テキストデータ作成に当たって このデータは、『福祉タイムズ』vol.843 2022年2月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。 二重山カッコは作成者注記です。 P1 福祉タイムズふくしTIMES 2022.2 vol.843 編集・発行社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 特集…P2 「顔の見える関係」をひろげてさまざまな主体との連携につなげる NEWS&TOPICS…P4~5 子ども食堂は「地域の居場所」-寒川町社協 サロン・集いの場の立ち上げに向けて 「ケアラー・ヤングケアラー支援の現状と課題解決に向けて」オンラインシンポジウム開催 県社協のひろば…P10 協働による生活困窮者自立支援事業の展開「ほっとステーション小田原」の実践から →今月の表紙 ボッチャ東京2020パラリンピック日本代表 ―木村朱里さん(藤沢市)【詳しくは12面へ】撮影:菊地信夫 P2 特集 「顔の見える関係」をひろげてさまざまな主体との連携につなげる 災害時の対応を通じて考える 分野・種別を越えた連携・協働  多様化・複雑化した生活課題やニーズが多くある現状や、地域共生社会の実現に向けた動きが各所で進められている中で、それぞれの取り組みに必要となるものに「関係機関・団体との連携・協働」が挙げられています。災害等の対応においても、連携が必要となる場面が多くあると考えられ、平時からつながりを持つことが求められています。  今号では、1月12日に開催された「災害時の連携を考えるかながわフォーラム」の講演等を踏まえながら、関係機関・団体との連携・協働のあり方について考えます。 課題やニーズの対応に求められる「つながり」  本会会員を対象に実施している「社会福祉制度・施策に関する課題把握調査」では、多様化している生活課題等に対して、分野・種別の異なる機関、また、行政や福祉に関連する分野に携わる機関・団体との連携が必要だとの意見が多く聞かれています。  令和3年度の調査では、非常時において、いかにして福祉サービスを継続していくか、また関連する制度・施策の動きはどうなっているのか、事例や情報を交換できるつながりを持ちたいという団体が多くありました。  しかし、いかにしてつながりを持つか、どのようにして関わり合うためのネットワークを構築していくか、その手法に迷い、なかなか思うような連携・協働の形を生み出せない現状があることも、調査から見えてきています。課題に対して相談できる機関、対応できる機関はどこなのか。行政ではどういったことができるのか。連携しようとする主体間で、これらを知り、整理していかなければ、つながっていくことは難しいように思われます。 〈囲み〉 政策提言活動における課題把握調査は、「社会福祉制度・施策に関する提言」にとりまとめております。 URL:http://knsyk.jp/s/global_syakyou/seisakuteigen.html 〈囲み終わり〉  この度、神奈川県と災害復興くらし応援・みんなのネットワークかながわ(通称・みんかな)の主催でオンライン開催された「災害時の連携を考えるかながわフォーラム」では、災害時における団体の連携・協働についての話を通じ、なぜ連携・協働が重要視されているのか、そして、連携・協働に至るための体制をいかにして作っていくのか、その入り口を垣間見ることができました。 それぞれの主体のできることを組み合わせて対応する  フォーラムの基調講演では、(N)全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(以下、JVOAD)事務局長の明城徹也さんが登壇し、国(内閣府)のうごきを背景に、災害時の多様な主体による連携・協働の全国的な取り組みについてお話がありました。  明城さんは、東日本大震災での教訓から、政府・行政の、いわゆる「公助」だけでは、被災者の迅速な支援が難しいことが明確になり、NPO等とボランティア、そして行政の3者による連携と、その連携を支え、調整をする中間支援組織の体制づくりが、国から明言されるようになったことを説明しました。  災害救助法等、制度等で支援策が整備されている場合でも、被災の度合いや物資等の状況、もともとその地域の持つ社会資源や、行政・自治体での整備の内容によって、支援の実現が難しい場合等があります。また、法や制度の対象になっていない、多様なニーズについては、対応しきれない部分が出てしまいます。  そうした、行政の備えだけでは対応できないことや、発災時の状況により単一の主体では対応しきれないことを、それぞれの主体のできることによって補完することで、支援を届けられるようにできるのではないかと、連携の必要性が説かれていました。  