テキストデータ作成に当たって  このデータは、『福祉タイムズ』 vol.858 2023年5月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。  二重山カッコは作成者注記です。 P1 福祉タイムズふくしTIMES 2023.5 vol.858 編集・発行社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 特集 かながわライフサポート事業 10年の歩みを振り返り、これからの活動を考える NEWS&TOPICS P4 神奈川県の再犯防止の推進について 県福祉子どもみらい局福祉部地域福祉課 P5 身寄りがなくても安心して医療が受けられる事を目指して (一社)県医療ソーシャルワーカー協会 連載 P8-9 連携・協働の今-新たなパートナーシップを目指して-② 今月の表紙 16年間、相模原市で民生委員・児童委員として活動する大貫君夫さん。 地域住民のため、各地区、市民児協とワンチームで活動を続ける。【詳しくは12面へ】撮影:菊地信夫 P2 特集 かながわライフサポート事業 10年の歩みを振り返り、これからの活動を考える  本会会員の社会福祉法人で基金を募り、地域の関係機関と連携して生活困窮者を支援する「かながわライフサポート事業」(以下、本事業)は、関係者の皆様のご理解・ご協力により、昨年5月に10周年を迎えることができました。去る2月28日の総会に併せ、10周年記念シンポジウムを開催するとともに、その内容を収録・編集したシンポジウムの動画を4月20日から6月末日までの3カ月間、本会ホームページ上で配信しています。  今回は本事業の成り立ちから10年間の活動の歩みを振り返りながら、関係者の皆様のご意見を事業に反映していけるよう、今後の活動を考えていきます。 事業の成り立ち  本事業は、県内の社会福祉法人を中心とした約530法人の会員組織「経営者部会」において「社会福祉法人の原点に立ち返り、目の前の困っている人に何かできないかを必死に考え、実践していくべきではないか」という意見があったことをきっかけに、平成25年にスタートしました。  自発的な活動を支える財源として、参加法人(令和5年4月現在82法人)自らが資金を出し合い、基金を設立して事業を運営するほか、参加法人が任命した職員をコミュニティーソーシャルワ―カー(以下、CSW)として配置、地域の関係機関等と連携して実践活動を行っています。  本会事務局は基金管理をはじめ、ライフサポーター(以下、LS)を配置して、CSWの養成を行い、CSWが受けた相談で対応が難しいケースの関わり方を一緒に考えたり、LSが支援に同行したりするなど、CSWの後方支援を行っています。 地域の関係者による連携と協働  生活に困っている方は、人間関係や疾病、障害等、様々な要因が複雑に絡み合っていることが少なくありません。  福祉制度が進展した今日でも、既存の制度では対応できない「制度のはざま」「社会的孤立」等の問題があります。  こうした複雑化・多様化する生活課題を解決していくためには、制度・分野の垣根を越えた支援が必要とされています。  本事業は、生活に困っている方を中心に、民生委員・児童委員や地域の関係機関・福祉関係者をつなぐこと、つながることによる「地域におけるネットワークの構築」を目指しています。 支援の積み重ねを地域力に  生活に困っている方は、多くの場合、社会との関わりも希薄になっています。  様々な関係機関が地域の中で提供しているサービスや社会資源を持ち寄り、生活に困っている方を支援し、見守りながら関わることで、生活に困っている方の再スタートのきっかけにつながることもあります。  地域の方々が協力して取り組む支援は、地域に住む方々や働いている人同士で支え合うことができる地域の「チカラ」を生み出していくことになります。  本事業の活動を通じて、社会福祉法人も地域の〝ワンピース〟として、福祉の原点である地域の福祉課題に向き合い、生活に困っている方の今後の生活を一緒に考える活動に取り組んでいます。 〈図〉 ※関係機関向けパンフレットの一部を抜粋 〈図終わり〉 関係者の方々の声をバネに  関係者の方々の声を事業に反映できるよう、基金管理・事業運営2つの委員会を設置(今年度より運営委員会へ統合)しています。  これまでの経験や実績を踏まえ、「対象者を限定しない・できる支援を項目として定めていない」事業であることを前提として、大きくは次の2つの方向性で、事業を展開しています。  