神奈川県社協について
事業報告・決算、社会福祉法人現況報告書
令和5年度神奈川県社会福祉協議会事業報告
令和5年度は、児童・高齢・障害・生活困窮者支援など、社会福祉の各分野において新たな法施行や制度改正、見直しなどが行われました。具体的には、虐待や貧困、ヤングケアラーなどの多様な課題に対する子ども基本法の施行と子ども家庭庁の創設、誰一人取り残さない社会を目指した孤独孤立対策推進法や改正障害者総合支援法の成立、生活困窮者自立支援制度・生活保護制度や介護保険制度の見直しなどです。
県内では、福祉・介護分野の人材不足や、長引く物価高騰が法人・施設運営への影響を及ぼしています。また、中⾼年のひきこもりや児童虐待、ケアラーなど、地域には⽣活に困窮する世帯が増加していますが、コロナ禍における人と人との接触機会の減少は、孤独・孤立の問題をさらに浮き彫りにしました。
令和6年元旦に発生した能登半島地震においては、本会内に県外災害支援体制を講じ、災害ボランティアセンターの応援派遣や避難所におけるDWAT活動による支援を行いました。
「神奈川県社会福祉協議会活動推進計画(令和3~5年度)」の最終年度に当たる令和5年度は、これらの制度動向と地域の状況を踏まえながら、計画の基本目標に沿って、市町村域の包括的支援体制の構築、福祉サービスの質の向上、福祉人材確保・育成・定着への対応、災害福祉支援などに取り組みました。その概況は次のとおりです。
基本目標Ⅰ 市町村域における包括的支援体制整備の推進
推進項目Ⅰ-1 総合的な相談支援の取り組みへの支援
- 総合的な相談支援の基盤づくり支援
・重層的支援体制整備事業をはじめ、ケアラー支援専門員設置や生活支援コーディネーター養成研修に関する県委託事業と部会事業の連携を図りながら、包括的支援体制整備の推進に向け、行政・社協の現状や課題把握、情報共有を行い、連携・協働に必要な取り組みを行いました。
・「地域の担い手づくり検討会」では、多様な世代の参画を促進するための検討会や、大学生が住民活動に関わるフィールドワークを実施しました。また、新たに大学生に向けた県社協見学会を実施し、地域福祉の理解促進に取り組みました。
- 市町村社会福祉協議会との協働
・全国の被災地の災害ボランティアセンターの状況を踏まえ、県内社協の「災害時支援に関する協定」に基づく相互支援の強化のため、社協間の情報共有を図ることを目的として新たにクラウドサービスを導入し、ICT化を進めるとともに、県外災害時支援として能登半島地震の支援に対する情報共有を図りました。
- 社会福祉法人との協働
・ライフサポート事業では、ライフサポート通信の充実を図るとともに、パンフレットを活用して、参加法人が広く関係者に情報発信するきっかけをつくりました。
- 民生委員児童委員との協働
・民生委員児童委員の実践や課題を共有する活動推進会議を開催するとともに、新たに、活動内容や課題等を共有しながら交流を図るオンライン情報交換会を開催しました。また、「持続可能な委員活動のための取り組み~多様な委員のあり方を視野に入れた民児協運営」をテーマに、ニュースレターにより民生委員活動について情報発信しました。
推進項目Ⅰ-2 権利擁護と地域で生活を支える事業への支援
- 権利擁護の体制づくりの推進
・権利擁護の取り組みとしては、身寄りがない方や親族がいても頼れない方等の身元保証機能や死後事務に関する地域の課題に関して市町村社協と協働したモデル事業を実施し、先駆的事例の取り組みの情報や課題の共有を図りました。
・日常生活自立支援事業では、事業理解のための出前講座や、専門員等の資質向上に向けたテーマ別研修を新たに実施しました。また、県社協契約締結審査会に諮った案件について、状況確認とフォローアップを行いました。
・かながわ成年後見推進センター事業においては、本人を支える関係者が意思決定支援の考え方を理解し実践することができるよう、新たに意思決定支援研修を実施しました。また、成年後見制度利用を促すことを目的に、市町村長申立ての実務の流れなどを整理した「成年後見制度市町村長申立てマニュアル」の見直しを行い配布しました。
- 生活福祉資金貸付事業を通じた自立生活の支援