また、支援につなげるには、法や制度でできること、地域の地形や特性から考えられるできることとできないこと、どんな団体が活動でき、どのような支援活動であれば実施可能なのか。これらを事前に把握し、発災した際、どの団体がどのように動くかの整理をしなければなりません。つまり、日頃から、自分が住む、または活動拠点としている地域のことや、同じ地域で活動する団体のことについて、お互いに知っておく必要があると言えます。 P3 平時からお互いを知り非常時の円滑な連携につなげる  日頃からお互いを知るというところでは、「平時から顔の見える関係づくり」があります。開会の折、県ボランタリー活動サポート課長の池上謙吾さんが、フォーラムの一つのテーマとして、あいさつのなかで発言された言葉です。それぞれの主体の特徴を知っていくことはもちろん、「このことはあの団体に」と顔が自然と浮かぶ関係は、スムーズな連携を生むこととなります。  県内では、連携推進の取り組みとして、こうした平時からの顔合わせや、できることは何か考えていく取り組みがあります。フォーラムの後半では、3つの団体から具体的な事例発表がされました。  発表をしたのは、ひらつか市民活動センターセンター長の坂田美保子さん、横須賀市立市民活動サポートセンター館長の沼崎真奈美さん、神奈川工科大学地域連携・貢献センターセンター長の小川喜道さん。  いずれの団体も、地域の特徴や、それぞれの団体が持つ特色を生かした工夫をしながら、実際に災害が起きた際に考えられる課題について話し合うことや、地域にある避難所や備品を確認しておくといった事前にできる備えを行う等、さまざまなテーマをおいた研修会やフォーラム等を通じ、行政、地域で活動するさまざまな主体、地域住民とで顔を合わせられる機会を作っていることが報告されました。 〈囲み〉 災害時の連携を考えるかながわフォーラム概要 ■趣旨: 県内で広域災害が起きた時に備え、自治体と地域内外の多様な民間団体が連携して被災者支援活動にあたれるよう、行政、社会福祉協議会、NPO等多様な主体間の平時からの関係づくりを推進する ■日時・開催方法: 2022年1月12日(水)14:00~16:30 Zoomによるオンライン開催 ■参加者: 自治体、社会福祉協議会、市民活動支援センター、被災者支援活動に関心あるNPO・大学等 ■プログラム: ⒈ 基調講演「災害時の多様な主体による連携・協働の必要性、全国での取組紹介」 ⒉ 話題提供「県内市町村域における災害に備えた連携推進の動きについて」 ⒊ 報告「神奈川県の三者連携推進の動きについて」 ■主催:神奈川県、災害復興くらし応援・みんなのネットワークかながわ ■共催:県社会福祉協議会、県共同募金会、NPO法人神奈川災害ボランティアネットワーク 〈囲み終わり〉 テーマによらずつながれる関係を持つ  フォーラムにおいては、災害時に出てくる課題に対してどうしていくかを中心にさまざまな話題が話されましたが、重要とされたことは、災害によらない別の課題においても通ずる部分があると考えられます。  平塚市の行政と市社協とつながって連携推進の取り組みを行っている坂田さんは、今回、行政や社協とつながったきっかけは、災害ではなかったと話していました。協働で検討する課題で特に大きいものとして災害という共通項があったといいます。  また、沼崎さんは、自身が所属するセンターで実施している子ども食堂等、他の事業でつながった団体とのネットワークでも、災害時の課題について情報交換をしていきたいとし、課題やテーマによらず、団体同士の持つ関係性が連携・協働のきっかけになる可能性を示唆しています。  一方で、関係機関・団体同士がつながっていくにあたり、住民をはじめ、行政、その地域を活動拠点とする団体や企業などが、「自分にできること」を考え、興味をもち、場に参加することを促す取り組みが求められています。沼崎さんは事例発表の中で、これからの課題の中に「地域の企業や団体とのつながりをもつこと」を挙げており、災害のことを「自分事」として考えてもらえるよう、広報的な活動を進めていく必要があると話していました。  今ある課題について発信し、興味をもってもらうことも、関係をもっていくにあたり重要なことと考えられます。 ◆ ◆ ◆  フォーラムの終盤、「最終的には人と人との関係性」という言葉がありました。それぞれの役割や体制の整備をしていくことも大切ですが、そもそも、協力し合える人間関係が無ければなりません。  「平時から顔の見える関係づくりを」。