「生活に困っている方を取り巻く関係機関や支援者に事業の趣旨を分かりやすく伝え、正しく理解してもらうことが重要である」  「地域における参加法人の支援の輪が広がり、CSWが活動しやすい環境をつくるため、参加法人の理事長・施設長の理解を促進することが大切である」  これらの声を基に、令和3年度は「一般向けリーフレット」を、令和4年度は、本事業を分かりやすく伝え、CSWの役割を関係機関や参加法人に理解していただけるよう、事例中心の「関係機関向けパンフレット」を作成しました。  CSWの実践活動に役立つ情報を発信する「ライフサポート通信」についても、CSWのアンケート結果を反映して、CSW相互の双方向性をつくり、複数の事例を掲載する工夫も行っています。 P3 実践報告中心のシンポジウム  去る2月28日の総会に併せて、ライフサポート事業10周年記念シンポジウムを開催しました。  シンポジウムには、参加法人のほかに社協職員等、約50人に参加をいただきました。  本会篠原会長の挨拶に続き、事業運営委員会の小泉委員長は「ここまで来られたのも、参加法人をはじめ、地域の関係者の皆様の理解があったからこそ」とその歩みを振り返りました。  基調講演で、日本福祉大学教授の渋谷篤男さんは「関係機関向けパンフレット」の中から主要部分を取り上げ、「社会的孤立やひきこもり、8050問題、子どもの貧困など複雑化・多様化する福祉課題やニーズの変化で、地域共生社会の実現や包括的支援体制の構築に向けた社会福祉法人・社協等の協働が求められている」と本事業の原点を確認していきました。 〈写真〉 意見交換の一コマ。左から講師の渋谷さん、発表者の橘田さん(泉心会)、奈良輪さん(小田原福祉会)、嘉藤さん(プレマ会) 〈写真終わり〉  続いて、活動を実践する社会福祉法人のCSWから、①民生委員との連携による同行支援の事例(泉心会)、②一人のCSWが相談を抱え込まないための法人内情報共有システム(小田原福祉会)、③行政や社協、学校等の関係機関で構成する大和市連絡会でのケース検討(プレマ会)など、3つの社会福祉法人の特長ある活動を報告しました。  講師の渋谷さんと3人のCSWは「この事業を関係者が理解し合い、顔の見える関係性をつくり、それぞれの持ち味を集めて地域力を高めていくことが大切である」と意見交換を行いながら、今後の参加法人への期待を込めて、語り合いました。  最後に、基金管理委員会の浦野委員長は「社会福祉法人の本旨に基づき、時代の変化に対応する柔軟性が求められている」と挨拶して閉会しました。  この10年を一つの節目として、シンポジウムで話し合われたように、それぞれの地域で関係者が顔の見える関係性をつくり、それぞれの強みを持ち寄り、現に生活で困っている方の支援を一緒に考えていけるよう、今後も関係者の方々の声を集約して、活動していきたいと考えています。(福祉サービス推進課) かながわライフサポート事業 指定施設一覧はこちら→ 〈コラム〉 かながわライフサポート事業に期待すること 日本福祉大学教授 渋谷篤男氏(かながわライフサポート事業運営委員会委員)  ライフサポート事業に運営委員として参加して5年が経ちました。実際に、経営者やソーシャルワーカーとしてかかわっている方々の話をきくにつれ、この事業の可能性を感じてきました。  もしかすると、ライフサポート事業はあまり活発ではないのではないか、と思われているかもしれません。確かに相談件数は飛躍的に伸びているわけではありません。まわりの相談機関や自治体もあまり理解してくれていない向きがあります。  それでも可能性を感じた理由は、相談支援を担当した方々がいきいきとその内容を語ることです。言ってみれば「ソーシャルワーカー魂が揺さぶられている」のを感じるのです。  ライフサポート事業のパンフレットでは「私たちが実践していきたいことは地域での生活相談であり、経済的支援はあくまで手段の1つです。」と説明しています。  実は、経済的支援があるがために、他の相談支援機関からは、「支払いができなくて困っているから10万円出してあげて」と振って来る実態があります。それでも、相談を始めてみると、制度でも経済的支援でも対応できない困りごとが隠されていることが少なくありません。  ただでさえ、本業で忙しいのに、そんなことに力を割けるのか、という声も聞こえてくるのですが、こういう困りごとが社会にはあふれているのではないでしょうか。  いまいちばんの問題は、私も含めて制度サービスの充実に関心が向き過ぎ、制度が対応しにくいニーズに目が向かなくなっているのではないか、ということです。とくに気になるのは社会的孤立です。  予想もできないような困ったことに応えてきたのが、社会福祉の歴史であり、今後も、そういうことに対応しながら、新たな活動を切り開いていくのではないでしょうか。  この事業に参加されている法人には、先頭を切って切り開く役割をこれからも続けていっていただきたいと思います。そして、広く社会福祉法人の方々には、ぜひチャレンジを! 