
廃棄される海藻から生まれた「鎌倉海藻ポーク」 ~料理家の思いを叶えた地域のつながり~
料理教室鎌倉ダイニング 主宰 矢野 ふき子さん
(福)ラファエル会 鎌倉薫風 施設長 太田 顕博さん
- 分野 障害 /
- エリア鎌倉市 /
- 推進主体 ボランティア /
料理家だからこそ生まれたアイデア
鎌倉の海岸に打ち上げられた大量の海藻を豚の飼料にできないか。利用されずに廃棄されている海藻を障害のある人の手を借りて彼らの仕事にできないか。そう考えて行動を始めたのが料理教室「鎌倉ダイニング」主宰の料理家 矢野ふき子さんでした。
矢野さんは、海藻に漁業権を持つ漁業組合に有効利用の了解を得て、料理教室の生徒さんの縁で障害者福祉施設ともつながり、県畜産技術センターに紹介された養豚家の臼井欽一氏の賛同を得ることができました。
当初、行政に相談をした時には「そんな話は聞いたことがない」と、なかなか理解を得られなかったそうです。それなら「一人でやってやろう」と諦めずに活動を続けたところ、持ち前の明るさから人の輪をつくり、多くの支援を得て商品開発に成功しました。
完成した豚肉に、矢野さんは「鎌倉海藻ポーク」と名付けました。オレイン酸といううまみ成分が多く、まろやかな味わいの豚肉になりました。現在は鎌倉市内の学校給食や、一部レストランのメニューで提供されていますが、今後は生産規模を拡大して「いつかは福祉施設の利用者の方々と豚肉の販売ができるようになったら良いなぁ」と矢野さんは展望を語ります。
料理家 矢野ふき子さん
海とのふれ合い、人との交流
取材当日、由比ケ浜海岸で海藻取りが行われました。参加していた(福)ラファエル会鎌倉薫風の施設長太田顕博さんにお話を伺いました。
鎌倉薫風では4年前から鎌倉海藻ポークの活動に参加しています。「鎌倉海藻ポークの話を聞いたとき、興味深い取り組みだと思い参加を決めました。当初は4名の利用者でスタートしましたが、現在は6名で参加しています。皆さん楽しみながら取り組んでいます」と言います。
取れた海藻は海で洗い、施設で乾燥させてハサミでカットします。その後、石臼やミキサーで粗びきして梱包まで行います。海藻の収集から飼料化までの過程を通じて、利用者の方たちに役割意識が芽生えてきたことを感じるそうです。また、2年前に鎌倉海藻ポークの取り組みについて県知事との意見交換会が開かれた時、利用者の方が積極的に発言をしている様子を見て驚いたそうです。
「施設を出て活動に参加し、自然と触れ合い、他の施設や多くの関係者の方々との交流を通じて、利用者の方がより意欲的に活動に取り組むようになったと感じています」と言います。
この日の海藻取りには同市内の4つの福祉施設が参加しました。浜に打ち上げられた海藻は色艶が良く弾力がありました。波の中に入り砂を洗い落とし、根元の太い茎の部分をハサミで切ります。夏の日射しを浴びながら、利用者の方も施設の方も笑顔で活動する様子が見られました。(企画課)
鎌倉薫風施設長 太田顕博さん
荒天の翌日には多くの海藻が流れ着く。取材日前日は偶然にも雨で、たくさん浜に打ち上げられた
鎌倉薫風
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