その言葉の通り、普段から、自分の住む、活動の拠点となる地域で、お互い顔見知りになるための機会を作り、お互いに情報交換のできる関係を継続していくことが、連携・協働へのはじめの一歩かもしれません。 (企画課) P4 NEWS&TOPICS 子ども食堂は「地域の居場所」―寒川町社協 サロン・集いの場の立ち上げに向けて  「子ども食堂」という言葉はここ数年の間に、よく聞かれるようになりました。  子ども食堂は今、多世代の交流の場として広がりを見せています。貧困にある子どものための場所と思われがちですが、「地域の」居場所・交流拠点として大きな賑わいを生み出す場所として、皆さんが楽しく活動されています。  そうした思いを実際に活動にしていくには、越えるべき多くの課題があります。「楽しく、継続」するためにはそれなりの準備が必要になります。  寒川町社協には、令和3年度の夏にも、地域の方から子ども食堂立ち上げの相談がありました。じっくりと時間をかけ、地域の方が主体となれるような支援を心掛けて、協力しています。 〈写真〉 立ち上げ手引き(抜粋) 〈写真終わり〉  現在、寒川町では多くの子ども食堂が運営されていますが、立ち上げは、それぞれ決して順調ではありませんでした。  地域の方にお声をかけても、「そんなものはやりたくない」と断られたことも何度もあります。そのようなことを数年繰り返していましたが、ある時、以前断られた方から「始めてみたい」と連絡がありました。長い間の種まきから、少しずつ芽が出てきたのを実感しました。  多くの居場所づくりやサロンの立ち上げに関わる中でどのような準備が必要なのか、地域の関係者に向けて手引きが必要と感じていました。特に、子ども食堂の準備は想像以上に難しいものです。そこで、これまでの経験を「立ち上げ手引き」として形にしたところ、大変わかりやすく、具体的にイメージができたと好評を得ました。 居場所づくりの立ち上げ手引き  手引きは前章と大きく3つのステップに分けた構成となっています。極力文字を減らし、読みやすいことを心掛けました。 (前章)  つどいの場の効果や活動形態など、簡潔にまとめた資料編。 (ステップ1)~やりたいことの再確認~  長い活動の中で目的を見失わないように、今一度自分を見つめなおし、学習することに時間を割いたステップです。  すぐにでも始めたいところですが、ここを焦って進めると、後々に響いてきます。また、「終わってもよい」という、ボランティア活動の気楽さにも触れ、なにより自分が一番楽しむことなどを記載しました。 (ステップ2)~仲間を集めよう~  メンバー集め、役割分担、話し合いの重要性に触れています。住民の中には子ども食堂ならば協力したいという方が多くいられます。次第に関係者が増えていき、意見がまとまらなくなることがあります。無理なく楽しく活動する小さな「組織」として、具体的な方法を伝えています。 (ステップ3)~具体的な準備~  ここから始めようという方が多いのではないでしょうか。これまでのステップを越えられた時、初めて具体的な準備に入るのです。運営規約や活動計画の作成、地域への周知と物品購入、会場準備にチラシ作り等、ここまでくると一気に現実的になってきます。 活動を継続するために  子ども食堂の場合は、相談を受けてから立ち上げまでに短くても半年はかけて準備しています。今日明日にでも始められるような内容ではありません。見切り発車ではなく、長い時間をかけた準備が、これから始まる長い活動の力になると思います。  これからも寒川町社協は一緒に悩みながら、やりがいの持てる居場所づくりを支援していきます。 〈写真〉 子ども食堂の初回を終えて。皆さんいい笑顔! 〈写真終わり〉 (寒川町社会福祉協議会) P5 NEWS&TOPICS 活動の中での気づきを 広く伝えていくために―「ケアラー・ヤングケアラー支援の現状と課題解決に向けて」オンラインシンポジウム開催  昨年12月12日に、(一社)日本ケアラー連盟と(福)いきいき福祉会(藤沢市)の共催により、「ケアラー・ヤングケアラー支援の現状と課題解決に向けて」オンラインシンポジウムが開催されました。(本会後援)  このシンポジウムでは、ケアラー・ヤングケアラーの支援に関わる行政や専門家、当事者がシンポジストとして登壇し、それぞれの立場から、取り組みや事例、意見等を発表しました。  コーディネーターを務めた(福)いきいき福祉会理事長の小川泰子さんに、開催の経緯や当日の様子についてお話を伺いました。 〈囲み〉 (福)いきいき福祉会  生活協同組合が法人の設立に携わった、「市民が設立した、市民のための、市民の社会福祉法人」。  藤沢市を中心に、高齢分野の事業を行うほか、その設立経緯を大切にしながら、公益的な活動も行っている。 