・コロナ特例貸付の償還開始に伴い、市町村社協と連携した借受人へのフォローアップ支援に取り組むとともに、生活福祉資金の貸付相談を通して借受世帯の自立を支援しました。また、償還免除や償還猶予等の周知を行い、借受世帯の負担軽減を図りました。
・借受世帯の償還状況を市町村社協と共有し、借受世帯の支援につながる取り組みを行うとともに、償還の強化を目的として償還開始や残額等を通知し、償還に対する意識付けを図りました。
- 生活困窮者等を地域で支える取り組みの推進
・町村部における生活困窮者自立相談支援事業では、新たに生活困窮者支援体制を構築するためのプラットフォーム整備を目指した検討会を二宮町と箱根町で開催し、個別事案を通して地域の課題共有と連携支援の在り方について協議を行いました。
基本目標Ⅱ 多様な参加の機会と役割を生み出す地域づくり
推進項目Ⅱ-1 多様な主体をつなげる取り組みの推進
- 新たにかながわボランティアセンターホームページの運用を開始し、ボランティアセンター機能やボランティア・セルフヘルプの活動、助成事業情報、寄附・寄贈等の情報を発信し、新規の寄附の受入れ等につなげました。
- 畜産と福祉がつながり、協働することを目的に、県畜産会や県共同募金会、障害者福祉施設とともに、新たに畜福連携の取り組みを進めました。
- 20周年の節目を迎えたセルフヘルプ・グループ活動支援では、県民向けの記念セミナーを開催しました。
- 障害者週間の普及啓発の一環として、障害のある人がともしびショップで働く様子を新聞広告で掲載したほか、公私の関係機関・団体が主催するイベントなどで、パネル展示・チラシ配布等を行いました。
基本目標Ⅲ 福祉サービスの質の向上にむけた取り組みの強化
推進項目Ⅲ-1 福祉従事者の職場環境づくりへの支援
- 社会福祉法人・施設の専門性を活かした取り組みの推進
・経営者部会では、会員法人と社協が地域でのネットワークを形成し、地域共生社会の実現に取り組めるよう、地域ネットワーク強化事業を立ち上げ、助成を行いました。施設部会では、アフターコロナに関するアンケートを行い、理事長・施設長セミナーのテーマに反映するなど、共通課題解決に向けて取り組みました。
・地域に根差した法人・施設の公益的な活動が展開されるよう、福祉経営支援レポートによる継続的な情報発信を行うとともに、新たに巡回型経営支援事業に取り組みました。
・全国経営協南関東・甲静ブロックの幹事県として、全国経営協との連携・協働を意識しながらブロックの活動を行いました。
- 福祉サービスの改善への支援
・福祉サービス第三者評価事業に対する理解促進を図る事業や、評価調査者・評価機関向け研修の充実に取り組みました。なお、障害者グループホームの第三者評価では、評価プロセスの見直しを行いました。
・かながわ福祉サービス運営適正化委員会では、苦情解決委員会による苦情への適切な対応や、運営監視委員会による日常生活自立支援事業の適正な運営確保に向けた実施主体及び受託社協への実施状況調査等を実施しました。中でも運営監視事業の受託社協の調査時期に開きがあったことから、webによる書類調査を新たに実施し必要な助言を行いました。
推進項目Ⅲ-2 福祉従事者の専門性向上への取り組み
- 福祉人材育成研修の充実
・研修の周知や申込、研修動画の閲覧などを一元化した研修管理システムを稼働しました。
・令和6年度の介護支援専門員の研修カリキュラム改定に向けて、実務研修プロジェクト、専門・更新研修プロジェクトを設置し、研修内容の検討と研修テキストを作成しました。また、新たに介護支援専門員法定研修ファシリテーター養成事業を立ち上げ、アンケート調査の結果をもとにした養成研修のシラバスを作成しました。
- 福祉・介護事業者等の人材育成の取り組みの支援
・法人・事業所のキャリアパスに応じた人材育成に向けて、県内で行われる従事者向け研修の情報提供を行いました。また、研修効果の把握と職場のフォローアップのため、研修実施後の振り返りシートに取り組みました。
- 資格取得支援に向けた取り組みの実施
・介護支援専門員証有効期限外の者に対する再研修や、実務未経験者に対する更新研修を実施し、介護支援専門員の確保に努めました。
