テキストデータ作成に当たって このデータは、『福祉タイムズ』vol.8392021年10月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。 二重山カッコは作成者注記です。 P1 福祉タイムズふくしTIMES 2021.10vol.839 編集・発行社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 特集…P2 コロナ禍における市町村社協の取り組み コロナに負けない!かながわの社協活動集から NEWS&TOPICS…P4 つながりをたやさない社会づくり-「赤い羽根共同募金」にご協力お願いします! 外国につながる子どもたちを地域の中で支える -つづきMYプラザ(都筑多文化・青少年交流プラザ)の取り組み 県社協のひろば…P10 夢ある「地域共生社会」を目指して-第56回関東ブロック老人福祉施設研究総会・第19回かながわ高齢者福祉研究大会合同大会開催 →今月の表紙 「分身」を使った新しい働き方 caféツムギstation at Yokohama Kannaiで働く(左から)鏑木さん、ゆーちゃん、OriHime、髙橋さん【詳しくは12面へ】撮影:菊地信夫 P2 特集 コロナ禍における市町村社協の取り組み コロナに負けない!かながわの社協活動集から  新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響により、私たちの生活は一変し、生活困窮世帯の増加や孤立の問題など、さまざまな生活課題が顕在化してきました。社会福祉協議会(以下、社協)は、住民ニーズを原点に、地域の住民や関係者と協働で福祉のまちづくりをすすめる組織であり、コロナ禍においても、この特性を生かし、各地域でさまざまな実践が展開されました。その中から、代表的な事例をご紹介します。 コロナ禍だからこその社協の実践を一冊に  コロナ禍での生活困窮や孤立の拡大といった問題が顕在化する中、社協の地域福祉活動においても、当初は活動の自粛や延期等が見られましたが、次第にこの状況下だからこそ社協がやるべきことが見えてきました。  今回、こうした各市町村社協の実践を集め、社協の活動をより多くの人に知ってほしい、社協の活動を多くの人に届けたいと考え、「コロナに負けない!かながわの社協活動集」を作成しました。掲載事例は政令市を含む33市町村社協に募集をかけ、その中から49の活動を紹介しています。中には、車いす体験講座ができない代わりに、地元企業などの協力を得て、車いす利用者の観光を町の人たちが手助けするというドラマ仕立ての動画にし、ユーチューブにアップしたというユニークな事例もあります。  活動内容として最も多かったのは「食料支援」ですが、農家や地元の商店の協力を得て食材を集めたり、ボランティアや地区社協関係者、民生委員児童委員などと一緒にお弁当を配付するなど、展開方法にはそれぞれの地域の特性や工夫が見られます。また、社協から働きかけての協働や、他機関等からの相談を受けて協働するなど、きっかけもさまざまです。今回はこれらの実践から、生活困窮者への食料支援の取り組みと、地域活動への支援の取り組みをご紹介します。 〈グラフ〉 掲載事例のキーワード別内訳 〈グラフ終わり〉 食材配付にあわせて生活課題の把握と支援へ  藤沢市社協では、行政と連携して、市内の小中学校55校から、ひとり親や病気で働けない家庭など「食の支援」が必要な子ども約570人420世帯へ、お米やレトルト食品を配付する食料支援を行いました。  「ただ食材を届けるだけでは…」と職員が考案したのが、「かんたん!アレンジメニュー集」というチラシです。配付した食材と各家庭にあるものを使用して簡単に料理できるメニュー紹介と、相談窓口として社協の連絡先を掲載しています。ここには、コロナ禍においても親子が一緒にコミュニケーションを取りながら料理を作ったり、子どもが自分で作ったりできるように、という社協職員の思いも詰まっています。  また、配付にあたっては社協のコミュニティソーシャルワーカーが中心となって各家庭を訪問。玄関先で手渡しすることを基本とし、困りごとはないか聞いたり、それとなく様子を把握することに努めました。その場で困りごとが聞けなくても、後日、学校や本人から社協に連絡・相談があり、支援につながったケースも実際にありました。  食料支援という取り組みを通して潜在的なニーズを拾い上げ、関係機関と協働しながら支援につなげていく、社協らしい取り組みと言えます。 〈写真〉 職員作成「かんたん!