URL:https://www.rapport.or.jp/ 〈囲み終わり〉  小川さんは、法人でのつながりを通じ、ケアラーに関する課題を聞くことが多く、中でも外国籍の家族のいる世帯のヤングケアラーの課題について、特に気になっていたと言います。日本人に限らず、外国につながる子どもたちが直面するケアの課題についても考える必要があるのではないかと、今回のシンポジウム開催に至ったそうです。  小川さんは、開催当日の様子を話す中で、当事者の二人からのお話が、特に印象に残っているそうです。  当事者として参加した天野萌さん、シェイクフジハラ アイシャさんは、外国につながる家族のために、日本語の通訳を含めさまざまな手続きや病院等への付き添い等のケアを行っています。  ヤングケアラーの課題は、最近注目されており、子どもへの支援の動きは広まりつつありますが、外国につながる家庭の事例やそこにある課題の認知はまだ少ないのではないかと、小川さんは指摘します。 〈写真〉 配信会場の様子。「リラックスした雰囲気で各々の思いを話せた」と小川さんは当日を振り返る。 〈写真終わり〉  「ケアラー・ヤングケアラーの課題としてだけでなく、多文化共生社会に向けた課題といった側面でも、当事者たちの話が新鮮に聞こえた参加者がいたのではないかと思います。オンライン実施のおかげか、二人とも話しやすかったようで、今の思いを赤裸々に語ってくれたことも印象的でした」と、開催の手ごたえを感じていました。  今回のシンポジウムについて、現在、報告書を作成中とのことです。内容を広く発信し、課題について多くの人に知ってもらうことを目指しています。  「神奈川県及び藤沢市を含む県下の市町村も、ケアラーに関連する条例制定など、課題解決に向けて動きだしています。ですが、条例や制度を整備して終わるのではなく、どのように活用していくのかが大切だと思っています。今後もケアラー・ヤングケアラーをテーマにした研修やセミナー等を通じて、話し合える機会を続けて取り組みたいと考えています」と小川さんは次のステップを見据えています。 (企画課) P6 NEWS&TOPICS 貧困世帯、ひとり親世帯の生活課題を可視化 内閣府「令和3年 子供の生活状況調査の分析報告書」を公表  内閣府は令和3年12月に、「令和3年 子供の生活状況調査の分析報告書」を公表しました。調査は令和3年2月に、子どもの貧困対策を進める基礎資料とすることを目的に実施されたものです。  対象は、全国の中学2年生の子どもとその保護者で、現在の生活・経済状態について、子どもの貧困対策に関連する施策の利用状況、新型コロナウイルス感染症による影響等を、調査する内容となっています。  調査では、中間的な年収の半分を下回る世帯を「貧困世帯」と定義。その貧困世帯とひとり親世帯、特に母子世帯において、現在の生活状況が「苦しい」と答える割合が多く、一般の世帯を含めた全体での集計で25・3パーセントのところ、2倍程度の51・8パーセントだったと報告されています。  さらに、コロナ禍による収入の変化から、生活状況が悪化したとする世帯が多く、経済だけでなく、「気分が沈む・イライラする」等、精神的な負担に関する回答が多く見られました。  支援制度の利用についての設問では、自立支援相談窓口や母子家庭等就業・自立支援センターを利用していると答えた貧困世帯は1割未満で、利用していない理由には「利用したいが、今までこの支援制度を知らなかったから」と「利用したいが、手続がわからなかったり、利用しにくいから」と回答しています。また、ひとり親世帯では「頼れる人がいない」との回答が多くあるなど、支援が届きづらい状況が見える結果となっています。  政府では、来年度から「子ども家庭庁」が設立されるなど、子ども関連の施策に大きな動きが出ることが予測されます。また、コロナ禍の影響も引き続き考慮していく必要もあり、今後の制度・施策の動向に注目が集まっています。 (企画課) 〈囲み〉 令和3年 子供の生活状況調査の分析報告書 URL:https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/chousa/r03/pdf-index.html 〈囲み終わり〉 P7 福祉のうごき 12月24日~1月25日※新聞等掲載時点 〇引きこもり人権宣言「生活目標、強制しないで」  引きこもり経験者による民間団体「暴力的『ひきこもり支援』施設問題を考える会」は、引きこもりは命と尊厳を守る自衛行為だとして「引きこもり人権宣言」を発表した。  「支援」の名のもとに生活目標を強制しないよう求め、暴力的手法の是正を目指す。  引きこもりに関する人権宣言は国内で初めてで、1条(引きこもる権利)から7条(頼る権利)まである。