【第4回】住まいの課題を抱える人への支援の現状ー居住支援団体の取り組みから
(公社)かながわ住まいまちづくり協会、(N)ナレッジ・リンク、(株)トータルホーム
- 分野 生活困窮 /
- エリア横浜市、相模原市、厚木市 /
- 推進主体 その他の活動主体 /
高齢者や障害者、生活困窮者などの中には、様々な理由から住まいの確保に課題を抱える人がいます(いわゆる、住宅確保要配慮者)。福祉的ニーズをもつ人の中には、住まう“場”の確保とともに、そこでの生活を支える福祉的支援が重要となります。
住宅確保要配慮者(以下、要配慮者)を支える制度は福祉施策のほか、住宅施策における「住宅セーフティネット制度」があります。この制度では、要配慮者への住まいの相談や入居後の見守り支援などがあり、地域での暮らしを支えています。
今回は居住支援を行っている3人の方に、支援の実際や課題となっていることについてお話を伺いました。
住宅セーフティネット制度の中に位置付けられた居住支援には、①入居者への家賃債務保証、②住宅相談など賃貸住宅への円滑な入居に係る情報提供・相談、③見守りなど要配慮者への生活支援、④ ①〜③に付帯する業務があり、都道府県から指定を受けることで居住支援法人として活動できます。
要配慮者が入居を断られる理由にはどのようなことがありますか
入原
要配慮者の中には、緊急連絡先のない方や収入が低い方がいます。また、高齢の方や障害のある方も断られてしまうことがあります。それは、高齢者の室内死(居室内で一人で亡くなられた場合のこと)や障害のある方の近隣トラブル、ひとり親家庭なら家賃の支払いができるかなど大家さんや不動産業者が「自分たちが負わなければいけないのではないか」という不安があるからで、地域の見守りや福祉サービスがあることを説明し、理解を進めています。
加藤
自社の管理物件ですと、ある程度融通が利くので入居しやすいです。しかし、一般の物件から探さなければいけない場合は、物件を所有する大家さんやその物件を管理する不動産業者が要配慮者に対する理解がないと、入居を断られてしまうこともあります。
居住支援として、どのような取り組みを行っていますか
萩原
ご本人からの相談に始まり、転居理由や物件の希望、引っ越し費用などを聞き取ると、福祉的支援が必要な方がサービスや支援機関につながっていないことも分かり、その場合には、まず関係機関につないでから住まいの支援をしています。
居住支援を行う上での難しさはありますか
入原
入居者の多くは、家賃が支払えない時に備えて保証会社の家賃債務保証サービスを利用します。高齢者や障害者、すでに債務がある方も対象になりますが、中には保証会社の審査が通らない人もいます。
加藤
要配慮者に対する不動産業者や大家さんの理解も必要だと思っています。
萩原
要配慮者の生活状況を知らないため、ひとくくりにリスクが高いと判断してしまうのだろうと思います。福祉関係者の支援があれば、地域でも生活できるということを知ってもらうために物件管理会社へご本人と一緒に出向き、直接会ってもらうこともあります。

居住支援団体の皆さん(左から)加藤さん、萩原さん、入原さん
国では、生活保護や生活困窮者自立支援制度の見直しが進められ、住宅施策との連携が期待されています
入原
居住支援は、住宅と福祉をつなぐことと言われていますが、支援制度の仕組みとビジネスをつなぐという見方ができます。
加藤
不動産業者の側から考えると、3万円の物件を複数契約するよりも、10万円の物件を契約した方が時間と手間もかからないのが現状です。
ですが、私の場合は、たまたま精神障害のある方の地域生活の様子を知って「地域で生活しても問題ない」と思いました。不動産業者では広くやられておらずビジネスチャンスと捉えることもできました。
入原
ミクロの視点で見ると、少額の賃貸物件の仲介料だけでは利益が上がりにくいですが、不動産業者と福祉関係者の顔が見える関係ができると、福祉関係者のプライベートな取り引き(自宅、実家の売却)や地域の空き家の利活用の相談を受けるなど、ビジネスに広がりができる側面があります。
住宅施策として、今後に期待することはありますか。
加藤
まずは不動産業者が要配慮者の状況を理解してほしいですね。入居の受け入れをしてもらえることで、ご本人の住まいの選択肢が広がり、居住支援の課題も解決できると思います。
入原
不動産業者としては、社会貢献とビジネスチャンスと捉える両面があります。「家を借りたい人には当たり前に貸す」と言う不動産業者もいて、「要配慮者」だからというのではなく、その方自身を見るというのが大事かと思います。
萩原
ご本人の希望と物件の実際とでどう折り合いをつけていくかも大切な視点で、福祉関係者の方とも協力してご本人の希望を応援していきたいと思っています。
要配慮者の状況を的確に把握しながら、ご本人にとって安心して暮らせる場がどこか、一緒に考えてくれる居住支援に関わる皆さんの存在は心強いものと感じます。一方で、住宅確保の面においては要配慮者に対する理解や地域の中での見守りなど課題も残ります。今後、福祉と住宅の連携を進める上では、これらの課題に協働して取り組むことが期待されます。(企画課)

代表取締役 加藤 靖教 さん
NPO法人ナレッジ・リンク
相模原市で生活困窮者自立支援制度に基づく就労準備支援事業を行うほか、県の委託を受け町村部の居住支援を行っている。

萩原 利公 さん

事業部 事業課長 入原 修一 さん