〈コラム終わり〉 P4 NEWS&TOPICS 神奈川県の再犯防止の推進について 再犯防止推進の背景  我が国の刑法犯の認知件数は、平成14年にピークを迎えて以降、減少している一方で、検挙人数に占める再犯者の割合(再犯者率)は上昇している状況があります。  そうしたことから、平成28年12月に「再犯の防止等の推進に関する法律」が施行され、地方公共団体は、再犯の防止等に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地域の状況に応じた施策を策定し、実施する責務を有することが定められました。  翌平成29年12月には、国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現を図るため、政府が取り組む再犯防止に関する施策を盛り込んだ、再犯防止推進計画(第一次)が閣議決定されました。 県再犯防止推進計画の策定  こうした中、平成30年に神奈川県再犯防止推進会議を設置し、再犯防止推進計画の策定に向け、学識経験者、国の機関、更生保護団体、県民の公募委員など、様々な立場の方と検討を行いました。  平成31年3月に「罪を犯した人が立ち直り、地域社会の一員として、ともに生き、支え合う社会づくり」を促進することを目標として「神奈川県再犯防止推進計画」を策定しました。  本計画は、令和元年度から令和5年度までの5年間を計画期間とし「就労・住居の確保」「保健医療・福祉サービスの利用の促進」「非行の防止等」「犯罪をした者等の特性に応じた効果的な支援」及び「民間協力者の活動の促進、広報・啓発活動の推進」を5つの大きな柱として、施策を展開してきました。 再犯者数と再犯率の推移  刑法犯検挙者中の再犯者数は平成19年以降毎年減少しており、令和3年は約8万5千人でしたが、再犯者率は48・6%と、およそ半数の人が再び罪を犯してしまう現状があり、今後ますます再犯防止の取り組みの推進が重要になると考えられます。 次期計画の策定に向けて  国では、令和5年3月に第一次計画の内容を発展させるため、第二次計画を閣議決定しました。第二次計画には、7つの重点課題について、96の具体的施策が盛り込まれ、対象者の主体性を尊重した息の長い支援や、地域の支援ネットワーク拠点の構築、国・地方公共団体・民間協力者等の連携強化などの方向性が示されました。  今年度は県再犯防止推進計画の最終年度を迎え、国の第二次計画の内容を勘案しつつ、これまでの取り組みについて成果を検証し、より一層充実させるため、次期計画の策定を進めていきます。  また、県内市町村においても、11市3町で着々と計画の策定が進められています。(令和5年4月時点) 社会を明るくする運動  〝社会を明るくする運動〟は、すべての国民が犯罪や非行の防止と犯罪や非行をした人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築くための全国的な運動です。 〈写真〉 “社会を明るくする運動”令和5年度ポスター 〈写真終わり〉  本運動は、今年で73回目を迎え、毎年7月は強調月間として、本県でも県知事を委員長とした「〝社会を明るくする運動〟神奈川県推進委員会」において、様々な活動が行われます。 おわりに  罪を犯した人であっても、その罪と向き合い、刑務所等で更生のための矯正教育を受け、社会復帰のために努力して再出発した人は、私たちと同じ社会の一員です。しかし、刑を終えて出所した人等やその家族に対する偏見や差別は根強く、就労や住居の確保が困難である等、社会復帰が極めて厳しい状況にあります。  刑を終えて出所した人等の社会復帰のためには、自らの努力を促すだけでなく、地域社会において孤立しないよう周りの人々の理解と協力が必要です。立ち直りを支える地域づくりに向け、日頃から社会福祉に携わる皆様には今後ともご協力を賜りますようお願い申し上げます。 (県地域福祉課) 〈囲み〉 神奈川県再犯防止推進計画 神奈川県再犯防止推進計画は、県HPで公開されています。 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n7j/saihanboshi/keikaku.html 〈囲み終わり〉 P5 NEWS&TOPICS 身寄りがなくても安心して医療が受けられる事を目指して―(一社)神奈川県医療ソーシャルワーカー協会の取り組み 身寄りのない方の増加の懸念  皆さんは、病気やケガで入院する時、病院から身元保証人を求められること(入院申込み等に記載欄あり)をご存じでしょうか。令和4年10月に総務省が実施した「高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機)―入院、入所にかかわる支援事例を中心として―」では、9割以上の病院が身元保証人を求めていると回答しています。  