テキストデータ作成に当たって  このデータは、『福祉タイムズ』 vol.872 2024年7月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。  二重山カッコは作成者注記です。 P1 福祉タイムズふくしTIMES 2024.7 vol.872 編集・発行社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 特集 福祉サービスの質の向上に向けた福祉サービス運営適正化委員会の役割と取り組み NEWS&TOPICS P4 当事者目線に立った新たな女性支援がはじまります! 県共生推進本部室 キラリ輝く!児童委員活動 P7 かわいい赤ちゃんとママの大事な居場所~赤ちゃんサロン~ 川崎市宮前区宮前第三地区民生委員児童委員協議会 目代由美子 企業の社会貢献活動 P9 企業間の連携で行う社会福祉施設への寄贈活動 関東アイスクリーム協会 今月の表紙 鎌倉の海で海藻を集める鎌倉ダイニング主宰の矢野ふき子さんと、鎌倉薫風施設長の太田顕博さん、鎌倉市内の福祉施設のみなさん。 「鎌倉海藻ポーク」は、浜に打ち上げられた海藻を飼料に、うまみ成分が多い、まろやかな豚肉に育つ。【詳しくは12面へ】撮影:菊地信夫 P2 特集 福祉サービスの質の向上に向けた福祉サービス運営適正化委員会の役割と取り組み  かながわ福祉サービス運営適正化委員会は、平成12年に施行された社会福祉法第83条に基づき、福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するとともに、福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決することを目的として設置されました。  今号では、かながわ福祉サービス運営適正化委員会が取り組んでいる事業に加え、寄せられた苦情相談の内容や近年の傾向等について紹介します。 福祉サービス運営適正化委員会の設置と役割  平成12年に施行された社会福祉法により、福祉サービスの利用は「措置」から「契約」へと転換され、利用者と福祉サービス事業者(以下、事業者)との対等な関係が確立されました。しかし、法的には対等な関係にあるとされながらも、利用者と事業者では、情報や知識等に差があり、対等とは言えません。そこで、対等な関係を保つための利用者の権利擁護の一つとして、苦情解決の仕組みが導入され、事業者における苦情解決体制の整備が求められました。さらに、事業者内での解決が難しい事例に対応するために、福祉サービス運営適正化委員会(以下、委員会)が都道府県社協に設置されました。  委員会の役割は、主に二つです。 【①福祉サービス利用援助事業の適正な運営確保】  福祉サービス利用援助事業は、判断能力が十分ではない認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等に対する福祉サービスの適切な利用のための援助や日常的金銭管理などを行うサービスです。県内の市区町村社協で「日常生活自立支援事業」の名称で実施されています。  委員会では、日常生活自立支援事業の実施主体である県・政令市社協、サービスを提供している57カ所の市区町村社協における事業実施について、より一層の透明性、公平性を確保することを目的に「運営監視委員会」を設置しています。  利用者に安心して利用してもらうための仕組みとして、委員会が第三者機関として調査等を行い、必要な助言や勧告を行います。 【②福祉サービスに関する利用者等からの苦情の適切な解決】  委員会では、社会福祉法第2条に規定する社会福祉事業で提供される福祉サービスの利用に関する苦情を解決するための相談、助言、調査等を行う「苦情解決委員会」を設置しています。  第三者機関として中立・公正な立場で苦情申出人(以下、申出人)と事業者双方の話を伺い、話し合いによる解決を図ります。 〈図〉 《運営適正化委員会組織図》 かながわ福祉サービス運営適正化委員会 社会福祉に関する学識経験者、弁護士、医師15名→事務局 ↓ 運営監視委員会 社会福祉に関する学識経験者、弁護士、医師8名 苦情解決委員会 社会福祉に関する学識経験者、弁護士、医師6名 〈図終わり〉  また、事業者における苦情解決体制の整備に向けた支援の一環として、苦情受付担当者等を対象とした苦情解決研修会や、苦情解決の仕組みの周知や理解促進を図るため、事業者の苦情解決対応状況について把握する事業者訪問調査を実施しています。 苦情相談の概況  令和5年度の苦情受付件数は199件(左グラフ参照)、対応延べ回数は1298回でした。障害福祉サービスについての苦情が半数以上を占めており、中でも共同生活援助(障害者グループホーム)についての苦情が多く見受けられました。  苦情内容は、サービスが不十分、退居やサービス提供の中止などの「サービスの質や量」(約38%)に関する苦情が最も多く、次いで職員の関わり方や対応、言葉遣いなどの「職員の接遇」(約24%)の順となっています。  近年、委員会には、事業者の処分等を求める相談が増えています。しかし、委員会は申出人と事業者との話し合いによって苦情を解決できるよう調整等を行う役割であることから、申出人の思う解決にはならないこともあります。 P3 苦情解決に向けて〜建設的な話し合いと歩み寄り  苦情の解決に向けて大事なことの一つに、申出人と事業者双方の歩み寄りがあります。