テキストデータ作成に当たって このデータは、『福祉タイムズ』vol.840 2021年11月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。 二重山カッコは作成者注記です。 P1 福祉タイムズふくしTIMES 2021.11 vol.840 編集・発行社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 特集…P2 介護職員が働き続けることのできる職場となるために NEWS&TOPICS…P4~5 子どもを守り、豊かに育むために―全社協「社会的養護関係施設が担う役割・機能に関する検討会」報告書公開 介護職員の思いを受け止め寄り添う―(公社)神奈川県介護福祉士会「介護職110番」 県社協のひろば…P10 災害時に「逃げる」とは―第2種第3種連絡会主催会員向け研修会が開かれる →今月の表紙 社会復帰への一歩、背中を押して、支える―認定NPO法人神奈川県就労支援事業者機構事務局長 竹内政昭さん【詳しくは12面へ】撮影:菊地信夫 P2 特集 介護職員が働き続けることのできる職場となるために  介護労働安定センターの調査で、令和元年10月1日から令和2年9月30日までの1年未満の介護職員(訪問系除く)の離職率は38.3%。うち正規職員の離職割合は33.6%であることがわかりました。  10人に4人近くが1年以内に辞めてしまうというデータからは、OJTリーダーをはじめとする熟練職員の疲弊、非熟練職員による事故(ヒヤリハット含む)、派遣や有料職業紹介利用による人材獲得にかかる経費の高騰等、職場への大きな影響があります。今回は介護職員の定着に向けた取り組みから人材確保・育成のあり方について考えていきます。 新入職員1人に専任指導者1人 勤務シフトは柔軟に  横浜市港北区にある介護老人保健施設「ウェルケア新吉田」。5年ほど前まで、人手が足りなくなると有料職業紹介や人材派遣に依頼することが常態化していました。  そこで採用方法を見直し、福祉人材センターやハローワークへの求人掲載の内容を見直すとともに、業務の切り分けに着目し、介護職員が専門職として働きやすい環境を整えるため、介護助手の導入や食事介助・入浴介助専門のパート職員を独自に雇い入れることにしました。  また、指導者がシフトによって日々交代してしまうことで、新規採用職員の不安や混乱を招き、早期離職につながってしまうケースがあったことから、職員の定着に向けて、新規採用職員に専任の指導者を1対1で配置。指導者には夜勤を免除して新規採用職員と同じシフトを組むこととし、新規の職員が職場に馴染むことを最優先にしました。「初めて職場に入って誰に聞けばいいのかわからないというのが、新人の一番の不安だと思います。まして、聞いた相手によって対応方法が異なったら混乱してしまう。だから尋ねられる人を固定することが大事」と人事部長の坂本さんは話します。  加えて、「欠員補充といっても、採用担当の目だけで決定するとミスマッチにつながる。今足りないのはどのフロアか、採用後の具体的なポジションはどこかを確認し、一緒に働くスタッフとの相性なども想像しながら採用面接に臨むことにしています」と語ります。  入浴専門パート職員が遠方の実家での介護のため、月に半分の就労を希望した際は、他の職員の理解のもと、シフトを調整し、当該職員は仕事を続けています。「原則として働いている職員の申し出を断らない。人が長く働き続けるための環境整備は組織の長期展望上、必要なこと」と語る坂本さん。その成果は離職率の低下と専任パートの充足状態という結果に結びつきました。 育児休業からの復帰率100% まずは家族ファーストで!  厚生労働省が令和元年度に行った調査(「令和3年度版厚生労働白書」厚生労働省)によれば、全産業での育児休業の取得率は83%となっていますが、「介護現場では妊娠を機会に退職するしかないのか」「育児休業明け、育児と介護の仕事は両立できるのか」等といった心配をする求職者の相談が、かながわ福祉人材センターの窓口に寄せられることがあります。  そこで、育児休業を取得した人の復帰率が100%の、介護老人福祉施設「芭蕉苑」(藤沢市)を訪ねました。  妊娠中は直接介護ではなく、フロア全体の目配りを当該職員に充て、出産後については「正規職員から短時間勤務のパート職員になりたい」「一度辞めて子育てが落ち着いたら復職したい」など、職員が自分のライフプランを尊重し、多様な働き方を選んでいる現状があります。 〈写真〉 子育て中の介護職員、活躍しています! 