・市町村社協と連携して介護に関する入門的研修を実施し、介護人材の裾野を広げる取り組みを行いました。
推進項目Ⅲ-3 福祉人材の確保に向けた取り組み
- 福祉人材センター機能の強化
・福祉人材センターでは、無料職業紹介事業による就労相談等を実施するとともに、当該地域の介護施設等の協力を受け、横浜市域、川崎市域を除いた県内を4ブロックに分け、相談等の地域展開を図りました。また福祉人材センターの認知の向上を図るため、デジタルサイネージを利用したCMの放映や車両ステッカーなどを使った広報活動を行いました。
・第3期に入った県介護人材確保対策推進会議では、アフターコロナの介護人材確保・定着・育成の現状と課題の再確認等を目的に、フォーラムを実施するとともに、職員育成状況把握調査等を実施し、推進会議や検討部会で検討を行い、報告書にとりまとめました。
- 福祉・介護の仕事の理解促進に向けた取り組みの充実
・福祉や介護の仕事の理解を進め、将来の職業選択肢となるよう、中学生・高校生向け福祉の仕事案内パンフレットを配布しました。また、高校生のインターンシップの受け入れ可能な施設を調査し、ホームページ等を介して情報提供を行いました。
・地域展開した就職相談会とあわせ、キャリア支援専門員による就職ガイダンスの他、当該地域の福祉施設と連携し、仕事の具体的な内容、やりがい等について話を聞く場を設け実施しました。また、大学・養成校の要請や介護に関する入門的研修等の場において、ガイダンスを実施しました。
- かながわ保育士・保育所支援センター事業の運営
・保育士・保育所支援センターによる就労支援事業として、合同就職相談会や就職支援セミナー、資格保有未経験者や資格取得を検討している人などを対象としたセミナーなどを実施しました。
- 資格取得並びに有資格者の就労支援を目的とした各種貸付事業の実施
・介護人材等の確保に向けて、介護福祉士養成施設等に通う学生などに対し、修学資金等の貸付を行いました。
本会活動の基盤整備と強化
1.本会組織・活動基盤の強化
- 組織・活動基盤の強化
・企業・団体との協働の促進に向け、賛助会員の呼びかけ先を工夫・拡大するとともに、県共同募金会との協働による新たな取り組みを開始しました。
・消費税に関するインボイス制度への対応と、関連事業と合同で市町村社協向けの研修会を企画・実施しました。
・計画推進委員会、局内に設置した計画策定小委員会、計画策定ワーキングチームにて、次期活動推進計画を策定しました。また、計画推進委員会では、活動推進計画の進捗状況や事業実施から見えてきた課題を共有し、本会の事業実施に必要な視点等について意見を受け、事業の進行管理に反映しました。
- 災害時における関係機関・団体との協働
・能登半島地震による災害に対しては、石川県中能登町及び七尾市の災害ボランティアセンターの運営支援等にかかる職員派遣(市町村社協の協力の下で実施)と、県と共に神奈川DWAT本部を県社会福祉センターに設置し、石川県金沢市内等への神奈川DWATチーム員の派遣調整を行いました。
・災害時支援に関わる関係機関と協働し、ぼうさい国体やビッグレスキュー、連絡会議等に参加しました。
・本会災害福祉支援活動方針の策定とそれに伴うBCPの策定、災害時福祉拠点としての必要備品の整備を行いました。
2.共通課題の解決に向けた情報発信
・政策提言活動では、福祉関係者が把握する地域の福祉課題についてとりまとめ、関係機関等に提言を行いました。また、提言内容のうちの福祉人材の確保・育成をテーマにした動画を配信し周知活動を行いました。
・2種3種正会員連絡会の活動では、動画を作成し、会員の福祉関連活動の紹介を行いました。
・本会ホームページについては、タブレットやスマートフォンなどの端末からアクセスしやすく、障害の有無や年齢に限らず情報を得られるよう、アクセシビリティの視点を踏まえた、リニューアルを行いました。
社会福祉法人現況報告書
本会では、毎年、社会福祉法第59条及び社会福祉法施行規則第9条の規程に基づき、組織概要、事業概要、財産の所有状況等をまとめた「社会福祉法人現況報告書」を所轄庁に提出しています。 報告書類はWAM NETのホームページからご覧いただけます。