なぜ病院は身元保証人を求めているのでしょうか。病気やケガで入院すると、次のような事が予想されます。  ①一人で外出し、自宅や買い物、銀行へ行く事ができない。②意識がはっきりしない事や、認知症のような症状が出てしまう事もあり、判断能力が不十分だったり、無くなったりすることがある。③緊急事態が起こる事や、状態によっては亡くなる事もありうる。  こうした時に病院は、本人に代わり入院中に必要な物品を用意したり、入院費の支払いをしたり、元気だった時の本人の希望や考え方を教えてもらったり、緊急事態や亡くなった後の対応をお願いできる人を必要としています。これらの役割を、病院は身元保証人にお願いしようとしています。  日本社会は、昔から身元保証人を必要とする事柄が多く、主に家族や親族が保証人となってきた歴史があります。しかし、近年の日本社会の核家族化、高齢・少子化、未婚化に伴い、頼れる親族や家族がいない、家族へ連絡がつかない状況にある、家族の支援が得られないという、いわゆる「身寄りがいない人」が増加しています。  「2019年 国民生活基礎調査」によると、全国の一人暮らしの高齢者は約737万人で、その人数は年々増加しています。こうした一人暮らしの高齢者の増加に伴い、入院などに身元保証人等を立てることが難しい高齢者も増加しているのです。 身元保証人がいないと入院できないのか?  医師法では「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」(昭和23年法律第201号 第19条第1項)とされています。従って救急病院などでは身元保証人がいない事を理由に入院を断ることは無いと思われますが、先に説明した身元保証人に求めている役割を担ってくれる人がいないと、入院してから本人も病院も困ることが多々あります。  そこで、身寄りがなくても医療機関が必要な医療を提供することができる事、身寄りがなくても本人が安心して必要な医療を受けられる事を目指し、令和元年6月に厚労省が医療機関向けに「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を作成し、医療機関が取れる対応を示しています。しかし、実際の医療現場では、病院自体の体制、行政の体制・対応、社会保障制度の不備等の課題と、一人ひとり患者さんの背景が違うことが絡みあって、ガイドラインに示されたとおり支援が進まない事も多々あります。そのため、救急病院で身寄りのない人を受け入れていても、治療終了後、リハビリ病院や療養病院、介護保険施設等で受け入れてもらえない事が散見され、本人の不利益につながる場合があります。 神奈川県医療ソーシャルワーカー協会の取り組み  こうした現状を踏まえ、当協会では、病院や介護老人保健施設での「身寄りない人への支援について」の実態調査や先述のガイドラインの普及啓発と研修、総務省による高齢者の身元保証に関する調査報告会、他業種多機関シンポジウムなどを開き「身寄りのない人への支援」に関する会員の知識・技術の向上に取り組んでいます。さらに、行政や他の専門職団体と課題共有・解決に向けた取り組みを展開しています。  身寄りがない状況は誰にでも起こる可能性があります。私たち医療ソーシャルワーカーは、医療現場での唯一の福祉専門職団体として、これからも身寄りの無い患者さんが安心して医療や福祉サービスが受けられることを目指し、活動を行っていきます。 (神奈川県医療ソーシャルワーカー協会) 〈コラム〉 医療ソーシャルワーカーとは  医療が必要な患者さんやご家族の方々が安心して治療に専念できるよう、治療や療養の妨げになる生活上の問題(経済的・心理的・社会的)を共に考え、よりよい解決への糸口を見出すお手伝いをする、保健医療機関で働く福祉の専門職です。  (一社)神奈川県医療ソーシャルワーカー協会は、保健・医療・福祉分野におけるソーシャルワークの発展と、会員の資質の向上と地位の確立を図るとともに、すべての人々の社会福祉の増進に寄与することを目的とした協会です。 〈コラム終わり〉 P6 福祉のうごき 2023年3月26日~2023年4月25日※新聞等掲載時点 ●県内の障害者虐待 過去最多  県は3月24日、令和3年度における県内の障害者虐待の状況について、通報等の状況の調査結果を公表した。  市町村や県の事実確認により虐待の事実が認められた事例は167件、180人に上り、前年から23件、25人増加し、ともに過去最多となった。 ●内閣府実態調査 ひきこもり146万人  内閣府は3月31日「こども・若者の意識と生活に関する調査」の報告書を公表した。  集計結果により、15歳から64歳でひきこもり状態にある人は全国に推計で146万人いることがわかった。調査対象の約5人に1人は「新型コロナウイルス感染症が流行したこと」を理由としてあげており、社会情勢も反映されている。 ●こども家庭庁 本格始動  こども家庭庁が4月1日に内閣府の外局として設置された。これまで各省庁に分散していた子どもに関する政策を束ね、深刻化する少子化対策のほか、虐待や貧困、生まれる前からの切れ目のない支援など、多様な課題に横断的に取り組む。  こども家庭庁の設置と同時に施行されたこども基本法は、国や自治体の政策に子ども等の意見を取り入れることを義務付けている。 ●横浜市 「よこはま防災 e-パーク」を開始  横浜市は4月12日、地震や火災など災害時に必要となる知識や技術について、研修会参加者の固定化や高齢化といった課題に対応するため、いつでもどこでもオンラインで身近に防災を学べる「よこはま防災 e-パーク」を開設した。  「よこはま防災e-パーク」は(一財)ポケモン・ウィズ・ユー財団との連携により、子どもから大人まで幅広い年代の方がわかりやすく学べるようになっている。 P7 私のおすすめCHECK! ◎このコーナーでは、子育てや障害、認知症・介護当事者等の目線から、普段の暮らしに役立つ「おすすめ」なものを紹介します。 自分の思いを素直に話せる場~意見交換会~  皆さんには、いろんな困りごとやうれしかったことなどを素直に話せる場はありますか? 身近な人ではない人たちとも共有できたら、少し地域で暮らしやすくなるような気がします。 今回はそんな場所を紹介します。 今月は→神奈川県自閉症協会がお伝えします! 1968年設立。横浜市・川崎市を除く県内11地区の自閉症児・者親の会による連合会です。行政施策の研究・提言、当事者・家族のためのミーティング運営、療育者等に向けた勉強会・セミナー運営等、自閉症児・者と家族の支援や、自閉症スペクトラムの理解を進めるための活動を各市町村及び県に向けて展開しています。 〈連絡先〉URL:http://kas-yamabiko.jpn.org  この子は、きょうだいやほかの子とどうも育ち方が違う、と思ったり、通っている保育園や幼稚園・小学校で「違う」ということを指摘されたりして、そこから家族はいろんな相談の場所とお付き合いが始まります。それと同時に、子どもが通っている場所を中心に、家族も「仲間」ができ、仲間との日ごろの話で生活のヒントをもらったりできるようになります。こうした日常生活における困りごとについて行政との話し合いの場を持ち、どのような場面でどのような困りごとがあるのか知ってもらい、少しでも暮らしやすくなるような働きかけを頑張っている会は多いと思います。  横須賀市で行われている「意見交換会」は障害のある人や家族だけでなく、支援している人、地元の市議会議員、民生委員児童委員、そしてオブザーバーとして行政の方も参加しています。主催は横須賀市障害者施策検討連絡会と横須賀市です。障害、年齢など、その人によって困りごとは千差万別で、毎年今まで出なかった意見が1つは挙がります。そのような意見の発言者は「私一人の困りごとだと思うのだけれど」と話し始めます。でも、それは一人だけの困りごとではなく、困っているにも関わらず発言する機会がない方の代弁をすることにもつながっていると思います。  また、意見交換会の名前があらわすように、様々な立場の方が参加しているので、それぞれの立場からのアドバイスや共感を得ることができます。一人の困りごとが「社会化」していく場にもなっていると思います。  かつてLGBTQの方が参加され「障害のある人もそうだが、我々も合理的配慮のないことに悩んでいる」という発言がありました。障害者支援施設の職員が入所されている方の実家の後始末を業務外で行っている話なども大変重く聞きました。このように、意見交換会は様々な方の発言の機会になっていると思いました。  障害のあるご本人たちも、この日のために日頃の思いを支援者とともに言葉にして、積極的に発言しています。回を重ねるにつれ、多くの人の中でも大きな声で発言できるようになるなど、経験の一つとしても参加していると感じます。  「意見交換会」はコロナ禍で2年間開催できなかったのですが、昨年、きょうされん神奈川支部の方のご協力で会場とオンラインのハイブリッドで開催しました。今年も、横須賀市立総合福祉会館とオンラインで開催します。  皆さんの地域にも地域の親の会や市民団体での話し合いや要望活動の場があると思います。そういう場に参加し、ご自分の思っていることを素直に発信され、それによって少しでも住みよい地域になるよう動いてみてはいかがでしょうか? 〈写真〉 参加者の声を反映したチラシ 〈写真終わり〉 P8 ー新たなパートナーシップを目指してー 連携・協働の今  連載 連携・協働の今② 地域を元気に! 社会福祉法人による連携・協働-ハッピー餃子ぱんからの地域のエンパワメント  人気ベーカリーを制し、パンのイベントでシルバー賞を受賞した「ハッピー餃子ぱん」。