〈写真終わり〉  育児休業を利用して、さまざまな雇用形態で働いている職員4人の方から「親業だけでなく、仕事をする自分も大事」「職場と家庭、2つの場所があることで気持ちの切り替えができている」「働く姿を見ている子どもが、思いやりのある子に成長していると実感している」など、生の声をいただきました。みなさんが声を揃えて話してくださったのは「保育園からお迎え要請の電話があったとき、周りの人が『ここは任せて早く帰りなさい』って言ってくれる。『お互い様だよ』と」。この言葉からは安心して働くことのできる職場の雰囲気が感じられます。  「就業規則は法令以上の内容を組み込んでいるわけではありませんが、未就学児がいる家庭の職員は残業を免除されますし、自己申請により夜勤も免除可能です」と介護部長の吉野さんは言います。この職場風土は、昭和61年の開設当初から徐々に作られていったものでした。当時はシングルマザーの職員が多く、「困ったときはお互い様」と声をかけあっていたと吉野さんは振り返ります。その風土が根付き続けているのは施設長の捧さん自らが職員に「家庭第一だよ」と声をかけているからかもしれません。  芭蕉苑の運営法人の理念には「未来に対して責任を持ち〝環境〟に配慮します」とあります。これは未来につながる子どもを育てる職員の働く環境を整えるとも解釈されます。〝環境〟とは、就業規程整備だけで成り立つものではなく、そこで働く人同士によって成立するのです。 P3 多国籍の職員とともに利用者を支える  外国籍の介護職員を雇い入れている介護施設は県内で37・2%(「令和2年度社会福祉施設等の人材確保に関する需要調査」本会)で、平成30年度需要調査の2・4倍になっています。さらに「今後雇用検討中」と回答している法人・施設は14・5%あり、相当数の外国籍の人たちが介護現場で働く時代は遠くないようです。  介護老人福祉施設「レジデンシャル常盤台」(横浜市保土ヶ谷区)では現在約40名、11カ国の人たちが介護職員として働いています。この施設で外国籍の人を初めて採用したのは10年前、カンボジア国籍のメアス・ペンさんでした。  ペンさんは勤め始めたころ、日本語を書くことはもちろん、話すことも拙い状況でした。ある時、「ミスター・ペン」と、ひとりの利用者がペンさんに向かって話かけました。その光景を見て、高橋施設長をはじめ、周囲の職員も、介護の原点は笑顔だと気付かされたと言います。  言語や技術の修得も必要ですが、基本はコミュニケーション。ペンさんは言葉に拠らないコミュニケーションで「あなたを大事に思っています」というメッセージを利用者に伝えていたのです。  ペンさんの雇用を契機に、施設では外国籍の採用を進めていきました。同時に研修体制も整備。採用後は、17日間の研修によって、日本語のほか、日本の文化や風習などを学べるようにしました。参加した職員には研修手当が支給される仕組みも用意しました。現在、介護福祉士の資格取得を目指しているペンさんは、ほかの外国籍の職員の異国で働く不安に寄り添い、相談に乗る役目も果たしています。 〈写真〉 頼もしいリーダー「Mr.ペン」 〈写真終わり〉  高橋施設長は、ペンさんから外国籍の人がその職場に定着するために必要なヒントをもらっていました。「外国籍の方たちは自分の生まれ育った国にプライドを持っています。ですから、その〝お国自慢〟の機会を設けることは大事だと思います。自身のアイデンティティが尊重されたと感じられれば、心地よく働くことのできる職場になるのではないでしょうか」。  レジデンシャル常盤台ではコロナ禍の今年も、それぞれの職員が自国の料理や文化を披露する文化交流会を開催したといいます。 一人ひとりの働きやすさ、居心地の良さを大事に  今回取材させていただいた3つの施設に共通していることは、定着のための取り組みが、単なる離職防止策なのではなく、いかに「その職員」個々人に寄り添おうとする志向を持つ組織か、ということです。  職場にはさまざまな事情を抱える職員がおり、その事情に目を向けない組織に人は留まらないでしょう。それぞれの立場を配慮し、「ひと」としての思いやりを持つ職場風土。それこそが定着、人材育成につながる基本的な対策なのかもしれません。 (かながわ福祉人材センター) P4 NEWS&TOPICS 子どもを守り、豊かに育むために―全社協「社会的養護関係施設が担う役割・機能に関する検討会」報告書公開  全社協は9月、「社会的養護関係施設が担う役割・機能に関する検討会」における報告書を公開しました。これは、全社協の政策委員会において、テーマ別検討会のひとつとして設置されたものです。  社会的養護関係施設とは、乳児院や児童養護施設等をさし、養育に大きな困難を抱える家庭やその児童を支援する取り組みを主な役割としています。  