同会のフェイスブックからダウンロードすることができ、自治体などで引きこもりの相談業務にあたる人たちに発信する。 〇障害者水害ハザードマップ作成済み2.6%  目が不自由な人のための音声・点字版など、障害者向けの水害ハザードマップを作成済みの自治体は16都道府県の41市区町村にとどまることが国土交通省の調査で分かった。調査に応じた1591自治体の2.6%に当たる。  豪雨災害が激甚化する中、一般向けのマップ作りは進展しているが、ノウハウ不足などから災害弱者への対応が遅れている実態が浮かんだ。 〇横須賀市 虐待で避難した大学生支援  横須賀市は、保護者から虐待を受けて避難している大学生らに対し、2022年度から生活保護と同程度の金額を支給する独自制度を設けることを明らかにした。  市によると、生活保護制度の対象外とされる大学生への自治体による支援制度は全国でも珍しいという。対象は大学等に進学後、虐待などで19歳までに自立援助ホームに避難した学生で、市児童相談所が関与した大学生。寄付金を活用した市の「よかった ありがとう」基金を財源に充て、令和4年度予算案に計上する。 〇胎児の障害や病気知ったら正しい選択肢を—NPO冊子配布  生まれる前の赤ちゃんに病気や障害の可能性を指摘された妊婦や家族を支援する(N)「親子の未来を考える会」は、当事者の気持ちを落ち着かせ、正しい選択肢を知るためのポイントをまとめた冊子を配布している。1月中旬からは新たにきょうだい、祖父母向けも登場、利用を呼び掛けている。  申し込みは、同会の相談窓口「胎児ホットライン」のホームページから。送料のみの負担となる。 URL:https://fetalhotline.fab-support.org/booklet/ 〇厚労省 医療的ケア児支援強化  厚生労働省は、たんの吸引や人口呼吸器の管理など、在宅で医療のケアを必要とする子どもへの支援を強化する方針を固めた。  主治医が緊急時に往診したり、子どもの受診状況などを学校医らと共有したりした場合に、医療機関に支払われる診療報酬の加算について対象を広げ、乳幼児から高校まで切れ目ない対応を促す。2022年4月の診療報酬改定に盛り込む。 〇厚労省 2022年度一般会計予算 1.1%増の33兆5160億円  厚生労働省の2022年度一般会計予算は、高齢化の進展に伴う社会保障関連費の伸びで過去最大を更新した。  新型コロナウイルスの感染が続く中、コロナ対策費に重点配分し、雇用対策や子育て支援も強化した。岸田政権が重点課題に掲げる看護師や介護職員らの処遇改善や、ヤングケアラーへの支援、児童虐待防止対策、災害派遣医療チームの体制強化に関する費用も計上された。 P8 私のおすすめ ◎このコーナーでは、子育てや障害、認知症・介護当事者等の目線から、普段の暮らしに役立つ「おすすめ」なものを紹介します。 障がいのある方の立ち寄り場所「ほっとすぺーす」  寒川町地域自立支援協議会では、平成25年に「ほっとすぺーす」を開設しました。障がいのある方や支援を必要としている方が外出中気軽に立ち寄れる場所として、寒川町の障がい者支援事業所等が登録しています。  「ちょっと一休み」「ちょっと手助け」してもらえる「ほっとすぺーす」。ちょっと困った時、利用してみませんか? 今月は→ 神奈川県自閉症協会(神奈川県自閉症児・者親の会連合会)がお伝えします!  1968年設立。横浜市・川崎市を除く県内11地区の自閉症児・者親の会による連合会です。行政施策の研究・提言、当事者・家族のためのミーティング運営、療育者等に向けた勉強会・セミナー運営等、自閉症児・者と家族の支援や、自閉症スペクトラムの理解を進めるための活動を各市町村及び県に向けて展開しています。 〈連絡先〉Mail: info-kas@kas-yamabiko.jpn.org URL: http://kas-yamabiko.jpn.org/  寒川町には町内数カ所に「ほっとすぺーす」があります。障がいのある方や支援を必要としている方がちょっと立ち寄って話をしたり、相談したり、休憩したり、トイレを借りたりできる場所です。  支援を必要としている方が気軽に立ち寄り「ほっと」できる場所が地域にあったら・・という意見をもとに寒川町地域自立支援協議会が検討を重ね、町内の障がい者支援事業所等に協力をお願いし開設されました。 〈写真〉 「ほっとすぺーす」の案内シート 〈写真終わり〉  登録事業所は入口に「ほっとすぺーす」の案内表示をしています。利用できる内容は「休憩(15分程度)」、「トイレ」、「相談支援事業所の場所や近隣の案内」、「休憩や食事場所の提供(30分程度)」、「相談や傾聴」などです。事業所によって利用できる内容は若干異なりますが、入口の案内シートに表示されています。  