テキストデータ作成に当たって  このデータは、『福祉タイムズ』 vol.834 2021年5月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。  二重山カッコは作成者注記です。 P1 福祉タイムズ ふくしTIMES 2021.5 vol.834 編集・発行 社会福祉法人 神奈川県社会福祉協議会 特集…P2 災害復旧の支援を取り巻く状況とこれからの本会の取り組み NEWS&TOPICS…P4 ACP(アドバンスケアプランニング)、今でしょう!(神奈川県医師会寄稿) 県社協のひろば…P10苦情解決ハンドブックをご活用ください 経営相談を通じて安定した事業運営をサポート →今月の表紙 みんなと協力し合って、よりよい活動へ―民生委員・児童委員活動強化週間(川崎市中原区民生委員児童委員協議会会長・大戸第2地区民生委員児童委員協議会会長 田邉静江さん)【詳しくは12面へ】撮影:菊地信夫 P2 特集 災害復旧の支援を取り巻く状況とこれからの本会の取り組み  近年、全国各地で大規模災害が発生しており、復旧にむけてその近隣地域の支援だけでは不十分な場合は、さまざまな機関・団体が、築き上げたネットワークを活かしながら、支援にあたるようになりました。  本会では、平成7年に発生した「阪神・淡路大震災」以降、いくつかの大規模災害の被災地に職員を派遣し、災害ボランティアセンターの運営支援等にあたってきました。このように、被災地への全国規模での支援が民間ベースで行われていることから、国ではさまざまな分野でガイドラインを策定し、また、本県でも取り組みが進められているところです。  そこで、本号では、国や県で進められている、さまざまな分野の連携による支援体制の整備に向けたうごき、本会がこれから取り組もうとしている災害時への備えについて紹介していきます。 多様な団体との連携により災害支援に取り組めるように  本県では、全国に先駆けて「神奈川県災害救援ボランティア支援センターの運営等に関する協定」を、平成25年3月に、県立かながわ県民活動サポートセンター、県共同募金会、(N)神奈川災害ボランティアネットワーク、そして本会の四者で締結し、平常時から官民一体の連絡会を定期的に開催してきました。  大規模災害の支援の場面においては、さまざまな関係団体による多様な関わりが必要ですが、分野ごとに組織が構成され運営されている現状が弊害となり、それぞれが持つ専門性を発揮しにくくなる、との指摘がありました。そのため、連絡会では、大規模災害時にいかにして四者間のネットワークを機能させていくかが課題となっていました。  この課題は全国的にも聞かれており、行政からは、防災関係部局、福祉関連部局、そして市民活動支援部局との連携強化が、また、民間からは、団体間の連絡調整をスムーズに行い、それぞれの専門性を最大限効果的に発揮できる体制等が求められました。そこで、内閣府では、平成30年4月に「防災における行政のNPO・ボランティア等との連携・協働ガイドブック~三者連携を目指して~」の発行の他、研修等を通じ、各都道府県で進展できるよう、取り組みを進めています。  本県でも、県内各地域において、多様な団体による連携が進むよう、横須賀・三浦地区で勉強会を開催しました。コロナ禍の影響によりオンラインでの開催でしたが、各地域の関係者同士が「顔の見える関係」となることを期待し行いました。令和3年度以降も、各ブロックの勉強会等の開催が計画されています。 ◇   ◇   ◇  昨年度、国が主催して「官民の多様な被災地支援主体間の連携促進のための中核(コーディネート)人材育成研修会が開催されました。この研修では、特に都道府県域での連携促進に期待が寄せられている他、「連携がスムーズに進むためには、関係者が思い思いに取り組みを進めるのではなく、その関係者をコーディネートする役割となっていく機能が必要ではないか」と問題提起されています。つまり、災害時に寄せられる被災者の困りごと(ニーズ)や、支援者側にできること(シーズ)、支援の課題などについて、NPO・ボランティア団体に加え、行政や社協を含むさまざまな支援者が情報を共有し、課題解決に向けて支援者間で調整する場が必要と言われています。この仕組みは全国の被災地で「情報共有会議」と呼ばれており、国も本県もすでに防災計画に位置付け、その整備を目指しています。  なお、「情報共有会議」を開催し、災害時の連携・協働を進めるためには、平常時から、地域内の多様な支援主体、行政、社協(災害ボランティアセンター)がつながっていることが重要で、こうした主体間の連携をコーディネートする役割が中間支援組織に期待されています。  本県においては、災害復興くらし応援・みんなのネットワークかながわ(準備会議)が、かながわボランタリー活動推進基金21の協働事業負担金を活用し、「広域大規模災害に備えた平常時からの行政、社協、NPO等の連携体制構築」に取り組みます。