そのためには、まずお互いの考えや状況を知ることが必要です。申出人がどのようなサービスを望んでいたか、事業者がどのような意図をもって支援をしていたかなど、建設的な話し合いを通じて相互理解を深め、さまざまな対応策を検討していくことで、解決につながっていくのです。  中には話し合っても解決とならない苦情もありますが、お互いのことを知らずには、建設的な話し合いや他の対応策を見つけることはできません。  お互いの考えや状況を知ることで解決につながった事例もあります。 苦情相談事例「体調を気遣ってほしい」  申出人であるAさんには、精神障害があります。体調が良い日はヘルパーと一緒に調理や掃除をしています。  体調の優れないある日、そのことをヘルパーに話そうと思いましたが、会話のテンポが早く、なかなか言い出すことができませんでした。その後も何度か同じようなことがあり、事業者に相談しようかとも思いましたが、言い出せず、委員会に相談が寄せられました。  委員会から、まずAさんに話を聞き、どのような方法であれば安心してサービスを受けることができるのか尋ねると「家事を始める前に、今日の体調をヘルパーと確認したい」とのことでした。次に、事業者にAさんに対してどのようなサービスを行っていたのかを聞きました。事業者は、Aさんの体調を気にかけていましたが、Aさんからは何も言われなかったので、それ以上のことは聞かなかったこと、また体調についてはAさん自ら伝えてくれることが重要だと考えていたとのことでした。  双方の話を聞き、委員会から事業者に対して、Aさんの言い出せなかった気持ちや意向を受け止めて、改めてAさんに対してどのようなサポートが必要なのか、事業者内だけでなく、Aさんとも話し合い、一緒に考えていくことなどを提案しました。また、Aさんに対しても事業者が体調を気にかけていたことや支援の方針などを伝えました。  本事例のように、事業者として必要なサービスを行っていたつもりでも、それが申出人には伝わらずにサービスが不十分だと感じたり、一方で事業者は苦情となって初めて申出人の気持ちに気付くこともあります。  お互いのことを知る、相互理解を深めるためには、日頃のコミュニケーションが重要となります。コミュニケーションを重ねることで、大きな苦情になる前に小さなことでも相談してもらえるような信頼関係を築くことができ、苦情を未然に防ぐための大事なポイントともなります。 福祉サービスの質の向上のために  苦情と聞いて、マイナスのイメージをもつ人も少なくありません。しかし、苦情対応の経過には、事業者としてサービスの質の向上のヒントなど学ぶことが多くあります。利用者からの苦情申出をきっかけに、日頃のサービスを振り返り、質の向上につながる機会として捉えていただきたいと考えています。  委員会では、福祉サービスの質の向上に向けて、中立・公正な立場で申出人と事業者の双方から話を聞き、苦情の解決に努めてまいります。 (かながわ福祉サービス運営適正化委員会事務局) 令和5年度事業報告はこちら https://www.knsyk.jp/service/tekisei/publication/20230331_01 〈囲み〉 〈円グラフ〉 《令和5年度苦情受付件数》総数:199件 〈円グラフ終わり〉 《委員会に寄せられた苦情例》 ●職員の接遇  体調が悪いのに寄り添った対応をしてくれない。(計画相談支援) ●サービスの質や量  利用時間を増やしたいが希望を聞いてもらえない。(就労継続支援A型) ●説明・情報提供  園での子どもの様子をもっと詳しく知りたい。(保育所) ●利用料等  食費を値上げすると言われたが、負担が大きい。(共同生活援助) ●被害・損害  家族が届けたものを事業者が紛失してしまった。(特別養護老人ホーム) ●権利侵害  利用者の様子が事業者のSNSに許可なく掲載されている。 (就労移行支援) 〈囲み終わり〉 P4 NEWS&TOPICS 当事者目線に立った新たな女性支援がはじまります!―「女性の福祉」の夜明け ●売春防止法の限界  皆さんは「女性の福祉」という言葉をご存じですか。これまで、女性が女性であるが故に抱える課題に対する施策は、昭和31年に制定された売春防止法に基づき実施されてきました。  売春防止法は、性道徳に反し、社会の善良な風俗を乱す売春をするおそれのある女子を「要保護女子」として定義し、補導処分し、保護し、更生の措置を講ずることで、売春の防止を図り、社会秩序を保つための法律です。ここには社会的な構造に起因して困難な問題を抱えることになった女性に寄り添い、必要な支援を行うといった福祉的な視点はありませんでした。 ●女性支援法の成立  令和4年、売春防止法は66年ぶりに改正され、令和6年4月には、女性支援の考え方を抜本的に変えた「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援法)が施行されました。  女性支援法では「困難な問題を抱える女性の福祉の増進を図り、女性の人権が尊重され、女性が安心してかつ自立して暮らせる社会の実現」をめざすこととされ、日常生活または社会生活を送る上で、様々な困難を抱える女性の福祉の増進のため、本人の意思を尊重した切れ目のない福祉的な支援を実施することとされています。  ここでは、女性支援法の主な条文の概略をご紹介します。 ①女性相談支援センター(第9条)  対象女性の立場に立った相談や、一時保護、医学的・心理学的な援助、自立のための各種情報提供等を行います。都道府県は必置とされ、県は1カ所設置しています。 ②女性相談支援員(第11条)  困難な問題を抱える女性の発見に努め、その立場に立って相談に応じ、専門的技術により必要な援助を行います。県内では県及び各市に配置されています。 ③女性自立支援施設(第12条)  心身の健康回復を図るための援助、自立支援等を行います。都道府県は設置できるとされ、県は1カ所設置しています。 ④民間団体との協働による支援(第13条)  県は、困難な問題を抱える女性への支援を行う民間団体と協働して、その自主性を尊重しつつ、支援対象者の意向に留意しながら、支援対象者の発見、相談等の支援を行います。 ⑤支援調整会議の設置(第15条)  県及び市町村は、適切かつ円滑な支援を実施するための情報交換を行うとともに、支援に関する協議を行うため、女性支援の関係者により構成する支援調整会議を組織するよう努めます。 ●「かながわ困難な問題を抱える女性等支援計画」の策定  県では、困難な問題を抱える女性やDV(配偶者等からの暴力)被害者を包括的に支援するため、令和6年3月「かながわ困難な問題を抱える女性等支援計画」を策定しました。  この計画では、困難な問題を抱える女性に寄り添い、つながり支えることで、少しでも不安を取り除き「困難な問題を抱える女性等が自立し、安心して自分らしく暮らせる社会の実現」をめざすべき社会として掲げ、当事者を取り巻く現状や、県が取り組むべき事項、行政・民間団体・関係機関等の役割や連携について明示し、令和10年までの5年間に県が実施する具体的な施策内容について記載するとともに、その施策を重点的に推進していくこととしています。 〈イラスト〉 神奈川県における女性支援の流れ 〈イラスト終わり〉 P5 ●計画の基本理念  県は、次の3つの基本理念に基づき施策を実施します。 ①人権を尊重し、ジェンダー平等の実現に資する支援 ②当事者目線に立った支援 ③様々な機関と連携・協働した切れ目のない支援  女性の就業率の上昇、働き方の多様化や、婚姻に関する意識や家族関係の変化などに伴い、予期せぬ妊娠・出産、女性に対する暴力、生活困窮、性被害問題等、女性が女性であるが故に抱える問題は複雑化し、支援ニーズも一層多様化しています。また、近年、路上で売春を行う女性の中には、自身ではそのことを困難な問題であると気づかないまま、性的搾取等の社会の構造に取り込まれている人もいるという報道もなされており、支援の存在を知らず、支援を受けることも考えていない女性が存在することが明らかになっています。このような性別による不平等や不均衡は、そのような状況を生み出す社会的な構造に起因するものです。女性がなぜそのような困難な状況に至ったのか、表面的な事柄だけでなく本人の声に真摯に耳を傾けることで、売春防止法の「保護・更生」の考えでは成しえない当事者の目線に立った本当の意味での「女性への支援」となるのではないでしょうか。今後、行政をはじめとした支援者には、当事者目線に立ち、女性の意思を尊重した支援を行うことが求められます。 ●かながわ女性の不安・困りごと相談室  仕事が減り生活が苦しい、社会とのつながりが持てないといった不安や生活上の課題、複合的な困難を抱える女性を支援するため、県では「かながわ女性の不安・困りごと相談室」を設置しています。電話、対面相談のほか、メールやSNSなどでも対応しています。皆様からのご相談をお待ちしています。  他にも相談室では、困難な問題を抱える女性の早期発見、専門相談窓口への付き添いや、相談員や他の当事者が集まって交流し、つながりを持つことができる場所の提供等、課題解決に向けた本人に寄り添った支援を行っています。 〈囲み〉 かながわ女性の不安・困りごと相談室のご案内(県HP) 〈囲み終わり〉 ●おわりに  女性が抱えている問題、取り巻く状況は様々で、必要な支援も多岐にわたります。  本人の立場に寄り添い、一人ひとりのニーズに応じた早期かつ切れ目のない包括的な支援をするためには、行政、関係機関、民間団体が緊密に連携・協働し、個々の状況に応じて、様々な施策を総動員し、社会全体で支援することが必要です。  女性支援法による当事者目線に立った新たな女性支援は始まったばかりです。「女性の福祉」のために関係者の皆様のご理解、ご協力をお願いします。 (県共生推進本部室) P6 福祉のうごき 2024年5月26日~2024年6月26日※新聞等掲載時点 ●出生率最低1.20 昨年、出生数72万人  厚生労働省は6月5日、人口動態統計を発表した。令和5年の出生数は72万7277人で、統計がある1899年以降最少だった。1人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数を示す「合計特殊出生数率」も1.20で過去最低だった。 ●関係省庁横断で「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」策定  6月11日、内閣府、厚生労働省等関係省庁横断で「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が策定された。  近年、病院等の手続、日常生活、死後事務等について、家族・親族に代わって支援する「高齢者等終身サポート事業」を行う事業者が増加してきている。