
アートを通じて育まれる、多様性とつながりの場
アート葉山
- 分野 こども / 障害 /
- エリア葉山町 /
- 推進主体 ボランティア /
アート葉山は葉山町の多機能型事業所「hanto」に併設される、障害の有無にかかわらず児童・生徒、大人など、誰でも参加できる造形教室です。25年にわたり活動を続ける代表の杉野三千代さんが教室を立ち上げたきっかけは「障害のある娘を習い事に通わせたい」という思いからでした。最初は障害のある子どもだけの造形教室でしたが、近所の子どもたちや展示会を訪れた80代の女性からの参加希望を受けて、誰でも参加できる「アート葉山」が令和元年に誕生しました。
みんなちがって、みんないい空間
現在は10名が在籍しており、不登校の子どもや障害のある子、中高生や年配の方など、多様な人が参加しています。陶芸や版画など当日の制作内容は講師が決めますが、作品に「こうしなきゃいけない」という指導はせず、子どもたちの自由な発想を大事にし「それもいいね!」と受け入れてくれます。教室での過ごし方は自由ですが「ほかの人の作品をけなさない・勝手に触らない」と相手の作品を尊重し、どのような作品でもお互いに褒め合うことを大切にしています。

一つひとつ丁寧に、自分の思いを表現していました
「アートは、子どもたちが『さまざまな人とつながる』『自分と異なる相手を認め合う』ことを学ぶ取っ掛かりなんです」と杉野さんは語ります。その言葉どおり、子どもたちは同じ空間で作品を作りながら、お互いの表現を認め合い、少しずつ多様性を受け入れ、違うことが心地良いインクルーシブな雰囲気が自然と教室全体に醸成されているそうです。また、教室は保護者の参加も勧めており、異なる世代の親同士が子育ての悩みや経験を共有できる場にもなっています。
居場所が子どもたちに与える変化
多様な人との関わり合いで、子どもたちにとって成長の場にもなります。「かつて、自分の思い通りにならないと、いらいらして感情をぶつけていた子が家族とは違う大人や多世代の人と関わる中で、相手の意見も受け入れて、自分の感情に折り合いをつけられるようになりました。そうした子どもの成長を見ていると、自分を認めてもらえる『居場所』としての役割にもなっていて、ここを無くしちゃいけないなと思います」と、杉野さんはアート葉山の必要性を強く実感しています。
今は、教室をずっと残せるように、杉野さんの後を継いで教室の取りまとめをしてくれる人を探しています。

個性豊かな作品に囲まれる代表の杉野さん
理解への近道は関わること
「障害への理解を本当の意味で深めてもらうには、障害のある人と関わる機会をどのように作れるかが重要です。関わったことで障害を“特別なこと”としてではなく“その人の一部”として理解してくれる人が増えて、社会がどんどん変わっていってほしい」と杉野さんは伝えます。
アートを通じたふれあいと認め合いが、心の隔たりを溶かしていく―。アート葉山の思いが未来につながるよう、新たな仲間をお待ちしています。