これは、令和3年度から5年度にかけて取り組む計画で、具体的には「三者連携情報共有会議の枠組みづくり」や「災害時連携を考えるフォーラムの開催」、「民間支援ネットワークづくり」を行うとしています。 P3 災害時の福祉支援体制の整備に向けて  本県では、関係機関・団体と協働し、大規模災害時における高齢者や障害者など特に配慮を要する者を支援するため、11の福祉関係団体等と県とで「かながわ災害福祉広域支援ネットワーク」を平成28年に設置し、災害時に備えた団体間の連携体制を構築するとともに、災害時に要配慮者支援を行う人材の育成等を進めてきました。  そのような中、厚生労働省は平成30年5月に「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」を発出。高齢者や障害者、子どものほか、傷病者等といった地域の災害時要配慮者が、避難所等において長期間の避難生活を余儀なくされ、必要な支援が行き届かない結果、生活機能の低下や要介護度の重度化などの二次被害が生じているケースがあることや、避難生活終了後に安定的な日常生活へと円滑に移行するために、その福祉ニーズを的確に把握するとともに、可能な限りそのニーズに対応し、生活機能の維持を支援していく体制の構築の必要性が示されました。  その支援体制として、各都道府県で災害時に一般避難所において、要配慮者の福祉ニーズに的確に対応する「災害派遣福祉チーム(DWAT)」の組成が示され、全国的に設置が進められています。  本県でも、ネットワーク構成団体との協議を重ね、令和2年度に神奈川DWATが設置されました。  チーム員登録の基本的な流れは、ネットワーク構成団体と県で基本協定を締結し、基本協定締結団体会員施設等のうち、神奈川DWATに協力いただける法人と県とで協定を締結します。協定を締結した法人からチーム員候補者を選出、DWAT登録研修を受講した方がチーム員として登録されます(職能団体は、団体から直接、チーム員候補者を県に提出)。DWAT設置初年度となる昨年度は、33名の方がチーム員として登録されました。 〈表〉 かながわ災害福祉広域支援ネットワーク 構成員→ →団体等名 福祉関係→一般社団法人 神奈川県介護支援専門員協会 →公益社団法人 神奈川県介護福祉士会 →一般社団法人 神奈川県高齢者福祉施設協議会 →社会福祉法人 神奈川県社会福祉協議会 →公益社団法人 神奈川県社会福祉士会 →神奈川県身体障害施設協会 →神奈川県知的障害施設団体連合会 →公益社団法人 神奈川県理学療法士会 →一般社団法人 神奈川県老人保健施設協会 →一般社団法人 相模原市高齢者福祉施設協議会 →公益社団法人 横浜市福祉事業経営者会 行政→神奈川県 〈表終わり〉  なお、県は、昨年度、基本協定の締結が完了しなかったネットワーク構成団体とも、引き続き協定の締結に向けた調整を進めるとともに、神奈川DWATの周知を図り、チーム員登録者を増やしていけるよう取り組みを進めることとしています。  一方で、今の構成団体には、子どもや保育関係団体が含まれておりません。今後、避難所における福祉ニーズを整理し、必要に応じて、県は関係団体のネットワークへの参画を促すことも検討しています。  なお、災害時にチーム員が活躍するには、チーム員が所属する法人、施設・事業所はもちろんのこと、市町村や地域の関係者等の理解が必要になりますので、多くの方に神奈川DWATについて知ってもらえるよう、理解促進も行っていきます。 本会のこれからの取り組み  本紙でもご案内しているとおり、今年夏に事務局の一部が神奈川県社会福祉センターに移転し、本会は、神奈川県社会福祉センターとかながわ県民センターに事務所を構えることになります。これに伴い、本会事務局職員の参集ルール等を確立させるとともに、新センターと県民センターの各部署との連絡手法の検討などを具体的に行うことが必要です。  また、それらの検討にあわせ、先の2つの動きを背景とした本会事務局の動き方を新たな活動推進計画(令和3年度から5年度)の間に整理し、有事の際に備えられるよう、検討を進める予定です。 (企画調整・情報提供担当) P4 NEWS&TOPICS ACP(アドバンスケアプランニング)、今でしょう!ー神奈川県医師会【寄稿】  ACPの考え方が登場してから15年以上になるが、それほど進展していないのは縁起の悪いことは避けたがるという日本人の国民性にもよるのでしょう。ようやく平成30年3月、厚生労働省から4回目のガイドライン「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセス」が発出されました。