利用者の安心の確保とともに、事業者の適正な事業運営を確保し、健全な発展を推進することが求められる。業務の内容が民事法や社会保障関係法に広くまたがることから、遵守すべき法律上の規定や、留意すべき事項等を関係省庁横断で整理し、ガイドラインとして提示された。 ●こども家庭庁 こども・若者のシェルター事業開始  こども家庭庁は、虐待等により家庭に居場所のないこども・若者に宿泊所を提供する「こども若者シェルター・相談支援事業」を始めた。  シェルターの整備を進めるに当たり、適切な運用が図られるよう、親権等との関係を踏まえた適切な対応のあり方、こども・若者のニーズに応じた必要な支援内容、シェルターに入所中のこども・若者の権利擁護等について検討し、ガイドライン策定を行う「こども若者シェルターに関する検討会」の初会合が6月14日に開かれた。 ●特定技能の外国人材 訪問介護等への従事解禁へ  厚生労働省は6月26日、「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」の中間まとめを公表した。  中間まとめでは、介護現場で「特定技能」の在留資格等で働く外国人材が、現在認められていない訪問介護等サービスに従事することを解禁する方針が示されている。解禁には、利用者と日本語で十分に意思疎通できるよう事業者が研修を行うことなどが求められている。 P7 キラリ輝く!児童委員活動~主任児童委員制度30周年を迎えて~ 川崎市宮前区宮前第三地区民生委員児童委員協議会 主任児童委員 目代 由美子  私が主任児童委員になったのは4人の子どものうち、1番下の子が中学に上がる頃で、21年前のことです。小学校・中学校とPTA活動を続け、会長、副会長の役を受け楽しく活動している中、地域活動で知り合った民生委員の会長に誘われました。ちょうどその頃は1番下の子が小学校を卒業し、PTA活動が終わるところでしたので、また子どもと関われると思い、喜んで引き受けました。  宮前第三地区民児協の中では児童部会の部会長を務めています。宮前第三地区社協の活動にも参加して、そこでは小学生と花を植えたり、中学生の福祉体験を行っています。 かわいい赤ちゃんとママの大事な居場所~赤ちゃんサロン~  川崎市宮前区は、都心から電車で約30分と、通勤には大変便利で、そのうえ緑豊かな住宅地です。住民は転入転出が多く、子育て世代のファミリーが多く住んでいます。  宮前第三地区民児協では、毎月第3金曜日の10時から「プレママとママの集い」という赤ちゃんサロンを開いています。対象は2歳までの赤ちゃんとお母さん、そしてこれからお産を迎える妊婦さん(プレママ)。宮前地区会館の和室が会場で、スタッフは民生委員と主任児童委員全員の当番制になっています。地域担当の保健師さんと保育園の保育士さんも隔月で参加いただいています。  サロンにはいろいろなママたちが参加します。赤ちゃんを抱っこした経験がないままお産をしたママ、引っ越したばかりで自宅の住所も覚えていないママ、同じ月齢の赤ちゃんと会ったことがないママ…。そんなママたちが「プレママとママの集い」に集まると、同じくらいの赤ちゃん、ママ同士と知り合うことができ、一緒に遊ぶうちに笑顔がこぼれます。  絵本の読み聞かせが始まると、赤ちゃんたちは急に静かになり、絵本に集中します。「おうちに帰ったらママと赤ちゃんだけだから、こんな風に絵本を読んであげると赤ちゃんも喜びますよ」と、ママたちへ声をかけています。スタッフは受付をしたり、手形足形スタンプを取るのを手伝ったり、ママ同士をつなげたりと、大忙しです。  4月から保育園入園のため、3月にサロンを卒業するママの一人が「私は産後うつになりましたが、ここに来るようになって症状が落ち着きました。ありがとうございます」と笑顔で話してくれました。 〈写真〉 常にみんなの笑顔があふれる場所です 〈写真終わり〉  私たちは民生委員児童委員、主任児童委員であると同時に、地域のおじさんおばさんとしてママたちと顔なじみになり、赤ちゃんの成長を一緒に喜びます。ママたちはここを井戸端会議のようにして楽しい時間を過ごします。ママと赤ちゃんの大事な居場所をいつまでも守っていきたいです。 〈図〉 地区の概況 川崎市宮前区宮前第三地区 人口 29,006人 世帯数 14,744世帯 子ども(15歳未満) 5,983人 保育園・幼稚園 10園 小学校 1校 中学校 1校 民生委員児童委員 22人 うち主任児童委員 2人 〈図終わり〉 P8 私のおすすめCHECK! ◎このコーナーでは、子育てや障害、認知症・介護当事者等の目線から、普段の暮らしに役立つ「おすすめ」なものを紹介します。 参加してみよう!身近な認知症カフェに  認知症カフェあるいはオレンジカフェとは、身近な場所で、認知症の人やその家族、地域の人たち、専門職など誰でも、気軽に集えて交流できる場です。  認知症の人と家族および地域の人たちが相互の理解を深め、認知症の人の思いや悩みを共有し、認知症に関する理解や支援の輪を広げることで「認知症になっても安心して生活できる地域づくり」に欠かせない活動です。皆さんも、身近な認知症カフェに参加してみませんか? 今月は→認知症の人と家族の会神奈川県支部がお伝えします! 認知症の人と家族の会は1980年に、神奈川県支部は1981年に発足。以来今日まで、介護家族と本人のつどい、電話相談、会報の発行、啓豪活動、調査研究、行政への要望などを行ってきました。 