稲村ガ崎きしろの実践から考える認知症ケアを支える「学び」と「連携」
- 分野 高齢 /
- エリア横須賀・三浦 /
- 推進主体 学生 /
神奈川県社会福祉協議会では、令和8年度から社会福祉士のソーシャルワーク実習の受入れを始めました。
実習プログラムの一環として、社会福祉法人・施設等の皆様にご協力いただき、福祉サービスを利用する方の生活課題、そこで行われるケア・支援の実践知、サービス提供基盤をより良くするために必要な支援などについてヒアリングを行いました。
今回、実習生が作成したヒアリングレポートをお届けします。ご協力いただきました皆様、ありがとうございました。
稲村ガ崎きしろは、稲村ガ崎と七里ガ浜の閑静な住宅地に位置する、入所65床・ショートステイ10床のユニット型特別養護老人ホームです。家庭での日常生活が困難な要介護3以上の高齢者を対象とした入所サービスに加え、家庭の事情などで一時的に施設を利用したい高齢者・障がい者のための短期入所生活介護(ショートステイ共生型)を提供しています。
認知症ケアの現状と支援の難しさ
現在、施設には63名の方が入所しており、そのうち62名が認知症の症状を抱えています。中等度以上の方は36名にのぼり、施設における認知症ケアが重要となっています。
支援を行う上で、介護職員が困りやすい場面として「わざとではないが、ほかの方の部屋に間違って入ってしまう」「感染症対策として居室で待機してほしいが、認知症による理解の難しさがある」などがあります。これらは認知症の症状や特性によるものであるため、認知症への理解を深めることが求められています。また、ユニット型であっても、担当職員が対応しなければいけない訳ではないため、フロアを越えて協力し合う体制を整え、困りごとの解決に取り組んでいます。
職員研修と専門性の向上
支援や専門性の向上のため、内部研修と外部研修を積極的に行っています。小寺施設長は、神奈川県の認知症介護実践研修が、認知症という病気対する正しい理解や基本理念、知識・技術を学ぶために非常に有益と話します。また、内部研修では、法人内の事業所や地域包括支援センター・認知症ケア委員会などと協力し、認知症ケアの基本的な研修や勉強会を実施しています。これらの研修は勤務時間内で参加できる体制の整備や動画での研修を活用し、多くの職員の参加を促しています。職員が継続的に学び、正しい知識や理解を深めることで、適切な生活環境でのサービス提供につながります。
業務負担の軽減への取り組み
同施設では、記録を音声で入力する「ハナスト」や、睡眠状態がタイムリーにわかる「眠りスキャン」などのICTを活用しています。記録を音声入力することで、小さな気づきをすぐに記録として残すことができます。また、睡眠状態がタイムリーにわかることで、夜間の事故が減少したという効果もあります。特に夜間は職員数が減り、負担が大きくなってしまうため、ICTを活用することで、介護職員の業務負担の軽減に取り組んでいます。
さらに、「介護助手」も支援環境を整え、介護職員の業務負担の軽減につながっています。小寺施設長は、介護助手の導入による困りごとについて「パッと思い浮かばない」と話します。業務のICT化や介護助手の取り組みは、支援者の負担軽減と利用者へのサービスの向上につながります。
すべての人の権利を考える
日々の支援で意識していることについて、小寺施設長は、「利用者さんの権利だけでなく、ご家族様の権利、職員の権利、すべての人の権利に関して、すごく考えないといけない立場である」と話します。すべての人の権利を考えるという事は、色々な立場からの「声」を聞くとでもあります。声を聞くことで、利用者への支援状況や家族の思い、職員の困りごとなどから、ニーズを把握することができます。支援の実態を適切に把握することは、関わるすべての人の権利の尊重につながります。
施設は社会資源の一つ
施設が地域と関わる意味として府川課長は「福祉のセーフティーネットの役割」を挙げます。特定の人だけが利用する場所ではなく、地域・自治体・利用者家族などがつながり、情報共有を行う拠点としての役割があります。
その事業として、地域交流の場として始まった「いきいきサロン」があります。地域との関わりや地域住民同士が交流する場としての役割を担い、社会資源の一つとして地域福祉の推進に取り組んでいます。サロン活動では、ボランティアや地域包括支援センター・家族会・地域の方などと協力して喫茶店や講演会を実施することで、地域とのつながりを大切にしながら、サロン活動を続けています。
今後求められる施設としての役割
施設としては、各専門職が専門性を発揮し協働することで、根拠のある多角的な視点を持つことが求められています。また、鎌倉はアクティブシニアが多いという特徴があります。しかし、「福祉が必要になる時は、突然」であるため、まずは施設の存在を知ってもらうことが重要です。利用者支援だけでなく、利用者家族・支援者・地域の福祉を推進し、地域にある施設として専門性を活かした取り組みが求められています。
今後の認知症ケアでは、認知症に対する理解や学びを深められる研修や勉強会への参加が重要となっています。日々の実践と研修などを通して学び続けることは、利用者支援の質を高めるともに、支援者支援の一つにもなります。また、研修は内部だけでなく、外部とも連携して行うことで、学びがより深まります。
そのため、神奈川県社会福祉協議会は県域のネットワークを活用して施設をつなげる役割があると考えます。さらに、調べただけではわからない施設の実態や取り組みを地域・県域に発信することで、施設と地域をつなげるとともに、地域の福祉サービスの質の向上に向けた取り組みを行っています。