平成31年には同省が愛称を「人生会議」と定めましたが、その啓発ポスターがマスコミ、患者団体などから批判を浴び炎上したことも記憶に新しいです。ACPを語る時、忘れてはならないのがLW(リビングウィル)。LWとは、個人が医療に対する決定能力を喪失する事態に備え、将来の医療的治療に対する指示や要望を事前に表明するもの(財産管理は含まれない)です。それに似た用語に、AD(アドバンスディレクティブ)があります。医療的判断代理判断委任状とも称され、個人が医療に関する決定能力を一時的、又は永久に喪失した場合、本人のために決定を下す人を指名するもので、いつでも撤回は可能です。正式にはLWとADは異なりますが日本では同義語とされているので本稿ではLWで統一します。しかしLWには、倫理的な無理が存在したためACPが大きくクローズアップされています。 それぞれの現場で  医療現場において、慢性期医療(この場合、在宅医療にその役割を期待)では、ACPはとても重要なツールとなります。基本的には年齢だけを基準に治療を制限する必要はないと考えます。患者さんのADL(日常生活動作)、生き方、希望を客観的に考慮し、専門家として患者さんご家族と医療、看護、介護、リハビリ、栄養、ケアマネジャー等の多職種がそれぞれの立場から提案や判断を行います。この場合、医師の判断が絶対ではなく、あくまでもチームの一員として平等であることが重要です。 介護施設におけるACP  コミュニケーションを重視した「看取りの意思確認」は介護施設における最も重要なACPの一つで、言い換えれば、入居者がその施設で最期を迎えるのか、病院なのかという事で、適切な「看取りの意思確認書」を適切に作成することに尽きます。介護施設のもう一つの課題は、食べられなくなった時にどうするか。ここでもACPが大きな意味を持ちます。選択肢は以下の3つです。 ①経管栄養 経鼻胃管、胃ろう ②点滴 中心静脈栄養、抹消静脈点滴 ③何もせずそのまま見守る  これは読者の方々、自分だったら?自分の家族だったら?じっくり考えてみて下さい。介護施設では一般的にスタッフは「人の死」について「経験」や「意思決定」の知識不足、さらに慢性的に人手不足も重なりACPに取り組む機会も時間も圧倒的に少ないのが現実です。介護施設におけるACPへの取り組みの義務化なども検討の余地がありそうです。 神奈川県医師会の取り組み  神奈川県医師会では、県と協力して医療介護総合確保基金を活用し、平成27年から「在宅医療トレーニングセンター」を運営しています。そこでは以下に示す13職種(全職種を網羅)代表が参加して講演、グループワーク研修、大学病院(歯科大学も含む)や国公立病院に出前研修を行っています。  例えば、茅ヶ崎市立病院において若手勤務医・研修医を対象に在宅医療での救急搬送の場面(ACPそのもの)を想定して全委員参加によるロールプレイを行い、好評を得ています。 〈囲み〉 【多職種】医師、歯科、薬剤師、看護師、訪問看護師、セラピスト、介護福祉士、ヘルパー、ケアマネジャー、医療ソーシャルワーカー、栄養士、歯科衛生士、行政 〈囲み終わり〉 コロナ禍におけるACP  コロナ禍では新たな問題が露呈しています。コロナ陽性者は原則入院であった第三波の際には、病床ひっ迫状態となり、私たち医療者が「命の選別」の決断に迫られた時、コロナ陽性要介護高齢者・認知症者は、真っ先にその対象となる人達です。  ACPにより積極的な検査・治療は望まないと確認していても、コロナだけでは死にたくない、死なせたくないとの要望も聞こえてきます。 まとめ  国民性、宗教観などのさまざまな要因から、日本人の意識の中にACPの考え方を醸成させるにはまだ時間を要すると思われます。しかし、超高齢多死社会において、向き合わなければならないのも事実です。  「個々が自らの死生観を持ち、他者の死生観に理解を示すことが重要である」と考えます。 (介護保険担当理事 篠原裕希) P5 NEWS&TOPICS 生活支援相談員から見た東日本大震災からの10年ー「岩手県における生活支援相談員の活動と地域福祉」の紹介  本会の活動推進計画策定に関わっていただき、推進委員会の委員長である山下興一郎さん(淑徳大学准教授・全社協中央福祉学院教授)が山崎美貴子さん(東京ボランティアセンター・市民活動センター所長)、岩手県社協との編著で、中央法規出版から「岩手県における生活支援相談員の活動と地域福祉」を刊行されました。  平成23年3月に起こった東日本大震災から10年の節目に刊行された本書は、岩手県社協と被害に遭った沿岸部の市町村社協、内陸部の市町村社協に配置された生活支援相談員による、災害支援活動の記録となっています。  発災直後の混乱期にさかのぼり、時系列順に活動内容を紹介。支援ニーズや暮らしの変化によって区切りながら、相談員のその時の状況と支援内容がつづられています。