アレンジメニュー集」 〈写真終わり〉 P3 〈写真〉 画面越しでも久々の対面に笑顔が浮かびます。 〈写真終わり〉 地域活動への支援~つながりを途絶えさせないために~  寒川町社協では、毎年夏に開催している「ボランティア体験会」を昨年は中止せざるを得なくなりましたが、ボランティア活動を広める、参加するきっかけづくりを止めないためにできることは何かを考え、グループの活動の様子を動画で撮影・編集し、町社協のホームページで紹介しました。  また、地域で活動する人たち同士の、顔の見える関係づくりやつながづくりを止めないために、例年は対面形式で開催していた「地域福祉フォーラム」を、Zoomを用いて開催し、地域活動に関する情報交換を画面上でも活発に交わすことができました。  オンラインや動画などの活用で、集合しなくても自宅から顔を見ながら話せる点に利便性を感じるとともに、やはり会場に集まって話すことで共有できる熱量や雰囲気はかけがえのないものという実感もありました。場面や内容に応じてオンラインとリアルを使い分け、これからも地域活動が途切れることのないように支援していきたいと考えています。  一方、逗子市社協の事例は、コロナ禍におけるサロン再開のためのマニュアル、ならびに各地区の工夫を集めた冊子の取り組みです。  マニュアルは、活動を自粛していた地域のサロンスタッフから活動再開における不安や不明点が多くあげられたのがきっかけで、作成にあたってはスタッフの意見を丁寧に聞くと同時に、行政や地域包括支援センターと連携し、専門職の視点も組み込みました。これに加え、各サロンの工夫している取り組みを取材して、冊子にまとめて配付しました。 〈写真〉 各サロンの工夫がつまった「コロナ禍のサロン活動~つながる方法~」 〈写真終わり〉  市社協ではこれまでも定期的にサロン訪問や状況確認のため、連絡をとりあっており、コロナ禍による影響でサロンを休止し、担い手のモチベーションの低下や活動自粛をせざるを得ない団体の状況を把握していました。こうした状況を見て、サロン同士での情報交換や、他地区の取り組みを参考に、それぞれの活動が活性化することを願って作成したのがこの冊子です。地域住民の孤立を防ぐための活動を途絶えさせないこと、という視点のほかに、こうした活動を行う担い手の人たちの思いに寄り添う取り組みを、市社協は大切にしています。 地域の生活課題を、地域の力で解決につなげていくために  社協はもともと、住民の福祉ニーズをもとに、地域のさまざまな関係者と連携・協働して活動を行う組織です。その特性がコロナ禍においてあらためてよく見えてきたのではないかと考えています。  一人ひとりの住民が、住み慣れた地域で安心して生活していくためには、協働のネットワークは必要不可欠です。社協には、そのためのさまざまな活動の担い手の協働の場=プラットフォームの機能があります。この活動集を通して、社協の特性を知っていただき、社協がすすめる地域福祉活動に、ぜひ多くの住民、地域の関係者の方々の参加と協働をお願いいたします。 (地域課) 〈写真〉 コロナ禍における新たな社協・地域福祉事業 コロナに負けない!かながわの社協活動集 〈写真終わり〉 本活動集は各市区町村社協に配付します。 P4 NEWS&TOPICS つながりをたやさない社会づくり-「赤い羽根共同募金」にご協力をお願いします!  今年も10月1日から全国一斉に「赤い羽根・共同募金運動」が始まります。  昭和22年、「国民たすけあい運動」として始まった共同募金運動は、県内の地域福祉活動の一環として、コロナ禍での緊急支援事業を始め、近年多発する大規模災害時の被災者支援活動など、その時々の社会情勢に応じた緊急支援事業を展開しています。  また、県共同募金会では、企業や社会福祉協議会、NPO等と連携して、コロナ禍で生活に困窮されている方々や困りごとを抱える家庭の子どもたちとその保護者への緊急支援事業等を、令和2年3月から継続的に展開しています。  新型コロナウイルス感染の収束が見通せない中、コロナ禍で生活支援を必要とされる方々への継続的な生活支援事業を展開していくとともに、県内の福祉施設等で集団生活をしている子どもたちや障がい者、高齢者への地域福祉を推進していくために、県民皆さまからのご理解をいただきながら運動を展開してまいります。 「つながりをたやさない」コロナでの緊急支援活動  コロナ感染対策への対応が長期化し、生活に困窮されている方、居場所を失い孤立している方、生活や教育環境の変化を余儀なくされている子どもたち等、たくさんの方々がさまざまな形での支援を必要としています。  