利用するための登録や手続きは、特に必要ありません。利用したい時に気軽に立ち寄って、職員の方に「ほっとすぺーすを利用します。ちょっと休ませてください」などと伝えて利用します。登録事業所の情報は寒川町地域自立支援協議会が作成した「さむかわ障がい福祉マップ」(寒川町のホームページからダウンロード可)にも掲載されています。  「『ほっとすぺーす』では、町内の福祉事業所の手作り品も展示しています。時折、『これ、かわいいわね。どこで買えるの?』なんて声をかけてくれる方がいます。障がいのある方の利用だけでなく、誰もが、障がいについてちょっとした情報をもらえる場所となっています」と寒川町社協から声が寄せられました。 〈写真〉 寒川町社協も「ほっとすぺーす」に登録しており、案内シートはボランティアグループの手作りぬいぐるみとセット 〈写真終わり〉  また、別の登録事業所からは、「精神障がいの方が、不安定な時に立ち寄られました。水分補給をして、しばらくお話をされると落ち着かれ、帰っていかれました。同様の利用をされている方が増えていると感じます」という声も聞かれています。  「ほっとすぺーす」で話を聞いてもらうことで心が軽くなったり、何気ない会話から本人が抱えている課題が掘り起こされ、関係機関につながるきっかけにもなっています。  また、障がいのある方がヘルパーさんと外出中に休憩やトイレに利用でき、地域で「ほっと」できる場所です。  障がいのある方や支援を必要としている方が地域で安心して暮らせるように、「ほっとすぺーす」のような場所がほかの地域でも増えることを願っています。  外出中に、ちょっと困った時、安心して立ち寄れる「ほっとスペース」を利用してみませんか。 ※現在、新型コロナウィルス感染予防のため、事業所によっては利用を制限している場合があります。 P9 あなたの職場 社会福祉施設等で働く福祉従事者から、今の仕事のやりがい、実際の業務のしやすさや職場で魅力的に感じること等を聞き、「働きやすさ」につながるポイントを発見していくコーナーです。 手厚い福利厚生で、職員を笑顔に ―(福)進和学園(平塚市)での取り組み  施設現場で職員自身が直面する悩みや課題に対して、それぞれの施設の特色を生かした取り組みがあり、その土台には、法人が整備する福利厚生などの制度があります。  今回お話をうかがった(福)進和学園では、福利厚生の仕組みのひとつとして「職員互助会」があるといいます。この仕組みについて、総務の東方さんにお話しをうかがいました。 福利厚生の一環として機能する「職員互助会」  「互助会」は基本的に法人に所属する職員が加入する制度です。加入によってできることは大きく2つ。傷害保険、ボランティア保険等への加入と、休業補償が受けられることです。  保険については、仕事中だけでなく、旅行先での事故や家庭での怪我等、プライベートで起きたことも、24時間365日対象とするものになっています。  また、休業補償は、傷病や出産で休む時に、法律上では健康保険の範囲で給与の3分の2までが支給されますが、残りの3分の1を互助会から支給するといった、給与を補填する仕組みです。  この2つによって「職員が安心して働けるようになっているのではないか」と東方さんは言います。たとえ原因が仕事でなくても、怪我をしたことで仕事に支障がでることもあります。休業も、本人の働きたいという気持ちに反して休む必要が出てしまう可能性もあります。一般的にある規程や制度では十分に賄えないケースや職員が不安に思うであろう部分を補うことで、互助会の仕組みが福利厚生の一環として機能しているとのことです。 職員が安心して働いていける環境に向けて  職員がより良いコンディションで勤務することは、サービスの質の向上につながります。進和学園には、互助会以外に人間ドック健診費用の助成(上限5万円)、誕生日休暇、柔軟な時短制度(6H・7H)、繰越特別休暇等、心身共に健康に保つための機会を職員が持てるような工夫がありました。「福利厚生活動を通して、職員の健康を支援することは大事なことだと考えます」と言います。利用者ご本人が笑顔で過ごすためには、職員自身も笑顔で働けるようにならなければなりません。そのために、職員が安心できる環境を作っていくことが重要になります。そのような取り組みから「かながわ子育て応援団」の認証も受けています。 ◇ ◇ ◇  互助会の仕組みは、法人の歴史のなかで創意工夫して作られたものだと言います。現在では、継続した運用のための予算確保や、保障を利用する機会のない職員への配慮など課題もあり、よりよい形で仕組みが運用できるよう、試行錯誤が続いているそうです。職員の安心と笑顔が利用者ご本人の笑顔につながるように考えていくことも「働きやすさ」の要素の一つかもしれません。 (企画課) P10 県社協のひろば 協働による生活困窮者自立支援事業の展開 「ほっとステーション小田原」の実践から  本会では、県から町村部の生活困窮者自立支援事業を受託して、横浜・小田原を拠点に「ほっとステーション」として、事業を展開しています。ほっとステーション小田原(以下、小田原事務所)は、足柄上郡・下郡の8町をエリアに相談支援事業を行っています。  一昨年からの新型コロナ感染拡大の影響で、全国的に生活困窮者世帯が増加していますが、小田原事務所でも新規相談件数が急増し、それぞれの状況に即した支援を、地域の相談支援機関・団体等との協働により進めています。 報徳食品支援センターとの協働  生活困窮相談では、今日明日の食べ物もない、緊急を要するケースが多々あります。こうした中、フードバンクとの連携・協働は大変重要となっています。  (N)報徳食品支援センター(田嶋亨理事長)(以下センター)は小田原市内に拠点を置き、西湘地区エリアを中心に、経済的に厳しい方々への食糧支援を目的に活動しています。センター副理事長の本岡さんは、「一般的に食糧支援は災害時の備蓄品や消費期限の近い食糧でよいと思われがちだが、生活困窮者にこそ栄養や健康を考えた食糧が必要」と、質の高い食糧提供の必要性を訴えます。令和2年度は「食生活を豊かに、お弁当にもう一品」とうたい、冷凍野菜等を加えた食糧支援の実施と、そのために中央共同募金会の助成を受け、冷凍庫を導入しました。この食糧支援の展開について相談を受けた小田原事務所は、周辺エリアの行政や社協等に働きかけ、センターとの協働につなげていきました。 〈写真〉 フードパントリーの様子 〈写真終わり〉  食糧支援は一時的、緊急的な支援ではありますが、これをきっかけに必要な支援に導くこともできます。冷凍庫を設置した地域では、支援ツールの一つとしての食糧支援の意味と、困窮状態の中でも温かい食卓があることの意味を関係者間で共有しながら、活動を進めています。 箱根町社協との協働  箱根町社協(以下町社協)は、生活福祉資金総合支援資金特例貸付などを通して、小田原事務所と日頃から連携をとっています。  町社協では、令和2年の地域福祉活動計画の改定を契機に「総合相談・支援の仕組みづくり」に力を入れ、全職員が担当業務に関係なく2人体制で担当地区をもち、地域課題の把握に努めています。また、課題に対応した取り組みを住民と一緒につくる事業を「もっともっと事業」と名付け、展開しています。  毎月1回の全職員での会議(きらり会)では日常業務を通して感じている課題を共有し、事業化に向けて議論しており、小田原事務所からも職員が参加しています。この中で、町の地域特性の一つとして、町の観光産業を支える外国人労働者が多いこと、その人たちと地域との接点がない現状から、まず外国人同士のつながりをつくり、そこから地域との関係性をつくっていく必要性が焦点化されました。特に生活福祉資金の貸付を通してネパールの人たちが急増している状況が把握され、取り組むことになったのが、町在住のネパールの人たちの「ラリグラスの会」です。  「ラリグラス」はネパールの国花。活動の中心になる人づくり・つながりの第一歩として、現在、ネパールカレーを食べる会を3月開催で計画しており、報徳食品支援センターからの協力も得られる予定です。コロナ禍で参加者の制限、会場確保等の課題も多いですが、当事者や町関係者・住民からも期待は大きく、将来を見据えたつながりづくり、地域づくりへの事業展開が期待されます。 *   *   *  生活困窮者自立支援制度は、個別支援を通して地域づくりを進める、という理念のもと事業展開をするいわば地域福祉推進事業ともいえます。本会では、本事業を通し社協や関係機関団体との連携をより一層強化し、地域づくり、総合相談支援の仕組みづくりに寄与していきます。(地域課) P11 県社協のひろば 関係機関・団体主催の催し (福)横浜いのちの電話春の映画会「カツベン!」  ボランティアによる電話相談活動を行っている(福)横浜いのちの電話の活動を支えるため、映画会を開催します。 ◇日時=3月10日(木)開場時間:1回目10:30、2回目14:00、3回目18:00 ◇場所=戸塚区民文化センターさくらプラザホール(横浜市戸塚区戸塚町16-17 戸塚区総合庁舎内) ◇内容=映画に音がなかった時代に活躍した「活動弁士」を取り巻く物語を描いた「カツベン!」を上映します。当日は、支援会手作り品のバザーも開催予定です。 ◇費用=チケット前売り券 1,000円、当日券 1,200円 (全席自由) ◇申込方法=問合先にて申込み ◇問合先=(福)横浜いのちの電話事務局 ☎045-333-6163(月~金 9:00~17:00) URL:https://www.yind.jp/index.html 寄附金品ありがとうございました 【交通遺児援護基金】(株)エスホケン 【子ども福祉基金】脇隆志、ドリーム財団、生活協同組合ユーコープ、(株)エスホケン 【ともしび基金】ドリーム財団、よねの湯、十愛病院 (匿名を含め、合計18件 99,737円) 【寄附物品】(株)SLCreations、東亜建設工業(株)横浜支店、明治安田生命保険相互会社総合法人第五部 【ライフサポート事業】 〈寄附物品〉 (N)セカンド・ハーベストジャパン、(公社)フードバンクかながわ(いずれも順不同、敬称略) 【お詫び】本紙1月号にて紹介いたしました寄附者で、社名に誤りがありました。お詫びいたしますとともに、下記の通り訂正をいたします。 〈寄附物品〉 【誤】HOLUNDONA(株) 代表取締役 和田美香 【正】HOLUDONA(株) 代表取締役 和田美香 福祉タイムズの感想をお寄せください!  お寄せいただいたご感想・ご意見は、紙面作成の参考とさせていただきます。ぜひ、お聞かせください。 ◇問合先=企画課  ☎045-534-3866 Mail:kikaku@knsyk.jp ホームページ、Twitterでも、本会事業等に関する情報を掲載しております! ◆ホームページ URL:http://www.knsyk.jp/ ◆Twitter URL:https://twitter.com/kanagawa_syakyo P12 かながわほっと情報 ボッチャの楽しさを多くの人に パラリンピック日本代表 木村朱里さん(藤沢市)  不思議な軌道の中、球を弾いたり、近寄せたり―。昨年のパラリンピックでも盛り上がりを見せた競技「ボッチャ」。藤沢市に「ボッチャ」に汗を流す方がいるとお聞きし、お話しを伺いました。その方は木村朱里さん。昨年のパラリンピック日本代表です。  木村さんは幼い頃に脊髄性筋委縮症を発症し、その後、車椅子利用の生活を送ることになりました。大学卒業後、藤沢市の職場に入社し、現在は働きながら練習を続けています。  木村さんがボッチャと出会ったのは2017年、知人の紹介で体験会に参加して「これだったら出来るのではないか」と直感したそうです。その後、2019年日本選手権出場、ドバイ世界大会個人10位、2020年パラリンピック日本代表と目覚ましい成長を遂げました。  3年でトップ選手になれた秘訣をお聞きすると「運がよかったんです」と謙遜して言われます。普段は、自分で会場を予約して、一人で練習をするそうです。自宅では練習しないとのことで、チームへの所属や、コーチがいるわけでもないことに驚きました。黙々と投球の反復練習をしたり、筋トレをしたり、他の選手の試合をネットで見ながら戦略を練るそうです。  この競技の面白みは、重度の障害があっても、子どもでも大人でも、皆で楽しめるスポーツであることで、最近、地域でも盛んに行われるようになって来ていることがうれしいと言います。 〈写真〉 試合中の木村さん 〈写真終わり〉 チャレンジするための心構え  木村さんは、ボッチャ以外にも中学生の頃から吹奏学部でクラリネットを吹いたり、就職してからは楽団に参加したり、セーリングの経験もあるそうです。  障害がある人へのメッセージとして「自分が興味を持ったことは、尻込みしないでやっていくことが大切」と言います。それでも、チャレンジ出来ない人へは「出来ないと思ったところから、今何が出来るかを考えることが大事。やってみたら出来た、ということもある。先ずはとっかかりでもいいので、出来る方法を探してみるのがいい」とアドバイスをいただきました。  さまざまなことに、ひたむきにチャレンジする木村さん。  これからの活躍に期待して、私たちも応援していきたいと思いました。 (企画課) 〈コラム〉  ヨーロッパで生まれたボッチャは、重度脳性マヒ者もしくは同程度の四肢重度機能障害者のために考案されたスポーツ。ジャックボールと呼ばれる白いボールに、赤・青のそれぞれ6球ずつのボールを投げたり、転がしたりして、いかに近づけるかを競います。 〈コラム終わり〉 「福祉タイムズ」は、赤い羽根共同募金の配分を受けて発行しています ご意見・ご感想をお待ちしています! バックナンバーはHPから 【発行日】2022(令和4)年2月15日(毎月1回15日発行) 【編集発行人】新井隆 【発行所】社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 〒221-0825 横浜市神奈川区反町3丁目17-2 ☎045-534-3866 FAX045-312-6302 Mail:kikaku@knsyk.jp 【印刷所】株式会社神奈川機関紙印刷所