報告書には、国が進める「新しい社会的養育ビジョン(平成29年8月)」や都道府県社会的養育推進計画等を背景に、今後、社会的養護関係施設が具体的にどのような取り組みをしていくのか、現状や課題のほか、検討によって提言された「今後の社会的養護の取り組みの方向性」を、8つのポイントで掲載。福祉実践の場からの提言として、法改正や財政支援、制度改革等が実現されることを目指してとりまとめています。  来年度に予定されている児童福祉法の改正に向けた課題提起も含まれており、今後の取り組みへの指針となっています。 (企画課) 〈囲み〉 今後の社会的養護の取り組みの方向性 1.社会福祉法人として高機能化・多機能化の推進 2.子どもの育ちの継続性の確保 3.専門職の確保と職員配置・処遇の改善 4.子どもの権利擁護と社会的養育関係施設等の質の向上 5.市町村の子ども家庭福祉機能の強化と児童相談所等との連携 6.社会的養護関係施設体系の横断的・総合的な見直し 7.自立支援の強化 8.公的財源の確保 〈囲み終わり〉 【寄稿・報告書に寄せて】 どこに課題の深化が見られるだろうか (福)旭児童ホーム(横浜市旭区)理事長 伊達直利さん  平成28年の児童福祉法改正以降、多くの「報告書」がまとめられてきたが、ほとんどは混迷著しいわが国の社会的養護に、有効な方向性を示し得ないままになっていたのではないだろうか。この点で、本報告書はいくつか新たな切り口を示そうとしているので、そのことにふれてみたい。  まず一つめ。この検討会の名称からも判るようにこれまで種別分類されてきた児童福祉施設(入所施設)を、それぞれの施設が持っている機能を社会的養護という全体の括りの中で捉え直し、「社会的養護を担うための役割と機能」という視点から再構成しようとしている点である。「種別」というものを成り立たせてきた前提そのものが大きく変質している今日、むしろ遅まきながらといわざるを得ないが、評価されるべき視点である。  二つめは「取り組みの方向性」の1に書かれている推進主体の捉え方である。都道府県社会的養育推進計画における「高機能化・多機能化・小規模地域分散化」などを施設事業として担わせるのでなく、施設の運営主体たる社会福祉法人に求めることを明確にした点である。種別施設は児童福祉法に規定されるが、運営主体の社会福祉法人は社会福祉法(以前は社会福祉事業法)で規定されている。  三つめは、「取り組みの方向性」の6にまとめられた「施設体系の横断的・総合的な見直し」である。「種別」として成り立ってきたそれぞれの施設が、はたして既存の枠組みを抜け出して社会的養護という全体の中の部分として役割や機能を果たし得るのか。言うは易し行うは難しであろうが、大切なポイントである。ここでは課題を「横断的」と「総合的」としているが、さらに「重層的」という言葉も入れておくべきであった。  報告書には、8点の方向性だけでなく、Ⅲとして「次期の児童福祉法改正にむけて~課題提起」もまとめられている。次期改正に求められるものは、簡略すれば「最低基準」で済まされてきた「基準」の概念を、児童の権利条約でうたわれている「最善の利益」に切り替えられるかどうか、そのことであるはずだ。虐待をはじめ困難な状況を生き抜いてきた子どもたちを受け止め切れる社会的養護を、今度こそ実現しなければならない。  社会的養護を担う現場の強い覚悟が必要とされるだろう。 P5 NEWS&TOPICS 介護職員の思いを受け止め寄り添う―(公社)神奈川県介護福祉士会「介護職110番」  介護職員は、利用者の尊厳を守り、その人らしい暮らしを支える専門職として、特別養護老人ホームなどの福祉施設や訪問介護などの現場で活躍しています。  令和2年度の介護労働実態調査(介護労働安定センター)によると、介護職員の「仕事の内容・やりがい」の満足度は、46・9%でした。一方、悩みや不安についての設問では、「身体的負担が大きい」「自分と合わない上司がいる」「利用者に適切なケアができているか不安がある」の回答が多くなっており、仕事にやりがいを感じながらも、悩みを抱えつつ働く姿が浮かび上がります。  そのような介護職員を支えるため、神奈川県介護福祉士会(以下、介護福祉士会)では、「介護職110番」を実施しています。 〈写真〉 「介護職110番」事業を担当する内田副会長 〈写真終わり〉 相談内容の変化  「介護職110番」は、現在のように情報の入手や共有が簡単ではなかった平成15年度より、介護職員のための相談、助言事業として開始しました。当初は、「どうやったら介護福祉士になれるのか?」という資格取得に関するものや基本的な介護の知識・技術、日々の課題の解決・改善のきっかけを見つけるための相談が多かったそうです。  開始からもうじき20年近くが経ちますが、最近では、「自身のメンタルに関すること」「不適切なケア」「職員に対する事業者側の不誠実な対応」などの悩みについての相談が増加傾向にあります。