共同募金会では、昨年に引き続き「つながりをたやさない社会づくり」を全国共通テーマに掲げて、コロナ感染の早期収束を願い、次のとおり緊急支援事業に取り組んでまいります。 ●「赤い羽根 新型コロナ感染下の福祉活動応援全国キャンペーン」の展開! ●「食」を中心とした物資による緊急支援事業の展開! ●児童養護施設や母子生活支援施設等への生活支援事業の展開! ●福祉医療病院等で医療に従事されている方々を応援! 企業との協働の推進  企業がCSR活動の一環として共同募金との協働拡大を進める中で、各企業に対して共同募金仕様自動販売機の設置や商品による寄付、寄付金付き商品の開発などの企画・提案を続けていきます。  また、多くの県民が利用する鉄道各社との協働推進を図り、地元意識を喚起した各沿線の地域福祉の向上に努めます。全国に先駆けて始まった鉄道会社との協働事業により、今年度もコラボ缶バッジを製作しました。 〈写真2点〉 江ノ電&湘南モノレール 相模鉄道(株)「そうにゃん」 〈写真2点終わり〉 共同募金PR大使に〝ココロ〟が就任!  令和3年度の共同募金PR大使に、野毛山動物園(横浜市西区)のグレビーシマウマ「ココロ」が就任することになりました。同園との協働事業は平成24年度から始まり、今回で10代目の大使となります。同園では、10月に大使就任式を、来年3月に共同募金実施報告会の開催を予定しています。 〈イラスト〉 令和3年度動物シリーズバッジ 〈イラスト終わり〉 県内プロスポーツチームとの協働  県共同募金会では、平成20年度から県内プロスポーツチームとの協働を開始しました。サッカーJリーグの横浜F・マリノス、川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、プロ野球の横浜DeNAベイスターズ、女子サッカーのノジマステラ神奈川相模原が協働パートナーとして赤い羽根募金を応援しています。各チームの公式戦会場では、赤い羽根とコラボグッズ(ピンバッジ等)を使用したイベント募金を実施します。 〈写真3点〉 各スポーツチームとのコラボバッジ(①横浜F・マリノス②川崎フロンターレ③湘南ベルマーレ 〈写真3点終わり〉  令和3年度共同募金もコロナ過での運動実施となりますが、引き続きのご理解とご支援をお願いいたします。 (神奈川県共同募金会) P5 NEWS&TOPICS 外国につながる子どもたちを地域の中で支える-つづきMYプラザ(都筑多文化・青少年交流プラザ)の取り組み  県内の公立小中学校には、外国籍の児童・生徒が約9200名在籍しています(令和2年度県統計資料)。平成29年度と比較すると25%ほどの増加となり、外国につながる子どもたちへの支援が必要となっています。  支援団体の一つである「つづきMYプラザ(以下、MYプラザ)」(横浜市都筑区)は、国際交流や外国につながる住民の支援と青少年の居場所、異なる2つの役割を併せ持つという特徴があります。 〈写真〉 館長の林田さん。外国生活では、東西ドイツの統合なども経験。違うものが融合する体験が仕事のベースになっている、と語る 〈写真終わり〉 外国につながる子どもの課題  外国につながる住民への支援として、「多言語による生活相談・情報提供」「日本語教室・学習補習教室」「国際理解・交流事業」を実施。子どもたちには、学習補習を中心に支援し、学校生活や進路などさまざまな相談にも対応しています。  MYプラザ館長の林田育美さんは、「外国につながる子どもたちのほとんどが言葉の壁にぶつかります。挨拶など日常会話ができても、会話の意味が理解できているとは限りません」と話します。日常会話ができることと理解できることは別で、理解力は学習を通じて培われるもの。そして国語や算数などの教科学習には、学習言語の習得も必要となります。  また、母語が学習途上の子どもは、母語も日本語も、どちらも十分なレベルに達していない「ダブルリミテッド」と呼ばれる状況になりがちです。家庭では母語で、学校では日本語で会話することが多い中、どちらの言語でも自分の思いを伝えられないことがありえます。しかし、自分の状況をほかの子と比べられないので、本人にとっては普通のことであり、その認識のなさも課題の一つと言えます。 〈写真〉 教職員向けリーフレットは、学校と連携し作成(ホームページよりダウンロード可) 〈写真終わり〉 MYプラザの支援  子どもたちは特別な子と思われたくないので、日常会話ができる子ほど、困っていることを隠します。学習補習教室では、「ここでは『わからない』と言っていいんだよ」と伝え、子どもが気持ちを話し出すときは、職員が丁寧に聞き取ります。関わりの中で家族とも信頼関係を築き、それが子どもの支援につながっていきます。  