〈連絡先〉横浜市神奈川区反町3丁目17番2 神奈川県社会福祉センター5F TEL 045-548-8061 FAX 045-548-8068 毎週(月)(水)(金)10時から16時 URL:https://azkanagawa.sakura.ne.jp/wp/  令和6年1月1日に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」では「認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深めるとともに、共生社会の実現に寄与すること」が「国民の責務」とされています。  私は人を理解するための最も良い方法は、気持ちの上でも、姿勢の上でも同じ目線の高さでその人と直接接することだと思っています。個人的なことで恐縮ですが、医学部学生時代に、サリドマイド被害児、キノホルム被害者や数多くの障害者と一緒になってサッカーやキャンプ、裁判支援運動などに取り組んだ体験が、私が今日まで地域医療に関わり続けている原点になっています。  厚生労働省の研究班によれば、令和7年には認知症の人が471万6000人となり、医療・福祉の専門職、民生委員や行政職などで認知症の人や家族に接する人の数は膨大な数に上っています。また、認知症に関心を持ち、自分でできることをしようとして養成された認知症サポーターは1500万人(令和6年3月)になっています。私が認知症にかかわり始めた44年前の状況を考えると、まったく信じられないほどの多くの人たちが認知症にかかわりを持っていることになります。  認知症の人と家族の会のつどいの場で「ケアマネさんや看護師さんたちは、私の話をよく聞いてくれて、使いやすい介護サービスを丁寧に教えてくださいますが、私の本当の思いを受け止めてくれているとは思えません。でも、つどいでは、介護者も専門職も、同じ思いや同じ立場で参加してますので、気兼ねなく話ができます」という介護者からの感想がよく聞かれます。私も同感で、認知症の人や家族の本音を聞くためには、専門職は職場から離れて、つどいや認知症カフェなどにボランティアや市民として参加することが必要だと思います。  認知症カフェは、身近な地域の中で、気軽に訪れ、自由に交流できる場で、地域包括支援センター・市区町村・グループホーム・認知症関連団体・ボランティア団体などが運営にかかわっています。  2012年にオレンジプランで取り上げられたことで、認知症カフェは広く全国に普及しました。令和3年度の実績調査では、47都道府県1543市町村で7904のカフェが運営されていると報告されています。  認知症カフェの特徴と意義については「認知症の人とその家族が安心して相談でき、思いや悩みを話すことができる」「認知症の人や家族が主体的に参加することができる」「地域住民や専門職などが認知症の人と家族に出会うことができる」「地域住民が認知症や認知症ケアについて知ることができる」などを挙げることができます。  認知症の人と家族の会では「琥珀カフェ」(2014年から)「オレンジカフェアマリリス」(2017年から)の2つの認知症カフェを毎月開催しています。インターネットなどで検索すれば、身近な地域の認知症カフェを知ることができます。地域の皆さんも、専門職の皆さんも、時間を作って認知症カフェに参加しませんか? (代表 杉山孝博) 〈写真〉 認知症の人と家族の会神奈川県支部が開催する「琥珀カフェ」のクリスマス会。参加者には自然と笑みがこぼれる 〈写真終わり〉 P9 企業の社会貢献活動 共生社会づくりをすすめる、企業の“チカラ” 企業間の連携で行う社会福祉施設への寄贈活動―関東アイスクリーム協会  長年、県内の社会福祉施設にアイスクリームの寄贈活動を行っている、関東アイスクリーム協会のお二人にお話を伺いました  ―どのような取り組みをされているのでしょうか  関東アイスクリーム協会は、アイスクリームの衛生及び品質の向上を図ることにより、お客さまに安全・安心な商品を提供し、豊かな食生活に寄与することを目的とした、関東圏の43社が加盟する団体です。協会では、福祉施設や企業の職員へのアイスクリームの寄贈、アイスクリームの日等のイベントでのアイスクリームの配布活動のほか、児童、学生の学習活動への協力などを行っています。 〈写真〉 関東アイスクリーム協会 理事長の田山さん(左)と事務局長の山本さん 〈写真終わり〉  福祉施設への寄贈活動は、1964年から毎年、5月9日のアイスクリームの日に合わせて実施しています。利用者の日常生活の支援を行っている福祉施設の方々にアイスクリームの寄贈を行うことで、福祉活動の一助になれば、という思いで活動しています。全国では毎年4万個近く、県内では、毎年2800個ほどのアイスクリームを、希望する社会福祉施設に寄贈しています。県内では県社協とも協力して、児童養護施設や重症心身障害児者施設、母子生活支援施設など、子どもの生活を支える福祉施設を中心に配布しています。  また、多くの利用者の方に喜んでいただけるように、アイスクリームの種類について施設担当者と企業担当者が直接やりとりをして、細かく調整をしています。 ―活動の中で、印象的だったことはありますか  アイスクリームを寄贈した施設からは、お礼としてお手紙や写真などをいただいています。