さらに、「最近の相談では、『上司や同僚と相談したのだろうか』と感じるケースが増えています。職場内でのコミュニケーションに質・量ともに課題があるように思えます」と介護福祉士会副会長の内田竹伸さんは言います。  介護保険制度施行から20年以上がたち、介護の仕事の専門性が社会から認知され、「感覚・感情」による介護から根拠に基づく科学的介護への移行も進んでいます。また、介護職員の労働条件などについて、特定処遇改善加算などの国の制度により改善がみられています。 〈棒グラフ〉 相談件数の推移(本会作成) 〈棒グラフ終わり〉  しかし、利用者の増加、人材確保の困難さの中で、制度や社会、利用者から求められることが増加傾向にあり、「職場で相談できない」「忙しい、余裕がない」などの閉塞感、「介護職員だから当たり前」という事業所や利用者からの過剰な期待に悩む様子が、相談から見えるそうです。介護福祉士として回答できる範囲を超える相談も少なくなく、専門機関を紹介することも増えています。 介護職員に寄り添って  現在、「介護職110番」への相談には折り返しの対応としていますが、今後は、すぐに対応できるように相談日を設定するなど、事業の強化を検討しています。また、相談から見えた介護現場の課題について、行政とも共有し、協働して現場への支援につなげられるようにしていきたいと考えているそうです。  「相談者の気持ちを受け止めて、共感し寄り添えるのは、介護サービスに関わっている現役の介護福祉士が相談をしている当会の強みです。答えを出すのは相談者自身ですが、気づいていない選択肢を一緒に考えていきたい」と、相談を受けるにあたって大事にしている思いを熱く語る内田さん。専門職の悩みに寄り添う介護福祉士会の取り組みが期待されます。 (企画課) 神奈川県介護福祉士会 URL:http://www.kanagawa-accw.org/ 〈棒グラフ〉 令和元年と2年度の相談内容(本会作成) 〈棒グラフ終わり〉 P6 NEWS&TOPICS 児童養護施設退所者への支援、年齢制限の撤廃を検討  児童福祉法の改正に向けて議論を行う、社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会(以下、委員会)が、10月5日に開かれました。このなかで、厚生労働省は、児童養護施設を退所した子どもの自立支援について、22歳までとなっている年齢制限を撤廃する方針を示しました。  現状の制度では、児童養護施設は1歳から18歳未満の子どもが入所対象者となりますが、18歳以上の子どもでも20歳まで施設の利用を継続できる入所措置の他、20歳から22歳までの間は社会的養護自立支援事業で住居費や生活費の支給を受けることができるようになっています。  この社会的養護自立支援事業は、平成29年から開始されていますが、22歳までとする年齢制限の法的な根拠はないとされています。 子どもの置かれた状況によっては、住居の確保や適切な支援機関へつなげること等、22歳を過ぎても引き続き支援を必要とすることも多く、機械的に支援を打ち切ってしまうこの制限について、改善を求める声が上がっていました。  見直し案では、措置延長の期間を終えた20歳以降から児童自立生活援助事業で退所後に自立するまでの支援を行い、支援の期間から年齢制限は撤廃。子どもの状況に応じて、都道府県が必要と判断した時点まで、自立に向けた支援を継続していくこととしています。  厚生労働省が4月に公表した「児童養護施設等を退所した子ども・若者の実態把握調査」の結果からも、施設を退所した後の子どもには、生活費や住居など、生活に関する悩みを抱えていることがわかっています。  委員会では、年齢制限の撤廃の他にも、退所後の支援制度や体制について、環境を整えていくための検討が行われ、今後、課題に向けた取り組みにうごきが見られそうです。(企画課) 〈囲み〉 本紙令和3年6月号では「児童養護施設等を退所した子ども・若者の実態把握調査」について、概要を掲載しています。 URL:http://knsyk.jp/c/times/ 〈囲み終わり〉 P7 福祉のうごき 9月26日~10月25日※新聞等掲載時点 ●「心のケア」の取り組みに向け人材育成へ  厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染拡大で、不安やストレスを抱えている人に対し、各地域で「心のケア」にあたる人材を育成する事業を10月からはじめた。  専門知識を持った人材を研修で育て、地域の相談体制充実につなげる。自治体や団体から推薦された精神保健福祉士や保健師等約350人が全国研修を受講、その後、全国研修の受講者が指導者役となって各都道府県等で研修を実施する。  