羽ばたく日本のデフ射撃 未来を撃ち抜く挑戦
日本ろう者ライフル射撃協会 会長 桂玲子さん
- 分野 障害 /
- エリア藤沢市 /
- 推進主体 民間団体(NPO等) /
2025年11月15日から26日まで、聴覚障害のある選手たちによるオリンピック「デフリンピック」が初めて日本(東京)で開催されます。今回は射撃競技日本代表に内定している桂玲子さんに、大会にかける想いを聞きました。
小さな原点から大きな挑戦へ
桂さんは子育てが一段落した頃、ママ友に誘われてビームライフル射撃の体験をしたことがきっかけでその面白さに引き込まれ、本格的に射撃競技を始めました。60歳の時、ろう学校時代の友人からデフリンピックの存在を知り「東京で開催されるなら挑戦してみたい」と思うようになったそうです。
「当時国内には聴覚障害のあるライフル射撃選手も、射撃のデフスポーツ団体もありませんでした。『東京でのデフリンピックをきっかけにデフスポーツの魅力を広め、聴覚障害のある方の心のバリアを少しでも減らしたい』と思い、射撃仲間や友人に呼びかけ、2023年4月に『日本ろう者ライフル射撃協会』を設立しました」と桂さんは言います。12名の会員でスタートした協会は、現在53名まで増え、東京大会には桂さんを含め5名の選手の出場内定が決まっています。(2025年7月時点)
視覚で支える勝負の瞬間
射撃は体幹やバランスが重要なスポーツであるため、人によっては左右の耳の聞こえ具合の差や平衡感覚のずれが競技に影響するそうです。
デフリンピックでのルールはオリンピックと同じですが、アナウンスが聞こえない選手のために、今回の東京大会では、選手の目の前にあるモニターに競技開始・終了の合図や弾を撃つ残り時間などを示す画面が表示されるそうです。

デフリンピックなどの国際大会で選手へ「競技ストップ」を知らせるモニター画面
“初出場”から始まる未来
デフリンピックは今年で開催100周年を迎えますが、日本の選手が射撃競技に出場するのは、今回が初めてです。「日本のデフ射撃を一過性で終わらせたくない」という想いから、他の選手の指導・育成にも積極的に取り組んでいる桂さん。「一言に聴覚障害と言っても、手話やスマホの文字起こしアプリなど、その人に合ったコミュニケーション方法があり、知っている言葉や文章力も人それぞれなので、指導の際は相手に合わせた伝え方を心がけています。当協会は設立まもなく、東京大会の出場内定選手には競技経験が半年や1年足らずの方もいます。メダル獲得は難しいかもしれませんが、今回の出場を機に、日本のデフ射撃の選手たちを世界へ羽ばたかせたいと思っています。ぜひ応援をよろしくお願いします!」と、デフリンピックに向けた想いを語ってくださいました。

「一人でも多くのデフ射撃選手を発掘し、育成したい」と語る桂さん
デフリンピックとは
デフ(Deaf)とは、英語で「耳がきこえない」という意味です。
4年に1度開催され、国際手話のほか、スタートランプや旗などを使った視覚による情報保障が特徴です。