また、被災地での活動や経験を基にしながら、そもそも生活支援相談員とは何か、どうして災害時に相談員の配置が必要なのか、その意義や活動の効果についても掲載されており、災害時のみでなく、平常時におけるアウトリーチや訪問活動と地域づくりの一体的な取り組みのヒントと成り得る事例やQ&A、養成研修も紹介されています。  発災時の災害ボランティアセンターの立ち上げや復興支援等の取り組みについて、社協のうごき、関係団体や地域との連携のこれからについても記録されている本書。10年の振り返りとして、また、これからへの備えとして、一読してみてはいかがでしょうか。 (企画調整・情報提供担当) 〈囲み〉 中央法規出版のホームページでは冒頭の試し読みが可能です。 URL:https://www.chuohoki.co.jp/products/welfare/8292/ 著者:山崎美貴子、山下興一郎、(福)岩手県社会福祉協議会=編著 出版:中央法規出版 価格:3,080円(税込) 〈囲み終わり〉 より充実した情報提供・発信を目指して~県民児協ホームページをリニューアルしました! 〈イラスト〉 県民児協キャラクター「みんぴょん」 〈イラスト終わり〉  神奈川県民生委員児童委員協議会では、平成22年度よりホームページを開設・運用してまいりましたが、インターネットの普及、スマートフォンでの閲覧への対応の必要性、さらに、コロナ禍での情報発信の重要性の増大などから、ホームページの内容を一新し、令和3年4月にリニューアルオープンしました。  民生委員・児童委員(以下、委員)等のための会員ページを設けて委員活動に役立つ情報を発信するだけでなく、地域の皆さまに委員活動をより深く知っていただけるデータや歴史、委員の1か月の活動の様子、相談できる内容や相談方法、委員からのメッセージなども掲載しています。 〈写真2点〉 新しくなったホームページ、ぜひご覧ください https://www.kmjk.jp/(URLは変更ありません) たくさんの情報を掲載しています!季刊の「民児協だより」もご覧いただけます 〈写真2点終わり〉  今後は、各市町村・地区の民生委員児童委員協議会からの情報のほか、活動の様子を紹介した「活動アルバム」を掲載するなど、より一層、充実した内容にしていく予定です。ぜひご覧いただき、地域住民に寄り添う委員のことを知って、身近に感じていただければ幸いです。 (神奈川県民生委員児童委員協議会) P6 事例等の情報提供として「地域共生社会のポータルサイト」開設される  厚生労働省は4月1日より「地域共生社会のポータルサイト」を公開しました。本サイトは、地域住民、さまざまな分野の関係団体や実践者、行政職員等を対象に、地域共生社会の実現に向けた取り組み事例や関連する制度施策の情報提供を行うことを目的としています。  「地域共生社会の実現に向けた取組の経緯」と題し、社会的な背景や課題、それに向けた制度・施策の動き等を解説するページや、全国の行政、関係団体や実践者による取り組み事例を紹介するコーナーなど、関連する情報が掲載されています。  また、サイト内には、地域共生社会の実現に向けた取り組みに関連して、法律や厚生労働省から発した通知の他、ガイドラインや研修資料も掲載されています。  例えば、令和3年4月に施行された改正社会福祉法の新事業「重層的支援体制整備事業」について、関係部局と円滑な連携を行っていけるよう、3月29日に厚生労働省から事務連絡として通知された「重層的支援体制整備事業関連制度等の連携について」の本通知と関連文書等が公開されています。  改正社会福祉法を始め、地域共生社会の実現に向けた取り組みはより一層重要になってきます。今後の活動等の参考に是非ご活用ください。 ◆ ◆ ◆ 「地域共生社会のポータルサイト」 URL:https://www.mhlw.go.jp/kyouseisyakaiportal/ (企画調整・情報提供担当) P7 福祉のうごき 3月26日~4月25日※新聞等掲載時点 ●コロナワクチン 知的・精神障害の方も優先  厚生労働省は3月18日に、新型コロナウイルスのワクチンを優先接種する基礎疾患について、その対象を重い精神疾患や知的障害のある人を加えると発表した。感染リスクや、感染した際に重症化や死亡リスクが高いことが海外の研究成果等から判明していることもあり、対象となった。  ワクチンは既に医療従事者への優先接種が進められており、高齢者への接種も順次開始され始めている。基礎疾患のある方に向けた接種はこの後とされている。  県は、現在、高齢者施設の入所者から順次実施するとしており、一般の高齢者への接種は5月以降になるのではないかと報じられている。 ●ヤングケアラー、中高生の20人に1人  厚生労働省は4月12日、「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」の全国調査の結果を明らかにした。