高校進学は子どもの人生を左右します。MYプラザでは、高校卒業後のことも考えながら中学生を支援しています。高校が開催する学校説明会への同行や、子どもと保護者、担任、通訳も交えた面談などを行い、子どもや親が支えられていることを感じてもらえるよう、伴走型の支援を行っています。そうして高校に入学し、充実した毎日を送っている子どもたちが多くいます。  「子どもたちが母国と日本との間でアイデンティティに悩むことや、さまざまなつらい状況にあるとMYプラザの職員・スタッフが知っていること、私たちが裏切らないことを子どもたちはわかっています。安心できると力を出して羽ばたいていくのです。子どもが思いを話せる大人がいること、そういう場があること、それが地域の居場所としての私たちの役割だと思っています」と林田さんは熱く語ります。 外国につながる住民の支援と青少年の地域活動拠点の2つを通して  2つの役割について、MYプラザ職員・スタッフは視野を広げ、関係機関とのつながりを広げて取り組んできました。青少年の地域活動拠点として実施する「中高生の夏休みボランティア体験」は、区社協や青少年指導員、地域のボランティア団体と協働しています。そこに学習補習教室の中学生が参加することで、地域の人から町で声をかけられる関係が生まれるなど、外国につながる子どもたちへの支援にもなっています。  外国につながる子どもを含めた、地域の子どもたちを支えるMYプラザの取り組み。子どもに関心を寄せる人たちが今後も地域とのつながりの中で、子どもたちを支えていきます。(企画課) P6 NEWS&TOPICS 利便性に期待して 障害者手帳にカード形式が導入  県では10月より、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳のカード形式を導入しました。  紙形式の手帳では、長年の所持で紙が擦り切れたり、水に濡れてしまったりすることがあり、耐久性に優れるプラスチックのカード形式が導入できるよう、関係省令の改正が施行となっていました。  カードは運転免許証等と同じ大きさ。他のカード類と区別がつくよう、上側に切り込みで印がつけられています。受けられるサービス等については紙形式と変わりません。  導入後は、各種手帳の申請をする際に、カード形式か紙形式かを選ぶことができるようになります。また、既に手帳を取得している場合でも、カード形式の手帳へ切り替えることが可能とのことです。  申請先はお住まいの市区町村の窓口です。なお、横浜市、川崎市、相模原市では3種類の手帳を、横須賀市では身体障害者手帳を、それぞれの市で交付を行っており、県交付の手帳とは取り扱いは別となっています。そのため、カード形式の取り扱いや変更への手続きについては、それぞれの市で確認するよう呼びかけられています。  カード形式の導入は、持ち運びや取り出しやすさといった利便性を期待してのものとなっています。しかし、手帳の活用方法や保管、持ち運びの仕方は、持つ人によってそれぞれです。カード形式への切り替えは義務ではないことからも、その利便性の有無は手帳を持つ人本人に委ねられそうです。 〈囲み〉 ◆カードの見本や各市町村の問い合わせ先等、詳細な情報は、県のホームページで公開されています。 神奈川県 障害者手帳で検索 URL: https://www.pref.kanagawa.jp/docs/yv4/20210624tetyou.html 〈囲み終わり〉 (企画課) P7 福祉のうごき 8月26日~9月25日※新聞等掲載時点 ●川崎市 障害者相談支援センターを再編 人員も増強  障害者やその家族からの相談体制を充実させるため、川崎市は10月から障害者相談支援センターを再編し、人員も増強する。地域相談センターを2ヶ所に増設。基幹相談支援センターは各区1ケ所だったが、地域別に3ヶ所体制に再編。職員数は10人増やし87人体制にする。  背景には、相談の大幅な増加がある。利用者は、 平成25年度は1,738人だったが、平成31年度には約9割増の3,238人になっていた。相談体制を強化して、より細やかに相談を受けていく方針。 ●障害者の65歳問題 負担軽減策の利用低調  65歳を機に障害福祉サービスから介護保険サービスの利用に移った人の自己負担を軽減する制度の利用が低調であることが、厚労省の調査で初めて分った。  この制度は、65歳を機に介護保険に移ることで自己負担が増える「65歳問題」への対策として、低所得者に「新高額障害福祉サービス等給付費」を支給するもの。調査では市区町村が事務手続きに煩雑さを感じていること、ホームページなどで広く周知している自治体が1割にとどまることが判明した。 ●大和市 認知症になっても安心して住み続けられる街づくりを推進  大和市は、認知症の人が増えている状況を踏まえ、認知症施策の総合的な推進を図る「市認知症1万人時代条例」を制定する。  市では、平成29年に「はいかい高齢者個人賠償責任保険事業」を全国で初めて導入。令和2年1月には「認知症灯台」と命名した総合相談窓口も開設した。  市内の認知症の人は今年4月で推計1万160人となり、推計より1万人を超えるのが早まった。今回の条例制定で施策をさらに進め、市全体が認知症とかかわり、希望と尊厳のある豊かな地域社会をめざすとしている。 ●コロナ禍の悩み女性向け相談室 県が鎌倉市大船に開設  新型コロナウイルスの影響で収入の減少や、外出自粛に伴う社会とのつながりの希薄化など、女性が抱える不安や生活面での課題を支援しようと、県は鎌倉市内に女性向けの相談窓口を開設した。  相談は無料で、原則県内在住の女性が対象。場所は鎌倉市大船のインクルージョンネットかながわ内。平日午前8時半~午後5時15分に電話やメール、面接で受け付ける。面接は事前予約制。問合先は ☎0467-46-2110。 ●障害児手当の不支給が大幅増  障害児のいる家庭に支給される「特別児童扶養手当」で、自治体に申請しても「障害が基準より軽い」として却下される件数が、平成31年までの過去10年間で3倍近く増えていたことが分かった。申請の6割を却下している自治体もあり、判定医の審査が厳しくなっている可能性もある。申請の却下とは別に、受給後の更新時の審査で打ち切られるケースも増加傾向にある。  発達障害の判定が厳しいことが理由として挙げられているが、国や自治体は「はっきりした理由は不明」という。障害者団体からは、基準の明確化や審査方法の見直しを求める声が上がっている。 ●政府「孤独・孤立」対策道半ば 半年経つも対象者・具体策見えず  世界で2例目として海外メディアからも注目された、「孤独・孤立」問題を専門に扱う担当相の新設から半年が過ぎた。しかし、誰を対象に何に取り組むのか、いまだ政策の中身は見えていない。  政府は年内に重点計画作りに向けて、現場で支援にあたるNPOと意見交換を行っており、さらに無作為に2万人を対象にした孤独・孤立の実態調査を始めるという。 P8 私のおすすめ ◎このコーナーでは、子育てや障害、認知症・介護当事者等の目線から、普段の暮らしに役立つ「おすすめ」なものを紹介します。 音楽を通して人との関わりを楽しむ~「NPO法人おおきな木」  「おおきな木」は、海老名市在住の障がいのある子どものお母さんたちが立ち上げたNPO法人です。市内にあるわかば会館で週末を中心に活動を行っています。  法人の立ち上げから今年で17年になりますが、小さい時から音楽療法に参加していたお子さんも成人になり、今では学齢期の方から成人の方まで幅広く参加されています。指導してくださるのは、音楽大学出身の先生方。心と身体が癒され、人と関わる楽しみを実感できる空間を作ってくださいます。 今月は→神奈川県自閉症協会(神奈川県自閉症児・者親の会連合会)がお伝えします!  1968年設立。横浜市・川崎市を除く県内11地区の自閉症児・者親の会による連合会です。行政施策の研究・提言、当事者・家族のためのミーティング運営、療育者等に向けた勉強会・セミナー運営等、自閉症児・者と家族の支援や、自閉症スペクトラムの理解を進めるための活動を各市町村及び県に向けて展開しています。 〈連絡先〉Mail:info-kas@kas-yamabiko.jpn.org URL:http://kas-yamabiko.jpn.org/  音楽療法とは、「音楽のもつ生理的・心理的・社会的働きを用いて、心身の障がいの回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること」と定義されています。おおきな木の音楽療法では、心身の発達の支援を目的にしながら、それぞれの子どもたちの「今、その時」を大切にし、人と共にあることを嬉しいと感じられる場の提供を目指しています。  初めてのセッションでは警戒してずっと壁に張り付いていた子が、流れるピアノの音や目の前の楽器に興味をひかれて音を出す、一人で自由気ままに鳴らしているうちに一緒に演奏してくれる存在を意識し、音楽を通して交流を始め、ついにはアンサンブルを奏でることができるようになる、そんな姿をセラピストの先生方は長年見守ってきてくださっています。個々の状況に合わせて課題を設定したセッションを実施していますが、時には本人の話をじっくり聞くことに時間を費やすこともあります。