凝った仕掛けや商品の絵、笑顔の写真など、施設職員と利用者の方からのあたたかい感謝の気持ちが伝わってきて、それを受け取った時には活動を続けてきて良かった、と感じます。 〈写真〉 子どもたちから届いたたくさんのお手紙には「アイスをたべてしあわせなきもちになりました!」というメッセージも 〈写真終わり〉  施設職員の方からのお手紙に「施設で食事に使える予算が限られていて、子どもたちが希望するデザートにまでは手が回らない」と書かれているのを見たときに、アイスクリームの日の活動だけでなく、さらに活動を広げていくべきではないかと感じました。 ―今後の展望を教えてください  現在、県内では協会員16社が寄贈に参加しています。企業も大小さまざまですが、アイスクリームを食べて喜んでいる顔を見たいという気持ちを大切に、活動を続けていきたいです。  また、ここ数年はコロナ禍の影響で直接施設の皆さんとお会いできず、配送でのお渡しとなっていました。今後は以前のように直接お届けしたいと考えています。  2015年にSDGsの活動が推進されてから、社会の認識も変わってきて、企業には持続可能な社会を作る役割が求められています。経済活動を通し、地域の皆様と一緒にこの問題に取り組んでいくためには、企業と福祉関係者、地域の方々との対話の場を設けることが重要だと考えています。対話が続いていけば、お互いどのような活動に対して協力できるのか、どういったことを求めているのか、分かるようになると思います。  今行っている活動は今後も継続し、さらに、関係各所と情報交換をしていきながら、より良い形で取り組んでいきたいです。 関東アイスクリーム協会 東京都千代田区九段北1丁目14番19号 乳業会館6階 https://www.icecream.or.jp/ P10 県社協のひろば 令和5年度事業・収支決算の概要-住民参加と様々な主体の協働による誰もが尊重され、安心して生活できる地域づくりの推進 ●「神奈川県社会福祉協議会活動推進計画(令和3~5年度)」の最終年度として、基本目標に掲げた事業の着実な推進を図りました。 ●市町村域における包括的な支援体制整備の推進に向けて、包括的な支援体制及び重層的支援体制構築支援事業や生活支援コーディネーター養成研修等の県委託事業と、市町村社協部会事業と連携を持たせながら実施し、行政・社協が協働して取り組むための支援を行いました。 ●かながわボランティアセンターホームページの本格的な運用を開始し、助成事業情報や寄附・寄贈などの発信する情報の充実を図りました。 ●新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた緊急小口資金等の特例貸付の償還開始に伴い、市区町村社協と連携し、借受世帯の個々の状況に応じた支援に取り組みました。 ●福祉サービスの質の向上に向けた取り組みの強化として、社会福祉法人等が地域の福祉ニーズ・課題に対応することを目的とする法人間ネットワークの形成に向け、経営者部会と市町村社協部会と協働して「地域ネットワーク強化事業」を立ち上げ、市町村域で行われる課題共有と解決に向けた活動に対して助成しました。 ●福祉人材の確保について、福祉人材センターでの無料職業紹介事業での相談対応のほか、地域出張相談会を、当該地域の求人施設等の協力を受けて実施し、地域に密着した事業展開を図りました。 ●福祉人材育成について、研修体系を整備し、計画的な研修事業を実施したほか、オンラインによる研修管理システムを新たに導入し、法人・事業所の研修受講の環境整備を図りました。 ●ホームページのリニューアルを行い、本会活動の情報発信の充実を図りました。 ●政策提言で把握した課題や社会的課題を踏まえ、関係者と協働して解決を図るための次期「活動推進計画」を策定しました。 活動推進計画(令和6~10年度) 令和5年度事業報告並びに社会福祉法人現況報告書(収支決算書含む) 〈表組〉 令和5年度 収支決算(抜粋) 総合資金収支計算書 (自)令和5年4月1日 (至)令和6年3月31日(単位:円) 会計及び事業区分、拠点区分→→収入合計(A)→支出合計(B)→差引増減(A-B) 総合計(法人全体)→→134,309,012,261→123,925,310,360→10,383,701,901 1 一般会計→→6,336,900,510→5,194,171,614→1,142,728,896 →(1)社会福祉事業区分→5,272,006,123→4,669,322,679→602,683,444 →(2)公益事業区分→1,037,734,544→514,475,639→523,258,905 →(3)収益事業区分→128,856,839→112,070,292→16,786,547 2 生活福祉資金会計→→127,972,111,751→118,731,138,746→9,240,973,005 →生活福祉資金特別会計→114,292,486,688→105,539,816,850→8,752,669,838 →県単生活福祉資金特別会計→747,701→703,407→44,294 →生活福祉資金貸付事務費特別会計→13,179,017,659→13,162,878,737→16,138,922 →要保護世帯向け不動産担保型生活資金特別会計→498,184,532→27,530,183→470,654,349 →臨時特例つなぎ資金特別会計→1,675,171→209,569→1,465,602 ※一般会計、各事業区分並びに各拠点区分はそれぞれの集計単位で求められる内部取引消去後の額を計上しているため、収入合計額(A)と支出合計額(B)の合計額は一致しない 総合貸借対照表 (単位:円) 資産の部→→負債の部 流動資産→10,978,048,643→流動負債→2,720,102,769 固定資産→86,499,874,613→固定負債→885,818,688 →→負債の部 合計→3,605,921,457 →→純資産の部→ →→基本金→2,125,290 →→基金→1,434,693,062 →→国庫補助等特別積立金ほか→94,995,100,182 →→次期繰越活動収支差額→△2,559,916,735 →→純資産の部 合計→93,872,001,799 資産合計→97,477,923,256→負債及び純資産の部合計→97,477,923,256 財産目録(令和6年3月31日) (単位:円) 貸借対照表科目→→貸借対照表価額 Ⅰ 資産の部→→ 1 流動資産→→1,516,905,871 →現金預金→1,144,014,696 →事業未収金→47,754,474 →未収補助金→86,303,000 →貯蔵品→9,000 →前払金→476,605 →前払費用→800,340 →1年以内長期前払費用→25,222 →1年以内回収予定長期貸付金→238,417,000 →△徴収不能引当金→△894,466 2 固定資産 →→7,609,659,596 →基本財産→3,000,000 →その他の固定資産→7,606,659,596 資産合計→→9,126,565,467 Ⅱ 負債の部→→ 1 流動負債→→2,491,474,219 →事業未払金→91,194,667 →その他の未払金→5,497,200 →1年以内返済予定振興資金借入金→2,337,380,000 →預り金→34,376,520 →前受金→5,560,832 →賞与引当金→17,465,000 2 固定負債→→370,598,339 →退職給付引当金→343,161,347 →長期預り金→27,436,992 負債合計→→2,862,072,558 差引純資産→→6,264,492,909 ※法人単位(一般会計のみ)を表示 監査報告書 令和6年5月16日 社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 会長 篠原 正治 殿 監事 阿部 匡秀 ㊞ 監事 小原 公一 ㊞ 監事 國重 正雄 ㊞  私たち監事は、令和5年4月1日から令和6年3月31日までの令和5年度の理事の職務の執行について監査を行いました。その方法及び結果について、次の通り報告いたします。 1 監査の方法及びその内容   各監事は、理事及び職員等と意思疎通を図り、情報の収集及び監査の環境の整備に努めるとともに、理事会その他重要な会議に出席し、理事及び職員等からその職務の執行状況について報告を受け、必要に応じて説明を求め、重要な決裁書類等を閲覧し、業務及び財産の状況を調査しました。以上の方法により、当該会計年度に係る事業報告及びその附属明細書について検討いたしました。   さらに、会計帳簿又はこれに関する資料の調査を行い、当該会計年度に係る計算関係書類(計算書類及びその附属明細書)及び財産目録について検討しました。 2 監査の結果   福祉・介護分野の人材不足は今後より一層の深刻化が見込まれる。人材確保・定着支援の一層の強化と同時に、中長期的な視点に立ち、教育や労働等関連分野の機関・団体との連携のもと、若い世代から福祉に触れ、その意義や役割を知る機会を増やすよう、更なる取組みを進めていただきたい。 (1)事業報告等の監査結果  ①事業報告及びその附属明細書は、法令及び定款に従い、法人の状況を正しく示しているものと認めます。  ②理事の職務の遂行に関する不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実は認められません。 (2)計算関係書類及び財産目録の監査結果    計算関係書類及び財産目録については、法人の財産、収支及び純資産の増減の状況を全ての重要な点において適正に表示しているものと認めます。 以上 〈表組終わり〉 P11 Information 役員会の動き ◇評議員会=6月20日(木)①令和5年度事業報告並びに決算報告(案)②理事の選任 ◇理事会=6月20日(木)①常務理事の選任②各種委員会委員の選任③評議員候補者の推薦 ◇評議員選任・解任委員会=6月24日(月)評議員の選任 関係機関・団体の催し かながわコミュニティカレッジNPO会計講座  NPOで必要となる会計事務、決算書の作成など、基本的な法人会計業務を学ぶ講座 ◇日時=8月22日、29日、9月5日、12日(全4回) ◇受講料=3,600円 ◇定員=30名 ◇開催方法=オンライン ◇申込締切=令和6年8月1日(木) 詳細はHPで確認 HP:https://www.pref.kanagawa.jp/docs/u3x/komikare/r6kouza/npo_kaikei.html 寄附金品ありがとうございました 【県社協への寄附】古積英太郎 【交通遺児等援護基金】三浦しらとり園、(株)エスホケン、(一社)神奈川県指定自動車教習所協会 【子ども福祉基金】三浦しらとり園、(株)エスホケン、脇隆志 【ともしび基金】三浦しらとり園、神奈川県ボウリング場協会、天台宗神奈川教区 (匿名含め、合計12件2,032,929円) 【寄附物品】神奈川県ボウリング場協会、神奈川昭和会 【ライフサポート事業】〈寄附物品〉 (N)セカンドハーベスト・ジャパン (いずれも順不同、敬称略) 〈写真3点〉 県内障害福祉サービス事業所へ椅子を寄贈いただき、令和6年5月22日、(株)オカムラ サステナビリティ推進部 遊佐希美子部長(左)に感謝状を贈呈 ともしび基金へ寄附をいただき、令和6年6月9日、天台宗神奈川教区 加藤浩照宗務所長(右)に感謝状を贈呈 (福)エリザベス・サンダース・ホームにおける塗装ボランティアに対し、令和6年6月20日、神奈川昭和会 髙野一哉会長(左)に感謝状を贈呈 〈写真3点終わり〉 本会常務理事就任のご挨拶 深井康信  6月20日理事会にて選任され、常務理事に就任いたしました。  地域社会の生活課題は複雑化・多様化し、広域の社会福祉協議会として、会員の皆様をはじめ関係者との協働によって解決に取り組む役割がより一層高まっていることを認識しております。  引き続き、本県の社会福祉の推進に向けて、変わらぬご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。 〈囲み〉 活動紹介動画 公開中 本会第2種・第3種正会員連絡会として、活動を動画で紹介しています。ぜひご覧ください。 【第1回】 ~罪を犯した人たちの社会復帰を支える~ 保護司活動の紹介 【第2回】 ~正しく理解して あたたかく見守る~ 神奈川県自閉症協会の紹介 https://www.knsyk.jp/service/kaiin/movie 〈囲み終わり〉 P12 かながわほっと情報 廃棄される海藻から生まれた「鎌倉海藻ポーク」 ~料理家の思いを叶えた地域のつながり~ 料理教室鎌倉ダイニング 主宰 矢野ふき子さん (福)ラファエル会 鎌倉薫風 施設長 太田顕博さん(鎌倉市) 料理家だからこそ生まれたアイデア  鎌倉の海岸に打ち上げられた大量の海藻を豚の飼料にできないか。利用されずに廃棄されている海藻を障害のある人の手を借りて彼らの仕事にできないか。そう考えて行動を始めたのが料理教室「鎌倉ダイニング」主宰の料理家 矢野ふき子さんでした。  矢野さんは、海藻に漁業権を持つ漁業組合に有効利用の了解を得て、料理教室の生徒さんの縁で障害者福祉施設ともつながり、県畜産技術センターに紹介された養豚家の臼井欽一氏の賛同を得ることができました。  当初、行政に相談をした時には「そんな話は聞いたことがない」と、なかなか理解を得られなかったそうです。それなら「一人でやってやろう」と諦めずに活動を続けたところ、持ち前の明るさから人の輪をつくり、多くの支援を得て商品開発に成功しました。 〈写真〉 料理家 矢野ふき子さん 〈写真終わり〉  完成した豚肉に、矢野さんは「鎌倉海藻ポーク」と名付けました。オレイン酸といううまみ成分が多く、まろやかな味わいの豚肉になりました。現在は鎌倉市内の学校給食や、一部レストランのメニューで提供されていますが、今後は生産規模を拡大して「いつかは福祉施設の利用者の方々と豚肉の販売ができるようになったら良いなぁ」と矢野さんは展望を語ります。 海とのふれ合い、人との交流  取材当日、由比ケ浜海岸で海藻取りが行われました。参加していた(福)ラファエル会鎌倉薫風の施設長太田顕博さんにお話を伺いました。  鎌倉薫風では4年前から鎌倉海藻ポークの活動に参加しています。「鎌倉海藻ポークの話を聞いたとき、興味深い取り組みだと思い参加を決めました。当初は4名の利用者でスタートしましたが、現在は6名で参加しています。皆さん楽しみながら取り組んでいます」と言います。  取れた海藻は海で洗い、施設で乾燥させてハサミでカットします。その後、石臼やミキサーで粗びきして梱包まで行います。海藻の収集から飼料化までの過程を通じて、利用者の方たちに役割意識が芽生えてきたことを感じるそうです。また、2年前に鎌倉海藻ポークの取り組みについて県知事との意見交換会が開かれた時、利用者の方が積極的に発言をしている様子を見て驚いたそうです。 〈写真〉 鎌倉薫風施設長 太田顕博さん 〈写真終わり〉  「施設を出て活動に参加し、自然と触れ合い、他の施設や多くの関係者の方々との交流を通じて、利用者の方がより意欲的に活動に取り組むようになったと感じています」と言います。  この日の海藻取りには同市内の4つの福祉施設が参加しました。浜に打ち上げられた海藻は色艶が良く弾力がありました。波の中に入り砂を洗い落とし、根元の太い茎の部分をハサミで切ります。夏の日射しを浴びながら、利用者の方も施設の方も笑顔で活動する様子が見られました。 (企画課) 〈写真〉 荒天の翌日には多くの海藻が流れ着く。取材日前日は偶然にも雨で、たくさん浜に打ち上げられた 〈写真終わり〉 鎌倉薫風 https://raphaelkai.com/kamakurakunpu.html 「福祉タイムズ」は、赤い羽根共同募金の配分を受けて発行しています バックナンバーはHPから ご意見・ご感想をお待ちしています! 【発行日】2024(令和6)年7月15日(毎月1回15日発行) 【編集・発行】社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 〒221-0825 横浜市神奈川区反町3丁目17-2 TEL 045-534-3866 【印刷】株式会社神奈川機関紙印刷所