
在日外国人の子どもたちが安心できる「居場所」
(N)在日外国人教育生活相談センター・信愛塾
- 分野 こども /
- エリア横浜市南区 /
- 推進主体 民間団体(NPO等) /
自分が受けた恩を子どもたちへ
在日外国人の子どもたちに対する日本語教育と学習支援を行っている信愛塾の王遠偉(おうえんい)さんを訪問しました
王さんは、中学生の頃急きょ来日することになりました。言葉も文化も分からない中、学校の勉強も理解できず、話が通じる友達もいませんでした。そうした時に、信愛塾を紹介され、日本語を学ぶために通い始めました。
ここでは、自分と同じ境遇の外国籍の生徒と一緒に学んだり、遊んだりでき、王さんにとっては「家よりも安心できる場所」でした。その後、王さんは大学院を卒業し、CAD設計士として大手企業に就職をしました。この間も、王さんはボランティアとして信愛塾に関わっていましたが、令和6年1月末に会社を退職し、信愛塾の職員として働き始めました。
技術職を辞めて転職をした理由を尋ねると「恩返しがしたかったから」と、笑みを浮かべます。王さんは「自分と同じ境遇の子どもたちに安心できる場所を作ってあげたい。ここで、自由に遊んで勉強して欲しい」と話します。
信愛塾には現在100名以上の子どもたちが通い、中国やフィリピンなどアジアの近隣諸国から来た子どもたちが多くいます。ここでは「デデ」の愛称で呼ばれて親しまれている王さん。子どもたちに学習支援を行いながら、一緒に遊んだり、ピアノを弾いたりして楽しい時間を作り出しています。子どもたちにとって王さんは、信愛塾を卒業して社会で活躍しているロールモデルとなっています。王さんは「自分のやりたいことをあきらめず、夢を貫いて欲しい」と伝えます。

事務局次長の王遠偉さん
知ってもらうことが第一歩
王さんが恩返しをしたかったのは、信愛塾センター長の竹川真理子さんです。竹川さんは1978年から45年にわたり在日外国人の子どもたちへ日本語指導や学習支援を行ってきました。王さんも中学生の頃から竹川さんに様々なことを教わってきました。竹川さんは子どもたちだけではなく、家族の生活相談も受けるようになり、昨年は1,100件以上の相談に対応しました。相談内容も教育・生活から人権に関わるものまで、深刻で複雑なものが多く、取材中も何人もの相談者との電話が続いていました。
信愛塾は「子どもの居場所を作る」と「日本にきた家族が生活を営むことができる環境を築けるよう社会や行政に発信する」を“両輪”としてずっと活動を続けてきました。竹川さんは「在日外国人の子どもたちや家族がおかれている言葉の壁、孤立、SOSや厳しい環境を知って欲しい、知ってもらうことが第一歩です」と言います。
今後、王さんは竹川さんと共に厳しい生活に置かれた親子の相談支援に奔走する予定です。竹川さんにとって王さんは「とても心強い存在で嬉しいです。でも、一番喜んでいるのは子どもたちです」と、その存在の大きさを改めて伝えてくれました。(企画課)

子どもたちと竹川さん、王さん
(N)在日外国人教育生活相談センター・信愛塾
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