学校を卒業し、社会人となってからも、家庭と職場・通所以外に居場所があり、変わらない関係があるということは、とても貴重なことだと思います。  平成29年からは、長年利用しているわかば会館のロビーで、一般の方も観覧できるロビーコンサートの開催も始めました。利用者自らが司会進行をし、自分自身を表現し、達成感を得ることができる場となっています。  また、本年度からは、新たにドラムサークル事業も開始しました。ドラムサークルとは、参加者が輪になって、即興的につくりあげる打楽器のアンサンブルです。老若男女問わず、障がいがあってもなくても、音楽の経験があってもなくても、誰でも気軽に参加できる活動です。音楽療法は基本的にクローズドの空間で、同じメンバーが継続的に集うことにより音楽療法士たちと子どもたちの安心した関係性の中で実施されますが、ドラムサークルは一期一会の活動で、その場に集った人が全員対等な関係となり、横のつながりを重視します。ファシリテーターというガイド役はいますが、参加者同士の音を介した交流が目的となります。  長年、音楽療法を実施してきて、利用者の多くが社会に出るようになった今、地域とのつながりを深めるのも重要だと感じるようになりました。障がいのある人と地域の人が一緒に参加して楽しめるドラムサークルを広めることにより、地域の方に肯定的な障がい者理解をしていただき、共に住みやすい環境を築いていけたらと考えています。  芸術の秋。音を通じた交流に参加してみませんか? P9 あなたの職場  社会福祉施設等で働く福祉従事者から、今の仕事のやりがい、実際の業務のしやすさや職場で魅力的に感じること等を聞き、「働きやすさ」につながるポイントを発見していくコーナーです。 「働きたい」気持ちと文化・生活のバックボーンを大事に (福)青丘社 生活サポートネットワークほっとラインでの取り組み  本紙ではこれまで、社会福祉施設において働きやすい職場を整える方法の一つとして、ICTを活用した働き方を紹介してきました。介護ロボットと業務を分担することで、職員が利用者と向き合う時間を作ることができる等、福祉サービスの質の向上にもつながる様子がうかがえています。  一方で、取材を通して、職員の「働きやすさ」につなげるには、テクノロジーで人手を増やしたりするだけでなく、休暇やシフトの調整、資格取得の支援等、職員それぞれの困りごとや要望に向き合い、労務面の整備も必要だとの声も聞かれてきています。 今回は、職場環境の改善への取り組みについて、現場の声を聞いてみました。 職員にとっての「難しい」を支援する  お話をうかがったのは、(福)青丘社 生活サポートネットワークほっとライン(以下、ほっとライン)の李契順さんと姜玲玉さんです。ほっとラインは、障害者・高齢者の介護支援、生活援助事業を行っている施設。施設のある地域には外国籍の住民が多いことから、利用者だけでなく施設で働く職員にも、さまざまな国籍・文化を背景にもつ人たちがいることが特徴です。その人たちが長く働いていけるよう、ほっとラインではさまざまな取り組みを行ってきていました。  「特に、日本語の読み書きに自信がなく、仕事が続かないケースが多くあります。長く日本に住んでいて、会話はできても、記録をとったり資格をとったりするのに、日本語を読み書きすることが難しいんです」と李さんは言います。研修会等には通訳や代筆のできるスタッフに同行してもらったり、資料にはやさしい日本語で作成したり、記録を書いてもらう時にはローマ字を使う等、職員本人が理解してやり取りできるよう、支援してきました。 人に紹介できる「相談しやすい」職場として  李さんは、ほっとラインの職場をひとことで「休みをとりやすい職場」と答えてくれました。体調不良や介護、育児といった職員の事情に耳を傾け、シフトを調整し、無理せず働けるようにしていると言います。休みだけでなく、小さなお子さんのいる職員には同じ法人内の保育所や一時保育のサービスを紹介するなど、本人の働きたい気持ちと家庭の事情に、真摯に向き合っていました。姜さんは「職員本人と相談して環境改善に取り組んだことで、長期にわたって勤務している人や、外国籍の知り合いにこの職場を紹介している人もいるので、働きやすいと感じてもらえていると思います」と話します。  「職員本人の働きたいという気持ちと、自らが持つ文化や生活といったバックボーンを大切にすることで、本人の働く意欲につながっていくと思っています。そういうところを配慮できるようにしていきたい」と姜さん。アットホームな雰囲気の職場を目指し、試行錯誤を続けています。  (企画課) P10 県社協のひろば 夢ある「地域共生社会」を目指して-第56回関東ブロック老人福祉施設研究総会・第19回かながわ高齢者福祉研究大会合同大会開催  かながわ高齢者福祉研究大会は、高齢者福祉に携わる方々が実践を共に学び合い、県内の高齢者福祉の最前線を発信することを目的として、本会老人福祉施設協議会会員施設の主体的な参加により開催しています。  第19回目となる今大会は、関東ブロック老人福祉施設研究総会との合同大会として、6月30日から7月31日までオンラインで開催しました。  発表者には自身で動画作成に取り組んでいただき、関ブロ大会の新型コロナ対応に関する特別分科会6題、研究発表36題、かながわ大会の研究発表58題、介護技術発表7題を含め、百題以上の動画を配信しました。 〈写真〉 7月1日付神奈川新聞掲載記事他、福祉新聞(7/12)にも記事を掲載いただいた 〈写真終わり〉  県外約600名・県内約950名の総勢1500名を超える参加があり、「コロナ禍でも研修に参加できて嬉しい」「都合に合わせて関心のあるものを全て視聴出来てよい」など好評をいただいたほか、県内の介護福祉士養成校では授業等に有効活用いただくなど、新たな情報発信・情報共有のあり方についても、学びのある大会となりました。  今大会で得た経験と成果を基に、会員施設を中心に関係機関・団体と連携し、高齢分野における現場の実践がより充実されるよう、取り組んでまいります。 (福祉サービス推進課) 〈写真2点〉 配信された研究発表動画(上、弥生苑)と介護技術発表動画(下、寒川ホーム) 〈写真2点終わり〉 〈表〉 第19回かながわ高齢者福祉研究大会研究発表優秀賞 受賞施設・演題一覧 (研究発表23題※発表順) 演題名→法人・施設名 ご入居者・職員 快適な入浴で WIN-WIN!~prevent back pain~→特別養護老人ホーム かわいの家 EPA 介護福祉士候補生の受け入れ→よつば苑 知っていますか?ショートステイの利用目的利用者情報を把握することでケアが変わる→スプリングガーデン瀬谷 口腔内清掃による衛生保持について誤嚥性肺炎の抑制を目的にして→介護老人福祉施設 わかたけ富岡 いつまでもおいしく口から食べるメーカー協働による高栄養ムース作り→特別養護老人ホーム 栗原ホーム 刻み食を安全に美味しく食べてもらいたい→恒春ノ郷 その方にあった食形態を提供するために―握力との関連について―→けいあいの郷 影取 皆でつくる栄養ケアマネジメント入居者と家族の想いを込めて→特別養護老人ホーム 新緑の郷 ラジオ体操 第一~ご利用者の声から始まった健康の輪→レジデンシャル常盤台 車いすが変われば生活が変わる プロジェクト W/C→七里ガ浜ホーム 入所者の生活をあきらめさせない 生活を変えた“座位姿勢”へのアプローチ→えびな南高齢者施設 入浴意欲をかき立てる魔法のお風呂 わたし、あきらめなくていいんだ!→特別養護老人ホーム 栗原ホーム 褥瘡ゼロを目指して→特別養護老人ホーム 弥生苑 まず行動する為の情報収集と共有方法 安心して利用者を守るためには→特別養護老人ホーム カトレアホーム 看取り介護ってなんで不安なの?~職員の心のゆらぎ~→湘南老人ホーム 終末期における介護職の関わり 死の受容、死への準備と御家族様の心の揺れ→わかたけ青葉 「やっぱりお寿司が大好き」看取りでも大好きな物は食べられる!→レジデンシャル常盤台 歯科医師とケアマネの連携推進プロジェクト→幸風苑地域包括支援センター ノーリフトケア習得宣言!!”みんな”を守る介護を実現するために→横浜市福祉サービス協会訪問介護看護いずみ ~地域交流~共に生きがいと楽しみを!~地域に開かれた施設を目指して!~→ケアハウス・ルツの家 地域カフェ 10カ所の立ち上げとその先へ~地元企業を連携しての地域支援~→横浜市六角橋地域ケアプラザ 認知症カフェは誰にでも開かれた交流の場「ほっこりカフェ」の開催と継続のために→川崎市特別養護老人ホーム 多摩川の里 職員定着における強みと弱みの明確化 定着率の理由を客観視し、自己覚知する→特別養護老人ホーム さつき 〈表終わり〉 P11 県社協のひろば 本会主催の催し 多文化高齢社会ネットかながわの県民講座  本会とユッカの会(多文化高齢社会ネットかながわ)は、「外国につながる住民の高齢化」に関する取り組みを行っています。講座詳細はユッカの会ホームページへ。URL:http://yukkanokai2014.web.fc2.com/ 【外国につながる介護職員とともに働く現場からの報告】 ◇日時=11月7日(日)午前10時~午前12時※Zoomでオンライン開催 ◇内容=外国につながる人が介護職として働く特別養護老人ホーム天王森の郷の取り組みを紹介します ◇申込方法=11月2日(火)までに Googleフォームから申し込む。