ヤングケアラーの実態に関する全国的な調査は、今回が初とされている。 今回の調査の結果からは、大人の代わりに家事や介護といった家族の世話を担う子どもが、中学・高校生でおよそ20人に1人いることが判明している。調査では、親や祖父母の介護だけでなく幼いきょうだいの世話をしていると回答した人の割合が大きかったという。  学校生活や将来への影響が心配されているが、サポートの仕組みが整備できておらず、相談できぬまま孤立するケースがあると指摘されている。 ●自治会で発達障害児が就労体験  平塚市の宮松町自治会で地元団体と業務を分担する取り組みが行われている。このうち、回覧板業務について、発達障害がある子どもたちが協力しているという。3月26日の神奈川新聞がその取り組みについて取り上げた。  協力しているのは同市にある「ペガサス就職塾」。子どもたちの就労体験につながるとして、昨年8月から回覧板業務を委託したという。  自治会役員のなり手不足が課題となるなか、人材確保につながると、市は注目している。 ●タクシー業者と連携した避難支援  3月29日、開成町は町内の福祉タクシー業者と「要援護者の移送に関する協定」を締結した。この協定は、災害時に、高齢者や障害者等、ひとりで避難することが困難な人に対して、避難するための移動手段として福祉タクシーが活用できるようにするもの。協定をきっかけに、災害時ヘの備えとして、連携を深めていきたいとしている。町内では、災害時に自力での移動が困難になる方は約500人にのぼると想定されている。 ●企業や、NPOとの連携  コロナ禍で困っている人の支援へ  家具等で知られるイケア・ジャパンとひとり親支援の(N)しんぐるまざあず・ふぉーらむが連携し、コロナ禍で生活に困っているシングルマザーを支える取り組みを開始した。飲食店等の販売業で非正規職員として働く女性が多いことから、業種を越えた転職ができるよう、基礎的なIT研修を開催する予定。研修後はイケアの正社員雇用の面接を受けることもできるという。  このほか、コンビニのファミリーマートではフードドライブの活動を各地の社協やNPOとの連携で行っている等、コロナ禍で困っている人への支援の輪が広がっている。 P8 私のおすすめ ◎このコーナーでは、子育てや障害、認知症・介護当事者等の目線から、普段の暮らしに役立つ「おすすめ」なものを紹介します。 リモートで会いに行こう!~津久井やまゆり園利用者「お友達プロジェクト」~  感染防止のために、福祉施設への面会や訪問もままならず、家族や友人に「会いたい!」思いを抱えている人も多いと思います。  電話の声のつながりもよいですが、オンラインなら顔を見ながら話すこともできます。今回は、「津久井やまゆり園」の利用者の方たちと新しい「お友達」(大学生)をつなぐ活動である「お友達プロジェクト」のオンラインでの取り組みをご紹介します。 今月は→神奈川県自閉症協会(神奈川県自閉症児・者親の会連合会)がお伝えします!  1968年4月設立。横浜市・川崎市を除く県内11地区の自閉症児・者親の会による連合会です。行政施策の研究・提言、当事者・家族のためのミーティング運営、療育者等に向けた勉強会・セミナー運営等、自閉症児・者と家族の支援や、自閉症スペクトラムの理解を進めるための活動を各市町村及び県に向けて展開しています。 〈連絡先〉Mail:info_kas@kas-yamabiko.jpn.org URL:http://kas-yamabiko.jpn.org/ ◇コロナ禍でのお友達プロジェクト  権利擁護活動を行う(N)湘南ふくしネットワークオンブズマン(Sネット)では、「津久井やまゆり園」に入所している人(利用者)に対して、「意思決定支援」の取り組みが、障がいのあるご本人の人間関係を豊かにし、より充実した日々になると考え、お友達プロジェクトを2019年度より実施しています。  利用者さんや学生たちも活動に慣れ、バスハイク等を企画している矢先に新型コロナウイルスの感染拡大が起きました。一人でも感染者が出るとクラスターになりかねないと、施設側の判断で外部からの面会は禁止になり、せっかく軌道に乗ってきた活動も当面の間はできなくなりました。  「何か別のかたちを考えなければならない」との思いから、「リアルな訪問がダメならオンラインで」とLINEグループのビデオ通話機能を利用した「リモート訪問」を始めました。リモートに慣れている学生たちは利用者さん好みのBGMを用意したり、歌に合わせて手遊びを披露したりと小さなスマホの画面越しに楽しそうな笑顔がいくつも並ぶようになりました。 ◇つながりが、人を変える  仮のかたちで始めた「リモート訪問」ですが、意外にも利用者さんたちの評判が良く参加希望者が増え続けています。ボタンひとつで簡単につながることができるのも、なかなかよいものかもしれません。  