厚生労働省は「コロナの感染流行による心の不調は深刻だ。地域住民の相談にきめ細かく対応できるよう体制を整えていきたい」と話している。 ●愛川町 リボンをつけて偏見のないまちを  新型コロナウイルスにおける偏見や差別をなくし、暮らしやすいまちづくりを進めようと、愛川町社協は、啓発活動「シトラスリボンプロジェクト」の取り組を開始した。  同プロジェクトは、昨年から愛媛県の有志が始めたもので、愛媛特産の柑橘にちなみシトラス色のリボンやロゴを身につけ、コロナ感染者やエッセンシャルワーカなどへの差別や偏見をなくす取り組み。  町社協はボランティアが作成したリボンを配布している。 ●川崎市 ふるさと納税の返礼品として「くらし見守りサービス」を提供  川崎市がふるさと納税の返礼品として、1人暮らし高齢者などの「くらし見守りサービス」を提供している。  同サービスは東京ガスが運営しているもので、家の中にセンサーを設置して、高齢者が普段通り生活していることが離れた家族などに分かる仕組み。7万円の寄付で1年間のサービスが受けられる。  市は、「ふるさと納税は、『地域課題解決型返礼品』としてなど、寄附金の使い道も指定できる。福祉への活用も考えてもらえれば」と呼び掛けている。 ●災害時「福祉避難所に直行」1割にとどまる  介助が必要な高齢者ら要配慮者向けに開設する福祉避難所について、自宅から直接避難する仕組みを整えているのは、全国の政令市と東京23区の1割強にとどまることが分かった。大半が一般の避難所に入った高齢者らの中から、自治体が介助の必要性などを判断して移送する方法をとっていた。  直接避難には、「仕組み作りには高いハードルがある」「福祉避難所の安全が確認できない中では、直接避難にもリスクはある」といった意見もあり、仕組みの整備は遅れている。 ●横浜市青葉区「あったか言葉」スタンプを制作  「たまには、休んで!」「ゆっくりいこ~」。  マスコットキャラクターがこんな風に呼びかけるLINEスタンプを、横浜市青葉区の市立山内小学校の子どもたちが作った。  やさしいことばを掛け合うことがいじめ防止につながると考え、保護者らが企画し、子どもたちに「あったか言葉」と絵を募集して制作した。  LINEのスタンプショップで購入できる。(1セット120円税込み)売り上げは寄付する予定で、寄付先は子どもたちが今後考えるという。 ●平塚市 障害者の在宅就労支援でテレワーク推進  障害者の自立した生活につながる就労の機会を増やそうと、平塚市は障害者のテレワーク推進に取り組む。ノウハウを持つ民間事業者D&Iと協定を結んだ。同社は同様の協定を県外の4市ともむすんでおり、就労につなげた事例もあるという。  平塚市は昨年2月に「障がい者福祉計画」を策定し、障害者が地域で自立した生活を送れる社会づくりを目指している。落合克宏市長は「テレワークで就労機会を増やし、共生社会の実現に近づけていきたい」と話している。 P8 私のおすすめ ◎このコーナーでは、子育てや障害、認知症・介護当事者等の目線から、普段の暮らしに役立つ「おすすめ」なものを紹介します。 認知症の人たちが周囲の考えを変えた!~認知症デイサービス「はまなす」  京浜東北線本郷台駅から歩いて約8分。小菅ケ谷地域ケアプラザの中に、認知症と診断された人たちが通うデイサービスである認知症対応型通所介護「はまなす」があります。開所当時は「あそこに行ったら終わり」など、心ないことを言われることがありましたが、認知症の人たちが掃除をしたり、下膳したり、街頭募金に立つなど活躍する姿に「あの部屋の人たちはいつも楽しそう」と言う声が聞かれるようになりました。認知症のイメージが変わったのです。  認知症のご本人が生き生きと過ごせる認知症デイサービスを利用してみませんか。 今月は→認知症の人と家族の会 神奈川支部がお伝えします! 認知症の人と家族の会は1980年に、神奈川県支部は1981年に発足。以来今日まで、介護家族の集い、電話相談、会報の発行、啓蒙活動、調査研究、行政への要望などを行ってきました。 〈連絡先〉※8月より事務所が移転しました 横浜市神奈川区反町3-17-2神奈川県社会福祉センター5F ☎045-548-8061 FAX045-548-8068 URL:https://azkanagawa.sakura.ne.jp/wp/ 認知症は第2の人生の始まり  認知症と診断されると、本人も家族も一度は落胆します。「ダメになった人」と烙印を押されたように感じて、閉じこもりがちになります。確かに、認知症になると今までできていたことができなくなり、1人で日常生活を遂行することが難しくなります。でも、新たな「その人らしさ」が生まれるきっかけでもあると思います。  