これには、地域を元気にする社会福祉法人の連携・協働によるアイデアと、利用者のエンパワメントを引き出す仕掛けがありました。  今回は、社会福祉法人寿徳会のハッピーラボに取材に伺いました。 地元食材を活かした餃子  秦野市にある(福)寿徳会ハッピーラボは、知的障害のある人たちによる餃子の製造を中心とした障害者就労支援施設です。地域の就労の場としての期待を受けて、平成28年に開所されました。ここで作られる「幸せ餃子」の製造では、地域に密着した活動が行われています。  「自然に恵まれている秦野には、おいしい野菜などの特産品があります。特に神奈川の名産100選にもなっている高座豚と新鮮なキャベツを使った『幸せ餃子』は、地元に人気の商品です。市内のいくつかのお店に餃子を納品しているのですが、もっと販路を拡大できないかということは、常に考えてきました」と、サービス管理責任者の西山さんは言います。 〈写真〉 真剣に餃子を作る利用者の皆さん 〈写真終わり〉 コロナ禍の逆境での販路拡大  コロナ禍では外出を控える人が多く、ハッピーラボに餃子を買いに来る人は少なくなりました。  以前からインターネット販売をしていたものの、人の流れが少なくなるコロナ禍で販売数を保つためにはどうしたらいいか―。思いついたのは自動販売機での販売です。ハッピーラボが、大きい道路に面しているメリットを活かしました。これで人との接触なしに24時間餃子を購入してもらうことができます。さらに、おうち時間を過ごしている人や在宅勤務をしている人のところに出向いて販売するアイデアも出ました。そこで、コロナ禍で地域のイベントや福祉施設の催しが無くなり、出番が減ったキッチンカーを利用して、一度に効率よく売り上げられるよう、タワーマンション前をターゲットにした移動販売を始めました。  こうしてコロナ禍の逆境をチャンスに変え、人々を楽しませた餃子は、さらに地元の人に愛される人気商品になりました。なお、この「幸せ餃子」は秦野市のふるさと納税の返礼品にもなっています。 コラボで誕生「ハッピー餃子ぱん」  さらに販路拡大へのチャレンジは続きます。温めていたアイデアの一つは「餃子を挟んだ餃子ドッグ」。しかし、何度試作しても、なかなかうまくいきませんでした。そんなとき「湘南みかんぱん」など数多くのヒット商品を手掛けるサンメッセしんわ((福)進和学園)でも、パンの商品開発に試行錯誤していましたが、日頃、給食の食材として購入していた「幸せ餃子」を見て、パン生地でさらにまるごと包むというアイデアが生まれ、餃子に合う生地の試作を重ねた結果、鶏がらスープを生地にねりこんだ新感覚の総菜パンが完成。ハッピーラボとサンメッセしんわによるコラボ商品「ハッピー餃子ぱん」が誕生しました。 〈写真〉 利用者の皆さんの思いがつまったハッピー餃子ぱん 〈写真終わり〉  サンメッセしんわは、この「ハッピー餃子ぱん」を目玉商品に、本年3月に横浜赤レンガ倉庫で開催された日本最大級のパンの祭典「パンのフェス2023春」に出店。その中の「アワード2022」にエントリーし、並み居る全国の人気ベーカリーを制し、新しい時代を担うパンに与えられる「ぱんてな賞」を受賞。また来場者が投票で選ぶシルバー賞もダブル受賞するという快挙を成し遂げました。その発表を聞いた利用者の皆さんは大喜び。自分たちが作った餃子が入ったパンがメディアに取り上げられるたび、「もっと売れるといいね」と、期待が膨らみます。  餃子が売れれば、自分たちの工賃に反映されるということ理解している皆さんにとって、仕事のモチベーションとやりがいにつながっているようです。 P9 農家との連携を通じた障害者理解  一方、秦野市では、地域の特性を踏まえて農福連携を進めています。  西山さんは言います。「市主催の農家さんたちとの意見交換会に出席した際、障害者雇用でうまくいかなかった経験がある農家さんもいました。畑の草刈りを依頼したら『雑草ではなく、植えた苗の方を引き抜かれてしまった』のだそうです。そこでは、こう説明しました。障害のある人でも作業が理解できるよう、例えば、抜いてはいけない苗の場所をマーキングしてから作業を始めるなど、環境を工夫することによってできるようになりますよ、と」。  障害のある人の就労支援の場では、周りのちょっとした工夫で苦手としていたことが得意なことに変わることもあると言います。できないことに着目するのではなく、少しのサポートがあることで、本人の「できる」が広がることを地域の人たちに伝えていきます。  ここでは、障害特性があること、必要な配慮事項があること、これらを伝えることで障害に対する理解を促していくソーシャルワークの取り組みが行われています。  地域共生社会に向けては、地域の資源や多様性を活かしながら、人と人、人と社会がつながり合う取り組みが生まれるよう、環境を整えることが求められています。 