家族でも支援者でもボランティアでもない誰かが「自分のために訪ねてくる」ことは、利用者さんに変化をもたらしました。学生たちとの時間を楽しみに待つようになり、好きな食べ物や好みの音楽等を嬉々として話すようになりました。  画面越しにパーティーさながら利用者さんと学生たちがはしゃぐ様子は微笑ましく、見ているこちらも笑みがこぼれます。人とのつながりが一人ひとりに変化を促すのだと、改めて感じました。  また、今年度からグループホームへ転居する利用者さんもいるため、個々のホームにiPadを預けてZoomでの訪問も始めました。活動の細分化が進み、利用者さんそれぞれによりフィットするものになるはずです。  利用者さんの意思決定支援会議に参加する学生も出始め、利用者さんの日常にも「お友達」の存在が少しずつ確立しているようです。  こうした活動がいつの日か全国に波及してほしいと願いつつ、感染が収束しない中でも私たちができることを模索しつづけたいと思います。 インフォメーション (N)湘南ふくしネットワークオンブズマン  障がい者、高齢者、児童の権利擁護と地域生活支援を目的として、オンブズマン活動・法人による成年後見人等の受任・茅ケ崎市からの委託事業「成年後見支援センター」等の事業を行い、ノーマライゼーション社会の実現に寄与することを目的とした活動を行っています。 所在地:〒253-0043茅ケ崎市元町5-22永井ビル3階 TEL  090-4937-4904(江崎) URL:http://www.npo-snet.com/ 〈囲み〉 ※お友達プロジェクトとは  コロナウイルス感染症の拡大前は、月に数回、1~2時間くらいの時間で、都内の大学生が小グループまたは単独で芹が谷園舎を訪問し、利用者さんと交流するのを、Sネットがサポートしてきました。学生と一緒に体育館で映画を見たり、ボール遊びをしたり、おしゃべりしたり、園庭を散歩したりして、利用者さんたちも彼らとの交流を心待ちにしてくださるようになりました。 〈囲み終わり〉 P9 あなたの職場  社会福祉施設等で働く福祉従事者の方のから、今の仕事のやりがい、職場で魅力的に感じること等を聞き、「働きやすさ」につながるポイントを見つけていこう、というコーナーです。 福祉・介護現場でICT化、テクノロジーの活用を  福祉・介護の現場では、さまざまな省力化の取り組みが行われています。例えば、相談の経過や利用者の様子を記録する作業は、福祉従事者として大切な業務であると同時に、時間がかかる大変な仕事だとみられることがあります。負担に感じる部分を少しでも減らせれば、業務のしやすさにつながると思われます。ICT等のテクノロジーを活用した仕事の仕方は、負担軽減につなげる方法のひとつとして注目されています。 ICT化で利用者情報も一元化して効率的に  ICTとは「情報通信技術」を指す言葉。電子データ化した情報を送受信したり、整理したりする技術です。企業では、資料を電子化するペーパーレス化や情報の一元化が図られていることを見聞きします。  これは福祉・介護の分野でも活用でき、日誌や利用者の個人記録を電子データで管理・一元化することで施設職員の事務負担を軽減することができます。電子データ化された個人記録は、利用者の支援等の分析に使用できますし、職員間で迅速に共有できるようになります。これにより、サービスの質の向上につながるという期待がもてます。 サービス提供の補助にも  業務を補助するものとしては「介護ロボット」等の機器の活用についても、普及が進められています。職員が行う移動介助や入浴支援に用いる機器、見守りシステム等が主に例に挙げられますが、これらの活用は、職員の身体的な負担を軽減し、働きやすい環境を生み出す可能性を秘めています。 感染対策、今の生活スタイルにあった環境に  昨今では人との接触や会話による新型コロナウイルスの飛沫感染防止策として、福祉・介護の分野では、利用者とその家族との面会をテレビ電話で行う等、ICTを活用した対策も聞かれています。センサーが搭載された非接触型の体温計や自動消毒の機器等を導入している施設が増えている等、今の生活スタイルにあった活用のできるシステムや機器は、特に注目されているところです。 導入が進む中で  さまざまな期待が高まる反面、導入にかかる経費、そのシステムや機器を職員が使いこなせるのか等の課題があります。こうした課題に対し、県での「介護ロボット・ICT導入支援事業」をはじめ、導入に向けた支援がこれまでにも進められてきていました。令和3年度の介護報酬改定では「科学的介護の推進」が盛り込まれ、今後もより積極的な導入が求められてきています。効果的に活用していくための工夫と併せて検討していく必要があると言えるでしょう。  次号からは、実際の導入例や効果的な活用にむけた工夫等を、導入や活用を進めている施設現場に伺っていきます。