本人の家族からは、「厳しい義母でしたが、認知症になってから仲良くなりました」「仕事一筋だった主人が『ありがとう』と言うようになりました」などの声が聞かれ、以前のその人とは違った雰囲気で、家族と暮らす様子がうかがえます。  認知症になり、「過去」を忘れた方にとって大切なのは「今」だと思います。その人の功績を覚えていてあげることはその人が生きてきた証ですが、それを追い求めることは、認知症になった人にはしんどくなることがあると思います。 認知症介護を楽しもう  認知症デイサービスと一般のデイサービスとの違いは、12人以下の少人数制で認知症状に合わせて専門職の人たちが対応してくれるというところです。  「はまなす」には男性も女性も、さまざまな人生を歩まれた人たちがいらっしゃいます。最初、施設の見学に来られた時、本人や家族は皆さん悲痛な顔をされています。他で断られた人や「どうせ治らないなら…」とあきらめ顔の人等。ところが、「はまなす」に通う皆さんが、スタッフと一緒に、自由に笑って、自由に動いて、生き生きと活躍している姿を見て「皆さん笑うんですね」と驚かれます。認知症になると、家族も本人も笑うことを忘れてしまいがちです。  「ここは認知症の人しかいません。だから家では困ったことでも、ここではそれが当たり前で、私たちは認知症の人たちの世界に入れてもらっているのです」「家では、私たちの常識の中に認知症の人たちを当てはめようとするから、目立ってしまうのです」とお話しします。制止されず、褒められ、頼りにされる環境が、笑顔を取り戻していきます。  そうはいっても、「はまなす」は毎日がハラハラドキドキです!お風呂の時など、右側の人に気を取られると、左側の人がズボンを頭にかぶっていたり、食事の時なども、はっと気づけば隣の人のおかずを食べている人がいたり…。また、Aさんにとってはサロン、Bさんにとっては病院、Cさんは会社、Dさんはボランティア、Eさんはヘルパーなど、来ている人たちによってデイサービスの捉え方が違います。そのため、私たちは人によって話し方も変えています。  窓の外を見て「ほら見てごらん。あそこに子どもが寝ている」とか「ほら手を振っている」と言われれば、一緒に手を振りながら、どんな人がいるのか想像を膨らませます。否定をしないで、認知症の方が見ている世界を想像しながら対応をしていくことで、意外と笑えて楽しむことができます。  認知症は未だ不思議な病気ですが、一緒に楽しむ余裕を持つためにも、家族は抱え込まず専門職にゆだねて自由になる時間を持つことが大切だと思います。認知症デイサービスを利用するにはいくつかの条件がありますので、まずは、お近くの地域包括支援センターまたは、ケアマネジャーに相談してみて下さい。  お近くの認知症デイサービスに、一度足を運んでみませんか。 P9 あなたの職場  社会福祉施設等で働く福祉従事者から、今の仕事のやりがい、実際の業務のしやすさや職場で魅力的に感じること等を聞き、「働きやすさ」につながるポイントを発見していくコーナーです。 職員も、利用者も、皆が笑顔でいれる施設を目指して (福)公正会 特別養護老人ホーム希望苑での取り組み  横浜市グッドバランス賞の認定やかながわベスト介護セレクト20等を受賞し、長年職員の処遇改善に向けた取り組みに力を入れている特別養護老人ホーム希望苑(横浜市泉区)。今回は、福島施設長と小宮副施設長に、職員が「元気」に働き続けていくための取り組みについてお話をうかがいました。 まず職員が元気に笑顔で働く  希望苑では「介護を受ける人、介護をする人、皆が笑顔であるように…」を合言葉にしています。「職員が元気に、笑顔で利用者と接することで、利用者にとってのより良いサービスにつながると考えています。そのために、笑顔で働いていける工夫を続けています」と小宮さん。自身も、周りの職員の様子を気にかけ、必要に応じて声掛けができるよう心掛けているといいます。  育児休暇、介護休暇等の制度はもちろん、職員の事情や健康状態にあわせて、時間単位で公休日をあてはめられるよう調整する等、まず元気に働けるように配慮。福島さんからは「社会的な情勢や本人の背景によって、求められることや課題は変わっていくと考えています。そうした変化にも対応できるよう、時には規程等を見直すことも考えています」と、職員への支援の姿勢を聞くことができました。 「何を目指すか」目標を持つための支援  特に力を入れているという職員研修では、施設の運営理念、そして合言葉についてしっかり伝えながら、キャリアパス制度によってそれぞれの職員の技量に合わせた研修・資格取得を勧めています。資格取得を支援する助成制度をはじめ、施設内に設けた研修委員会等で職場内研修の計画を立てたり、朝礼等の場で外部研修の情報を提供したり、職員が積極的に学びの機会を持てるよう取り組んでします。  