お互いに助け合い、生き生きと働く 水福連携
(N)湘南NPOサポートセンター
- 分野 障害 /
- エリア藤沢市、平塚市、小田原市 /
- 推進主体 民間企業 / 民間団体(NPO等) / 社会福祉法人・事業所 /
かながわ水産業福祉連携推進事業とは
「水福連携」とは、障がいがあり福祉的な支援を必要とする方の就労・雇用の機会を確保するとともに、水産業界における担い手不足等の課題を解消することを目指す、福祉と水産業の双方にメリットをもたらす取り組みです。
県内でも、水産業における新たな労働力の確保と障がいのある方の社会参画の促進を目的として、令和5年度から「かながわ水産業福祉連携推進事業」がスタートしました。この取り組みは、誰もがその人らしく暮らし、一人ひとりが大切にされる社会を目指すものであり、県および県議会が定める「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念にも深く通じています。
当法人は、令和2年度からの「農福連携マッチング等支援事業」を契機に、現在は水福連携へと活動を広げ、水産業者と福祉事業所の仲介やマッチングを行っています。
広がるマッチング
事業開始からの3年間で、県内では数多くのマッチング事例が創出されてきました。委託される作業内容は、ラベル貼りや商品用の箱組み立てといった施設内で可能な軽作業から、水産加工品の箱詰め、さらには包丁を使用した調理補助まで、事業所の特性や利用者の習熟度に応じて多岐にわたっています。平塚市および小田原市の代表的な2つの事例を下にまとめましたので、ご覧ください。
マッチング事例
平塚市
施設内就労
- トマ鯖カレーおよび水産加工品の箱の組み立て、商品封入、ラベル貼りなど(写真①)
山大商事(株)
人手不足の解消と社会貢献の一環として導入しました。当初は利用者の皆さんがどこまでできるか未知数でしたが、非常に真面目で集中して取り組んでくれています。品質も問題なく、仕事量が増えても臨機応変に対応してもらい大変助かっています。
就労継続支援B型事業所 クオケア
令和5年の開所時から水福連携に関わっています。企業側のニーズと福祉側の目的が同じベクトルを向いているため、非常にスムーズにできます。仕事を通じて事業所の存在価値も高まったと感じています。今後は施設内だけでなく、企業に出向く「施設外就労」にも範囲を広げていく予定です。

(写真①)クオケアでの施設内就労。仕上がりの美しさを考慮し、丁寧に箱を組み立てる
小田原市
施設外就労
- 山上蒲鉾店:つみれ用外箱の組み立て、商品の外観チェック、6袋ごとの箱詰め、賞味期限ラベル貼り(写真②)
- 伊勢兼商店:さつま揚げやちくわのシーリング(袋詰め・密封)作業とセイロへの並べ込み(写真③)
利用者の皆さんは午前と午後で両社を移動し、基本として週4日、企業の現場で働いています。
(有)山上蒲鉾店・(有)伊勢兼商店
社会貢献に加え、障がいのある人の活躍の場を広げたい思いから始めました。結果として作業効率が向上し、既存従業員の負担軽減や本来業務である営業活動の強化につながっています。皆さんの素晴らしい仕事ぶりが分かったため、現在は他の作業への拡大も進めています。
(福)足柄緑の会 コスモス学園
実際の働きぶりを見てもらうことで、企業や地域が抱く障がい者就労への印象がポジティブに変わったと感じます。現場を経験することで利用者の皆さんの仕事への責任感や自立心も育つため、私たちの事例が他の事業所にとっても一歩踏み出すきっかけになれば嬉しいです。

(写真②)山上蒲鉾店での施設外就労。つみれ用の箱を組み立て、検品と箱詰めを行う

(写真③)伊勢兼商店での施設外就労。さつま揚げのシーリングでは、専用の機械を使い安全かつ迅速に商品を密封していく
事業を展開する上での工夫点、制度面での課題
当法人は水産と福祉をつなぐコーディネーターとして、両者が協働し、持続可能な関係性を築くために次の5点を念頭に置いて調整を図っています。
❶ 連携への不安や悩みの丁寧な聞き取りと解消
❷ 双方の提案を取り入れた環境整備と、課題の即時解決
❸ 初めから100%を目指さず、無理のない範囲での生産量設定
❹ 双方にメリットがある工賃の調整
❺ 研修や現場体験を通じた、障がい特性や配慮事項の相互把握
この積み重ねにより、一過性ではない強い信頼関係が維持されています。
一方で課題もあります。福祉側の支援員不足や送迎コスト、稼働時間の制約、障がい特性などの要因から、施設外就労へ参加できる事業所はまだ多くありません。また、作業委託にとどまらず一般雇用への移行も視野に入れて活動していますが、連携先の紹介から現場体験、雇用契約、その後の定着支援に至る各フェーズでのフォロー体制確立には、現状まだまだハードルが高いと感じています。
マニュアルガイドブック・事例集で、より身近に
水産業は幅広いため、今後は加工会社だけでなく漁業者などからも広くニーズを吸い上げる必要があります。先行する「農福連携」に比べ、水福連携は「知らない」「取り組み方法が分からない」という声がまだ多く聞かれます。そのため、具体的な事例やノウハウを積極的に情報発信し、社会的な理解を醸成していくことが不可欠です。
当法人では、水福連携の一歩を後押しするツールを県と協働で作成しています。
令和8年4月に発行した『マニュアルガイドブック』は、水福連携の仕組みや作業事例、障がい特性への配慮、マッチングの流れを網羅した実践書です。『事例集』は、年度ごとの具体的なマッチング経緯や作業のポイントを詳細にまとめています。
これらは県および湘南NPOサポートセンターのHPから無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。事例集は毎年改訂版を発行予定です。この記事をきっかけに、少しでも興味を持たれた企業や福祉事業所の皆様は、どうぞお気軽に当法人までご連絡ください。
マニュアルガイドブック(左)と事例集(右)
(クリックするとPDFが開きます。)