(企画調整・情報提供担当) P10 県社協のひろば 本会の経営支援関連事業を通じて安定した法人経営・施設運営をサポート  本会では、社会福祉法人等会員の方々が自法人・施設の「福祉サービスの質」や「法人経営の透明性」を高め、社会的な信頼の確保に向けた取り組みを支援することを目的に「法人・施設の経営・運営支援事業」を実施しています。  昨年度からは、社会福祉施設・法人の運営や経営に必要となる情報等を提供(福祉経営支援レポート)するとともに、日常的な問題や課題に関する相談(経営相談)に対応し、その課題解決に向けた支援として研修会(経営分析支援事業研修会)を開催しながら、一体的な支援が展開できるよう取り組んでいます。 福祉経営支援レポート  昨年10月から試行的に最新の福祉動向に関する情報等を提供していましたが、今年度からはメールによる情報配信に切り替えるとともに、情報の内容によっては、専門家からのワンポイントアドバイス等を盛り込みながら迅速な情報発信に向けて取り組みます。メールアドレス登録がお済みでない会員法人の方々は是非ご一報ください。 経営相談  人材の確保・育成・定着や働き方改革に伴う労務管理、充実残額の有効活用や事業継続計画など、社会福祉法人や社会福祉施設の経営や運営に関する相談に対応しています。必要に応じて、弁護士や社会保険労務士などの専門職等の方々からも助言等を得ることが可能となっています。本会ホームページの「相談申込フォーム」を活用のうえ、ご相談ください。 〈写真〉 経営相談QRコード 〈写真終わり〉 経営分析支援事業研修会  昨年8月に経営判断のひとつの指標である簡易経営分析シートを活用した研修会では、「事例や図表が分かりやすかった」「充実残額の対応が理解できた」などの声をいただき、一定の評価が得られました。  今年度は、保育所特有の収支構造や高いニーズ等を踏まえ、6月4日に保育分野に限定した研修会を実施することにしました。  6月29日には昨年同様、各分野共通の研修会を開催いたします。本会ホームページでのご案内を確認のうえ、是非ご参加ください。 (社会福祉施設・団体担当) 苦情解決ハンドブックをご活用ください  福祉サービス事業者には、利用者や家族からの苦情に対応するための苦情相談窓口を設置することが社会福祉法で定められています。  かながわ福祉サービス運営適正化委員会では、苦情対応のポイントをまとめた事業者向けマニュアル「苦情解決ハンドブック」を作成しました。  苦情対応は、経営上のリスク管理にとどまらず、利用者の権利擁護の支援であり、利用者と事業者の関係を築き育てるための手段ともいえます。また、苦情に丁寧に対応し解決策を検討するプロセスは、事業者の支援の質の向上にもつながります。  ハンドブックでは、苦情受付から解決までの流れや、苦情受付担当者と苦情解決責任者及び第三者委員それぞれの役割について解説するとともに、苦情対応事例等を掲載しています。本会ホームページよりダウンロードしてご活用ください。 URL:http://www.knsyk.jp/ (かながわ福祉サービス運営適正化委員会) P11 県社協のひろば 本会主催の催し 第56回関東ブロック老人福祉施設研究総会・第19回かながわ高齢者福祉研究大会合同大会  より多くの地域に関わる方々に高齢者福祉の魅力を発信し、高齢者福祉施設職員等による実践活動の研究発表や介護技術発表を関東ブロック老人福祉施設研究総会との合同で、オンラインにて開催します。  全120近くの研究発表・介護技術発表を配信予定です。 ◇日時=発表動画の配信期間:6月30日(水)~7月31日(土)  ◇費用=参加費として参加者1名あたり10,000円 ◇視聴方法=合同大会ウェブサイトにて開設予定の特設ページにて配信。参加者にはIDとパスワードを配布。 URL:http://www.kanagawafukushitaikai.jp ◇問い合わせ先=社会福祉施設・団体担当  TEL 045-311-1424 Mail:sisetu@knsyk.jp 寄附金品ありがとうございました 【交通遺児援護基金】(株)アトミクス、(株)エスホケン 【子ども福祉基金】(福)聖テレジア会鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院、脇隆志、(株)エスホケン 【ともしび基金】(福)日本医療伝道会総合病院衣笠病院、湘南モノレール(株)、藤沢養護学校、津久井養護学校、広瀬公子 (合計11件 171,564円) 【寄付物品】(公財)報知社会福祉事業団、神奈川トヨタ自動車(株) 【ライフサポート事業】 <寄附物品>(福)みなと舎、(N)セカンド・ハーベストジャパン (いずれも順不同、敬称略) 神奈川県社会福祉センター整備事業協賛ありがとうございました  (福)恩賜財団済生会支部神奈川県済生会、(N)神奈川県ホームヘルプ協会、(福)大原福祉会 理事長 萩原敬三、(福)大井町社会福祉協議会、(福)厚生館福祉会、鈴木和夫、佐野美智子、(福)大和清風会  (令和3年4月27日まで。