これらの機会を経て、「自分は何を頑張ればいいのか」といったキャリアに沿った目標を持つことができ、モチベーションにつながっているのではないかとのこと。また、研修会等が、職員間でコミュニケーションをとる機会になるなど、相談しやすい雰囲気にもつながっています。 職員も信頼できる施設  職員の中には、自分の家族が希望苑を利用していることがあります。こうしたケースは珍しくないとのことで、「施設の理念が共有できていて、職員同士、どういう風に利用者と接しているのかを知っているから『希望苑で家族のことをお願いしたい』という気持ちになってくれているのかなと思います」と小宮さんは言います。施設での研修会等、職員同士で話ができる機会の積み重ねによって、職員と施設での信頼関係が築けているのだと感じました。  今後はどういった取り組みを目指しているのか、福島さんに聞いてみたところ、施設の設備等のハード面を充実させたいとのこと。新たな設備を見て、職員が気持ち新たに働いていけることを目指しています。 (企画課) P10 県社協のひろば 災害時に「逃げる」とは-第2種第3種連絡会主催会員向け研修会が開かれる  自然災害の発生が増えています。本県では、首都圏直下型の地震のみならず、台風による被害等、従来以上に発災・被害が心配されています。そのような中、安全を確保するため、いち早く避難することが大切になります。  今年の5月、内閣府では避難に関するガイドラインを改定しましたが、行政が作成する各地域の防災計画にはまだ反映されておらず、これから県内各地で取り組みが始まるところです。  さて、災害に関する取り組みは、関係機関・団体それぞれにとっても大きな関心事であることから、障害や高齢等幅広い福祉分野や関連分野の団体から構成される本会第2種第3種正会員連絡会(以下、連絡会)では、去る9月21日に、会員を対象にした研修会をオンラインにて開催しました。  講師は、数多くの災害による被災地で支援の実績があり、また、平常時からの災害対応の取り組みについて全国各地の社会福祉協議会、行政関係者、NPO団体と連携を図りながら行っている、オフィス園崎代表の園崎秀治さん(元全社協職員)にお話しをいただきました。  園崎さんからは、まず、災害対策基本法のガイドラインの変更の概要をご説明いただき、住民を支援する視点で必要な災害に関する行政情報の読み取り方、特に個人個人の逃げ方、個人個人の災害時の取り組みをあらかじめ検討し定めておく「マイタイムライン」の大切さや、福祉避難所など、災害対応全般に関してわかりやすく講義していただきました。 〈図〉 園崎さんは、パワーポイントによる参考資料を踏まえながら、避難への備えについて解説した 〈図終わり〉  閉会にあたっては、「平常時からの取り組みの大切さをあらためて感じました」「今後も機会があれば取り組んでいきたい」と連絡会の石橋代表、コッシュ石井副代表からあいさつがありました。  参加者からは「マイタイムラインの必要性は分かったが、策定するといっても実際に体験しないと難しいかもしれない。そのような体験型の演習を含めた研修をぜひ開催してほしい」「当事者団体としては対面式の研修も得られることが多いが、時間等の制約もあるのでリモートでの研修開催はありがたい」という声が聞かれました。  災害への対応は、障害の有無など要配慮の状況、家族構成のみならず、居住地はじめ、被災した時の居場所、そしてその周辺の社会資源などで大きく変わります。いわば一人ひとりにあった個別の取り組みが必要となります。今回の研修は、参加者それぞれが、非常時の対応に向けた備えについて考えるきっかけとなりました。  なお、第2種第3種正会員連絡会では、本年度中に、もう1回研修会開催を予定しています。この時は連絡会会員だけでなく、社協、社会福祉法人、施設関係者を含め幅広い方が参加できる、公開スタイルの研修会も視野に入れて開催に向けて検討しています。 (企画課) P11 県社協のひろば 役員会のうごき (7月〜10月実施) ◇理事会=7月12日(月)①主たる事務所の移転②理事候補者の推薦③評議員候補者の推薦  10月14日(木)①令和3年度県社協会長顕彰候補者の審査②各種委員会委員の選任 ◇評議員会=9月6日(月)①理事の選任 ◇評議員選任・解任委員会=8月17日(火)①評議員の選任 新役員等の紹介 【理事】9月6日選任 山本浩真  ※就任後2年以内に終了する会計年度のうち、最終のものに関する定時評議員会の時まで 【評議員】8月17日選任 佐伯妙有、中島孝夫  ※任期:就任後4年以内に終了する会計年度のうち、最終のものに関する定時評議員会の時まで   2021年度交通遺児大学等入学支度金選考のご案内  神奈川新聞厚生文化事業団から、大学等に進学を希望する交通遺児等(今年度から保護者が事故による後遺障害のある方も含む)の高校生に対し、入学支度金を支給します。 ◇支給額=1人30万円(返済の必要はありません) ◇対象=令和4年4月に大学・短大・専門学校に進学する3人を予定 ◇申込方法=所定の申請書、調査書、課題作文(テーマ「10年後の私」、800字以内)、交通遺児等であることを証明する公的な書類、主たる家計支持者である保護者の所得証明書を提出。 ◇申込締切=令和4年1月31日(月)消印有効。結果は令和4年2月末日を予定 ◇問合先=(公財)神奈川新聞厚生文化事業団☎045(222)0615 寄附金品ありがとうございました 【交通遺児援護基金】(株)エスホケン 【子ども福祉基金】(株)エスホケン 【ともしび基金】(福)聖テレジア会小さき花の園、(福)恩賜財団済生会若草病院、石田隆 (匿名を含め、合計7件 56,680円) 【寄附物品】神奈川県住宅営繕事務所 【ライフサポート事業】 <寄附物品>(N)セカンド・ハーベストジャパン (いずれも順不同、敬称略) 福祉タイムズの感想をお寄せください!  お寄せいただいたご感想・ご意見は、以降の紙面作成の参考とさせていただきます。ぜひ、お聞かせください。 ◇問合先=企画課 ☎045-534-3866 Mail:kikaku@knsyk.jp P12 かながわほっと情報 再犯のない社会を目指して―認定NPO法人 神奈川県就労支援事業者機構(横浜市中区)  罪を犯した人や非行少年らの社会復帰に向けた就労支援に取り組んでいる認定NPO法人神奈川県就労支援事業者機構(以下、機構)を訪ねました。  刑法により検挙された人の再犯率は、平成19年以降、一貫して上昇しています。また、再犯率の中で無職者は有職者の約3倍高く、再犯防止には就労の支援が重要であるといえます。そこで、機構の事務局長である竹内政昭さんに、職場体験事業の取り組みについてお聞きしました。  当初は雇用に協力してもらえる事業者(以下、協力雇用主)への支援を行っていましたが、法務省からの要請もあり、少年たちを直接支援する取り組みも始めました。そのような中、川崎で発生した中1男子殺害事件を契機に「機構として出来ることは何か」と竹内さんは自問自答し、「居場所のない少年たちに職場を用意してあげることではないか」との思いに至りました。そこから協力雇用主に協力を働きかけ、弁護士会、警察署、裁判所等とも相談を重ね、(財)日本民間公益活動機構の助成も受け、 職場体験事業を立ち上げました。  職場体験事業の対象は16~20歳の少年少女で参加費は無料。体験業種は建設関係、介護、理美容、電気工事、造園、農業など多岐にわたり、協力雇用主数は35社にのぼります。体験期間は2日間で一日当たり3~4時間。昨年10月の開始以降、これまで14件の職場体験を実施しました。職場体験がきっかけで農業分野の職に就いた少女からは「前からこんな仕事がしたかった」と、感謝されたとのことです。「誰かが背中を押してあげることが大切」と竹内さんは言います。  また機構の強みは、協力雇用主との強い信頼関係だと言います。社会のために役に立ちたいという思いの雇用主と面談し、非行少年たちとの接し方、面談の仕方、雇用した後の困り事等のアドバイスを行なっています。また、少年少女たちともしっかりコミュニケーションを取って就労を続けられるよう相談に乗っています。「今後も協力事業主や関連機関と気持ちを一つにして支援の輪を広げたい」と竹内さんは意気込みを語ります。  取材を通して、竹内さんの明るくて優しい人柄と熱心な気持ちが伝わって来ました。仕事が決まった人への定期的なフォロー、決まらなかった人への次の就職先のサポート、依頼があればハローワークへの同行訪問まで行っているそうです。  「私たちの活動には期間がない」と言い、「一人ひとりに対して、ご本人が納得行くまでこれからも就労支援をして行く」という言葉に力強さを感じました。 (企画課) 〈写真〉 社会に馴染めない等の少年・少女たちの就労支援に取り組む竹内事務局長 〈写真終わり〉 「福祉タイムズ」は、赤い羽根共同募金の配分を受けて発行しています ご意見・ご感想をお待ちしています! バックナンバーはHPから 【発行日】2021(令和3)年11月15日(毎月1回15日発行) 【編集発行人】新井隆 【発行所】社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 〒221-0825 横浜市神奈川区反町3丁目17-2 ☎045-534-3866 FAX045-312-6302 Mail:kikaku@knsyk.jp 【印刷所】株式会社神奈川機関紙印刷所