの質の向上を高め続けることができるよう、職場・職域を離れて「仲間とともに学ぶ、学び続ける」OFF-JT研修の機会づくりに努めました。
- サービス管理責任者等研修(神奈川県指定)では、県内指定研修実施機関と連携し、オンデマンドと対面演習によるハイブリッド方式で「基礎課程」「実践課程」研修を実施しました。
- 福祉研修センター事業企画委員会では、社会福祉法人・事業所等の人材育成の取り組みと連携した、県域の社会福祉事業従事者研修機関としての役割や機能、事業内容を継続的に検討しました。
- 介護支援専門員実務研修プロジェクト、介護支援専門員専門・更新研修プロジェクトを設置し、研修内容の検討と研修テキストを作成・発行しました。また、新たに介護支援専門員法定研修ファシリテーター養成事業を立ち上げ、検討プロジェクトを設置し、演習助言者の資質に関するアンケート調査の結果をもとに、養成研修シラバスを作成しました。
- 「感染症拡大防止に対応した研修運営等ガイドライン」を定め、介護支援専門員実務研修受講試験(神奈川県指定)、第25期及び第26期介護支援専門員実務研修(神奈川県指定)を実施しました。
- 介護支援専門員証有効期限外及び実務未経験者に対し、資格取得・更新の研修として再研修(神奈川県委託事業)及び実務未経験者に対する更新研修(神奈川県指定)を実施することで、介護保険制度の要となる介護支援専門員の確保に努めました。
- 介護に関する入門的研修を市町社協等と連携して実施するとともに、修了者への就労支援に関しては福祉人材センターが、地域における介護福祉人材の裾野を広げるための取り組みを行いました。
推進項目Ⅲ-3 福祉人材の確保に向けた取り組み
- 福祉人材センターの基本機能である無料職業紹介事業では、窓口での対面相談の他、メール・電話を活用して積極的な就労相談等を実施しました。また、県域・地域の就職相談会は感染症対策を施し、対面式で事業を展開することができ、研修やセミナーは、当該地域の介護施設等の協力を受けて実施するなど、地域密接型の事業展開をしました。令和4年度は福祉人材センターの認知度を向上させるため、コマーシャルの放映や車両ステッカーなどを通して、県内各地で広報活動を行いました。
- 福祉・介護の仕事内容の理解を進めるとともに将来の職業選択の資料となるよう、中学生・高校生向けの福祉の仕事案内用パンフレットを配布しました。また高校生のインターンシップの受け入れ可能な福祉施設・事業所への調査を行い、ホームページに掲載するとともに、インターンシップ啓発チラシを県内公立高校に配布しました。また広くかながわ福祉人材センターを知ってもらうための取り組みとしてコマーシャルを作成、横浜駅をはじめ県内数カ所のデジタルサイネージを利用し、広報しました。
- 各研修やセミナーの地域展開や教育機関等と連携したガイダンスの実施については、当該地域の介護施設等と連携したセミナーの実施など、より具体的に地域密接型の事業展開を視野に実施しました。
- 保育士と保育所等児童福祉施設に対する就労支援事業として、新型コロナ感染症予防の観点から、時期や会場などに十分配慮し、合同就職相談会や就職支援ガイダンス等を行いました。また、潜在保育士を対象とした保育の仕事のミニセミナーに加え、保育士資格はあるが未就労の人や資格取得を検討している人なども対象に、保育の仕事の魅力や就労することへの不安を解決するためのセミナーも実施しました。
- 介護福祉士修学資金等貸付事業において、今後より必要性が高まる介護人材等の確保に向けて、介護福祉士養成施設や介護職員実務者研修実施機関等に通う学生等に対して修学資金の貸付け等を行うことにより、県内の福祉・介護人材の育成及び確保並びに定着を図るために取り組みました。
本会活動の基盤整備と強化
1.本会組織・活動基盤の強化
(1)組織・活動基盤の強化
- 会員加入促進に向けて、未加入法人・施設を対象に働きかけを行いました。また、賛助会員の呼びかけ先を工夫・拡大したところ、昨年度を大幅に上回る49件の加入がありました。
- 事務局体制の安定化に向けては、計画的に職員採用を実施するとともに、職員の資質向上に向け、昨年度末に改訂した職員育成研修計画に基づき、階層別研修の強化を図りました。また、課題別研修の計画的な企画、実施に取り組み、法令遵守等の意識の強化を図りました。
- 神奈川県社会福祉センターの管理運営については、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を講じながら、人材養成等の拠点機能を発揮するとともに、会議室貸出や自動販売機の設置など賃貸料収入の増収を図り、センター運営の安定化に取り組みました。
- 計画推進委員会において、活動推進計画の進捗状況や事業実施から見えてきた課題について報告し、本会の事業実施に必要な視点等について意見を受け、事業の進行管理に反映しました。
(2)災害時における関係機関・団体との協働
- 令和4年9月に静岡県で発生した台風15号による豪雨災害に対し、関東甲信越静ブロック都県・指定都市社会福祉協議会災害時の相互支援に関する協定に基づき、令和4年10月3日~11月末まで県内市町村社協の協力を得ながら、静岡市葵区及び清水区の災害ボランティアセンター運営支援にかかる職員派遣を行いました。
- 内閣府が進める「行政、社協、NPOとの連携」並びに、本県の災害救援ボランティア支援センターにおける四者協定の関係団体との連絡会に定期的に参加し、市町村や他機関の情報収集や平時の関係づくりを進めました。
- 県から、かながわ災害福祉広域支援ネットワーク事務局及び神奈川DWAT関連事業を受託し、ネットワーク普及のためのチラシ作成のほか、神奈川DWATチーム員の育成のための各種研修・訓練等の企画・運営、必要な資機材の購入や神奈川DWAT活動の体制づくりに向けた検討などを実施しました。
- 新型コロナウイルス感染症対策として、県から「社会福祉施設等応援職員派遣事業」を受託し、社会福祉施設等において感染者が発生した際に、感染施設の要請に基づき、入所者支援を継続して行えるよう応援職員の派遣可能な法人・施設を募り、派遣可能施設名簿を作成し、感染者等が発生した施設への派遣調整をしたほか、感染者等が発生した施設で勤務(雇用)可能な方、応援職員を派遣した施設の代替職員を募集し、候補者名簿を作成、マッチングを実施しました。
2.共通課題の解決に向けた情報発信
- 政策提言活動では、福祉関係者が向きあう地域の福祉課題についてとりまとめ、関係機関等に提言を行いました。なお、個別課題の一つ「神奈川におけるよりよい障害者福祉を目指して」を、県の条例設置等の動きに合わせ、先行して提言を発出しました。また、提言内容を基にしたオンデマンドシンポジウムや委員からのメッセージを配信し、周知活動を行いました。
令和5年度は、活動推進計画の最終年になります。計画事業の実施にあたっては、これまで以上に本会会員各位、関係者の皆様からのご協力・ご参加をいただきながら取り組んでいく所存でございますので、より一層のご指導を賜りますようお願い申し上げます。
社会福祉法人現況報告書
本会では、毎年、社会福祉法第59条及び社会福祉法施行規則第9条の規程に基づき、組織概要、事業概要、財産の所有状況等をまとめた「社会福祉法人現況報告書」を所轄庁に提出しています。 報告書類はWAM NETのホームページからご覧いただけます。