いずれも順不同、敬称略) 〈囲み〉 訃報 阿部絢子氏  本会元会長の阿部絢子氏が去る令和3年3月3日にご逝去されました。行年100歳。氏は昭和28年に(福)阿部睦会会長に就任し、特に高齢者の介護と生活支援等の分野で活躍。また、平成10年度から15年度の間には本会会長を務めるなど、地域福祉の推進と発展にも尽力されました。 〈囲み終わり〉 P12 かながわほっと情報 コロナ禍でも「寄り添う」ことを大切に 中原区大戸第2地区民生委員児童委員協議会(川崎市中原区)  少子高齢化や核家族化の進行、近隣同士のつながりの希薄化が懸念されるなか、地域の身近な相談相手として、住民一人ひとりに寄り添い、支援が必要な人を関係機関につなげる「民生委員・児童委員(以下、委員)」。今回、コロナ禍においても知恵と工夫を図りながら活動を続ける中原区大戸第2地区民生委員児童委員協議会(以下、地区民児協)の皆さんにお話を伺いました。 〈写真2点〉 運営委員会(月1回開催)では、定例会で協議する内容について話し合います 取材に応じてくださった地区民児協の皆さん 〈写真2点終わり〉  武蔵新城駅を中心に10地区で構成されている地区民児協では、36名の委員が活動しています。地区民児協会長の田邉さんは「コロナの影響により、あいさつ運動や子育てサロン、研修会等さまざまな活動が制限され、不安やもどかしさを抱えていますが、決して一人で悩まず、委員や町会、関係機関のみんなで協力し合っています」と委員活動をするうえで大切にしていることを教えてくれました。  コロナ禍での相談件数は増加しており、模索しながらもできる範囲の活動を無理なく続けているそうです。最近は、訪問活動の際に、委員の名刺やPRカードと共にマスクとマスクケースを配布しています。相談者から「話す相手がいなくて寂しかった。聴いてくれてありがとう」という言葉をもらうと、活動の意義や住民とつながり続ける大切さを実感できると言います。こうした活動を通して、委員活動は「地域のためでもあり、自分のためでもあります」と柔和な表情で話す田邉さんは委員になり20年目になります。「新任の頃は不安でいっぱい。でも、委員同士悩みを共有し、長く続けてみると地域の方との信頼関係もでき、自分自身が学ぶことがたくさんあります」と楽しさややりがいを教えてくれました。取材中も委員同士の活発なコミュニケーションや情報交換が見られ、日頃から地域の課題を共有し、アイデアを出し合い、よい関係をつくりながら活動されている様子を感じることができました。  民生委員制度創設から100年以上経った今もなお、住民一人ひとりに「寄り添う」という創設時の想いを大切に活動を続ける皆さん。「目と耳を大きく開いて地域の情報をキャッチし、気軽に相談できる存在であるとPRしていきたい」と今後の意気込みを熱く語ってくださいました。 (生活支援担当) 〈コラム〉  民生委員制度の基となる「済世顧問制度」に関する規定が、大正6年5月12日に交付されたことから、この日を「民生委員・児童委員の日」としています。  また、この日からの1週間(5月12日~18日)を「活動強化週間」と定め、民生委員・児童委員制度やその役割を積極的にPRする期間としています。 〈コラム終わり〉 〈広告〉 本紙の掲載広告を募集しています!  本県の福祉機関・団体等の活動や社会福祉の動向をタイムリーに発信し、 幅広い福祉実践者を読者層とする「福祉タイムズ」を皆さまの広報活動にぜひお役立てください! <発行部数>毎月16,500部(令和3年度発行予定数) <配布先>社会福祉法人・福祉施設、地域包括支援センター、相談支援事業者、民生委員児童委員、地区センター、行政福祉関係部署、福祉系学校等約4,000カ所 <掲載価格> カラー30,000円、白黒8,000円~21,000円※一回あたり、税抜 【問い合わせ先】企画調整・情報提供担当 TEL 045-311-1423 FAX 045-312-6302 〈広告終わり〉 「福祉タイムズ」は、赤い羽根共同募金の配分を受けて発行しています ご意見・ご感想をお待ちしています! バックナンバーはHPから 【発行日】2021(令和3)年5月15日(毎月1回15日発行) 【編集発行人】新井隆 【発行所】社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 〒221-0844 横浜市神奈川区沢渡4番地の2 TEL 045-311-1423 FAX 045-312-6302 Mail:kikaku@knsyk.jp 【印刷所】株式会社神奈川機関紙印刷所