先着40名 【みんなで育てるやさしい日本語「話す編・書く編」】 ◇日時=○書く編 11月18日(木)午後1時~午後3時、11月21日(日)午前8時30分~午前10時30分(2日間とも同じ内容)  ○話す編 11月19日(金)午後8時~午後10時  ※すべてZoomでオンライン開催 ◇内容=やさしい日本語を学び、声がけや日常会話、防災などのコミュニケーションを考えます ◇申込方法=各クラス先着20名。 Googleフォームから申し込む  URL:https://forms.gle/1Wav6fb4TTfayZYg9 ◇問合先=Mail:tknkyukka2021@gmail.com 寄附金品ありがとうございました 【交通遺児援護基金】(株)エスホケン、(株)橋本自動車学校 代表取締役 原章 【子ども福祉基金】脇隆志、(株)エスホケン 【ともしび基金】そうてつローゼン港南台店、広瀬公子、(福)日本医療伝道会総合病院衣笠病院 (合計8件 匿名含む108,895円) 【ライフサポート事業】 <寄附物品>(N)セカンド・ハーベストジャパン (いずれも順不同、敬称略) P12 かながわほっと情報 分身ロボットを通じたコミュニケーション―障害者就労啓発施設 「caféツムギstation at Yokohama Kannai」(横浜市中区)  JR関内駅北口高架下に分身ロボット「OriHime(以下、オリヒメ)」が働いているカフェがあると聞き、訪問しました。オリヒメは、パソコン、タブレット、スマートフォンなどで手軽に遠隔操作ができるロボットで、簡単なジェスチャー等により、まるで本当にその場にいるようなコミュニケーションをとれるようになります。重度の障害がある方をはじめ、介護や子育て等をしながら働きたい方など、さまざまな理由で外出が難しい方がオリヒメを活用し社会参加を果たしています。  訪問したcaféツムギstation at Yokohama Kannaiは、横浜市健康福祉局が開設した障害者就労啓発施設で、店舗の運営は(株)JR東日本クロスステーションが担っています。  店舗の内外には、障害者アートが展示されており、横浜市内の就労支援施設とコラボした手作りお菓子の販売がされています。  店舗には、常駐するスタッフとオリヒメを通して働くパイロットがいます。パイロットは1~2時間のシフトで交代することになっていて、主に接客を担当します。オーダーを聞くことはもちろん、お客様からお薦めのメニューを聞かれたり、テレビ番組などの世間話をしたりと、会話が弾むこともあります。  常駐スタッフの高橋さんは、オリヒメを通して操作者(パイロット)たちと一緒に働くことについて、「初めは少し身構えましたが、今では普通に雑談をしています。わざわざオリヒメに会いに来てくれる小学生もいました。オリヒメには夢があっていいですね」と言い、もっと多くの方にオリヒメを知って欲しいと話してくれました。  取材時のパイロットは、ゆーちゃん。ゆーちゃんは、テレビでオリヒメを通じた働き方があることを知り、パイロットになりました。ゆーちゃんは、オリヒメの腕を上げたり、首を回したり、目を光らせたり、巧みにジェスチャーを交えて会話を進めます。この仕草にこちらも親近感が生まれ、初めはロボットに話しかけていたつもりが、いつの間にか、ゆーちゃんと会話していることに気付きました。ゆーちゃんは、caféで定期的に働く機会を得られたことを喜びつつ、「今はコロナで観光客が少ないけれど、戻ってきたら、駅やホテル等で観光案内や、外国人向けにお薦めスポットの案内などをしたい」と今後の夢を語ってくれました。  オリヒメを通して、外出困難な方でも、仕事をしたり、人と交流する機会を得られることを実感し、今後の可能性を感じることができました。 (企画課) 〈写真〉 仕事中のOrihime、パイロットの顔がわかるよう写真(左)が置かれている 〈写真終わり〉 「福祉タイムズ」は、赤い羽根共同募金の配分を受けて発行しています ご意見・ご感想をお待ちしています! バックナンバーはHPから 【発行日】2021(令和3)年10月15日(毎月1回15日発行) 【編集発行人】新井隆 【発行所】社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 〒221-0825 横浜市神奈川区反町3丁目17-2 ☎045-534-3866 FAX045-312-6302 Mail:kikaku@knsyk.jp 【印刷所】株式会社神奈川機関紙印刷所