地域の元気と利用者のエンパワメント  ハッピーラボとサンメッセしんわ、各々の生産品の強みを生かした「ハッピー餃子ぱん」は、法人という枠を超えた緩やかな協働によって生まれました。メディアに取り上げられたことで、遠方から餃子やパンを求める人が訪れており、これから、秦野や平塚の地域を盛り上げていくことでしょう。  さらに「ハッピー餃子ぱん」の売り上げが伸びればハッピーラボの餃子の出荷量も増え、利用者の工賃に反映されます。工賃アップはもとより、製造したものが社会から高い評価を得ることは、利用者の皆さんの大きなエンパワメントにつながっていくと考えられます。  キッチンカーが出動する日は「今日も餃子を沢山売ってきてね」と、利用者の皆さんからの声援と大きな期待がかけられています。 (企画課) 今回取り上げた「幸せ餃子」は、売上の一部が様々な福祉活動に使われる赤い羽根・寄附つき商品です。詳しくはこちらまで P10 県社協のひろば 社協の専門性と組織特性をふまえた研修体系による人材育成―社協の総合相談の機能を高める研修の実施  本会市町村社協部会では、社協の専門性と組織特性をふまえた職員育成のあり方を検討し、育成指針の策定と研修により、市町村社協職員の育成を行っています。 社協の総合相談をすすめるための関連研修  令和3年度から社協の総合相談をすすめるための関連研修(CSW研修)を実施しています。CSW研修は「基礎編」と「社協ゼミナール」の2つから構成され、個別支援と地域支援を行う社協職員が社協の総合相談の機能を高めることを目的としています。 〈写真〉 要綱だけではなく、チラシによる周知も 〈写真終わり〉  「基礎編」は座学のみの研修になりますが、「社協ゼミナール」は講師と市町村社協職員が少人数で年に5~6回ほど集まるゼミナール形式で議論や検討を行います。令和4年度は「地域の住民活動」「地域活動を行う組織」等、各々が選んだテーマで事例検討を行いました。所属組織が違うからこそ出てくる意見や質問が飛び交い、社協職員にとって気づきや学びを深める場になりました。2年間で3市7町19名の社協職員が参加し、社協職員同士の交流や、日々の情報交換にもつながっています。 かながわ版社協職員育成指針2022の発行  令和4年度に市町村社協部会では『かながわ版社協職員育成指針2022』を発行し、神奈川における社協職員の育成に向けた研修体系を示しました。CSW研修も研修体系のひとつに位置づけられています。人材育成は各々の社協の方針により計画的に実施するものであり、実情に応じて工夫して実施する必要があります。併せて、自分の組織を超えて近隣社協との協力や、ブロックを活用した人材育成をすすめることも有効と考えます。  市町村社協部会では引き続き本指針を基に、昨今の複雑・多様化する地域福祉課題に対して社協の専門性を発揮していけるよう、社協職員の育成をすすめてまいります。(地域課) 〈図〉 かながわ版社協職員育成指針・研修体系 〈図終わり〉 P11 Information 本会主催の催し 第21回かながわ高齢者福祉研究大会  高齢者福祉施設職員等による研究・実践活動や介護技術の発表の場として、共に学び合い、研さんすることを目的に、4年ぶりにパシフィコ横浜で開催します。  全86題の研究発表、介護技術発表の他、県内施設等の紹介コーナーを設置し、高齢者福祉の魅力を発信していきます。協賛企業出展コーナーも実施します。 ◇日時=7月5日(水)9時50分~16時 ◇会場=パシフィコ横浜会議センター ◇費用=会員6,000円、非会員8,000円、一般参加者無料 ◇申込方法=大会ホームページ専用フォームにて申込み。URL:https://www.kanaga wafukushitaikai.jp/ Twitter:https://twitter.com/K_KoureiTaikai(@K_KoureiTaikai) かながわ福祉サービス運営適正化委員会・苦情解決研修会 第1回 基礎編「苦情解決のしくみを理解する」  講義を通じて苦情対応の意義や留意点、苦情対応の基礎的な相談技術等について学びます。 ◇日時=令和5年7月28日(金)13時30分~16時30分 ◇対象=県内の社会福祉事業者に所属の苦情受付担当者、苦情解決責任者および第三者委員の方、または苦情対応を担当する方 ◇参加費=1名2,000円 ◇開催方法=オンライン ◇申込締切=令和5年6月26日(月) 詳細はHPで確認 HP:http://www.knsyk.jp/c/tekiseika/6acc08c531b05a23bfae8ce336876827 ◇問合せ=かながわ福祉サービス運営適正化委員会事務局 TEL 045-534-5754 FAX 045-312-6302 寄附金品ありがとうございました 【交通遺児等援護基金】(株)エスホケン 【子ども福祉基金】(株)エスホケン、脇隆志 【ともしび基金】石田隆、県立茅ヶ崎養護学校、(福)日本医療伝道会総合病院衣笠病院 (匿名含め、合計10件 113,750円) 【寄附物品】(公財)報知社会福祉事業団 【ライフサポート事業】 〈寄附物品〉(N)セカンド・ハーベストジャパン (いずれも順不同、敬称略) 本会事務局人事異動 (令和5年5月1日付、管理職員のみ) 【かながわ福祉人材研修センター】所長兼福祉人材センター課長 井上直 【かながわ福祉サービス運営適正化委員会事務局】事務局長 樋川芳夫 みんなのいいね 読者投稿コーナー  読者の皆様から、街や職場等で見つけた“ほっとするもの”の写真投稿を募集します。  お写真とともに、一言メッセージ(50字程度)をお寄せください。  採用された方には、ささやかですが、図書カードをお送りいたします。  投稿は①写真②一言メッセージとタイトル③氏名④住所⑤連絡先を記載して、以下の宛先までお送りください。皆様の投稿をお待ちしております。 【投稿先】 郵送の場合:〒221-0825 横浜市神奈川区反町3丁目17-2 神奈川県社会福祉センター7階 福祉タイムズ読者投稿係 〈囲み写真〉 空を見上げる鯉のぼり  今日は雲ひとつない晴れ渡った空。近所の公園に大きな鯉のぼりが上がっていました。春の風を待っているようでした。(MKさん・横浜市) 〈囲み写真終わり〉 P12 かながわほっと情報 ワンチームで地域住民のために! 相模原市民生委員児童委員協議会 会長 大貫君夫さん(相模原市)  住民の一員として地域を見守り、身近な相談相手として活動する民生委員・児童委員(以下、民生委員)は、地域福祉活動に欠かせない存在です。5月12日の「民生委員・児童委員の日」を前に、相模原市で民生委員として16年間活動されている大貫君夫さんにお話を伺いました。  大貫さんは、コンピュータ関連の専門学校を卒業後、システムエンジニアとして業務改善プログラムの開発を行ってきました。当時は深夜まで働く日々で、福祉との関わりは全くなかったそうです。  そんな中、定年を目の前にした59歳の時、近所の民生委員で大貫さんのご親戚でもある方から、民生委員になって欲しいと頼まれました。大貫さんにとってその方は〝兄貴分〟のような存在でもあったので、引き受けることにしたそうです。そして、引き受けた以上、少しでも地域に貢献しようと思い活動を開始しました。  民生委員のやりがいについて「頼まれたことを解決した時は嬉しいです。また民生委員がいるだけで心強い、頼りになると言われた時はやりがいを感じます」と語ってくれました。一方、昨今の地域の課題であるひきこもり、DV、貧困等の問題は、民生委員の立場で一歩を踏み込むのは難しいと、現場ならではの苦労を語ってくれました。  また、市民生委員児童委員協議会では、現在民生委員の定員に対して80名の欠員があります。そのため、次の3年後の改選に向けて、大貫さんは少しでも民生委員の認知度を上げるために、各地区の自治会やイベントに参加していきたいと意気込みを語ります。 〈写真〉 大貫さん活動風景 シニア体験イメージ講習会 〈写真終わり〉  また、大貫さんのモットーは、「できるときにできることを、明るく楽しく笑顔で」活動すること。民生委員が明るく笑顔で活動していれば、市民の方から興味を持ってもらえ、小さなことでも地域の声を聞くことができると言います。もう一つは、各地区、市民児協としてワンチームで活動することです。欠員がある地区に対しては、全員で助け合いながら住民のために活動を続けたいと言います。  地域のために活動を惜しまない大貫さん。誠意溢れる笑顔が印象的でした。(企画課) 〈コラム〉 5月12日民生委員・児童委員の日  民生委員制度は、第一次世界大戦末期、大正6(1917)年5月12日に防貧対策として岡山県で創設された済世顧問制度を源にする、由緒ある制度です。  全国民生委員児童委員連合会では、この制度が公布された5月12日を「民生委員・児童委員の日」と定めました。この機会に、民生委員・児童委員のことを知っていただく取り組みを進めていきます。 〈コラム終わり〉 「福祉タイムズ」は、赤い羽根共同募金の配分を受けて発行しています バックナンバーはHPから ご意見・ご感想をお待ちしています!→https://form.gle/74aewHkEfzQ9ybJQ8 【発行日】2023(令和5)年5月15日(毎月1回15日発行) 【編集発行人】新井隆 【発行所】社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 〒221-0825 横浜市神奈川区反町3丁目17-2 TEL 045-534-3866 FAX 045-312-6302 【印刷所】株式会社神奈川機関紙印刷所