かながわ社会福祉サービス第三者評価推進機構

評価結果

特別養護老人ホーム しょうじゅの里三保

対象事業所名 特別養護老人ホーム しょうじゅの里三保
経営主体(法人等) 社会福祉法人 兼愛会
対象サービス 高齢分野 特別養護老人ホーム
事業所住所等 〒 226 - 0015
緑区三保町171-1
tel:045-921-0013
設立年月日 2005(平成17)年04月01日
公表年月 2018(平成30)年08月 〜
使用評価項目 横浜市版
評価機関名 株式会社フィールズ
総合評価(事業所の特色や努力、工夫していること、事業者が課題と考えていること等)

[施設の概要]
特別養護老人ホーム「しょうじゅの里三保」は、JR横浜線「中山駅」からバスで10分程の、横浜市の自然保護公園である三保・新治市民の森に隣接した緑豊かな場所に位置しています。施設周辺の山々や田園風景、木立を揺らすそよ風や小鳥のさえずりは、利用者にとって懐かしい風景を思わせる自然豊かな環境となっています。
施設は平成17年4月に、ユニットケアを採用した定員110名の特別養護老人ホームとして運営を開始し、平成19年12月に60名の増床を経て、現在は定員170名の施設として運営しています。
運営法人は社会福祉法人兼愛会で、当施設のほかに3つの特別養護老人ホームと高齢者専用住宅、診療所、ケアハウスなど多くの事業を運営しています。
法人理念である「親切と誠実」のもと、施設の支援方針は「接客接遇の4ステップ(身だしなみ、心のこもった挨拶、笑顔、丁寧な言葉遣い)」であり、利用者一人一人の個性を尊重し、安心で快適な生活と自立・自己実現に向けた支援に、施設全体で取り組んでいます。


≪優れている点≫

1. 利用者一人一人の思いに寄り添い、個別性を尊重したケアを実践しています

施設では、「入居者一人一人の生活習慣・好みを尊重し、今までの生活の継続をサポートすること」をモットーとし、利用者の自己選択と自己決定を大切にした関わりに努めています。起床や就寝時間も一律でなく、各々のペースで自由に暮らすことを認めているほか、身体疾患や認知症などがあっても、可能な限り自由を妨げない介護・支援を実践しています。
入居に際しては事前に詳細なアセスメントを実施し、利用者の全体像の把握を行うとともに、その人の生活背景や慣習、信条などを聴き取り、思いや価値観の共有化に努めています。また、「生活リズムシート(暮らしのシート)」を用いて24時間の生活状況を記録し、食事や排泄等の生活パターンを統計的に把握して、利用者の生活リズムに合わせた対応を実施しています。
支援にあたっては、通常の日勤や夜勤に加え、早出や遅番、半日など様々な勤務シフトを設定しています。また、非常勤職員を積極的に登用し、それぞれの組み合わせによって利用者の生活スタイルに合った個別の介護・支援を実現しています。さらに、糖尿病等の身体疾患がある場合でも、管理栄養士による栄養マネジメントや法人関連の医療機関との連携を通じて成分管理を行いながら美味しい食事提供に努めるほか、健康に支障がない範囲で飲酒や喫煙が可能です。
そのほか、認知症により離設の可能性がある利用者に対しても、フロアやユニットはもとより、職種や部署に関わらず全職員が情報共有・連携して個別対応を実施するなど、利用者の安全確保と制約を設けない介護支援を実践しています。


2.「いきがい倶楽部」の多彩な活動を通じ、利用者の機能回復と活性化を図っています

施設では、利用者一人一人の生きがいや楽しみの活動として、約30種類の活動からなる「いきがい?楽部」を発足し、それぞれ多彩多様な活動を行っています。それぞれの活動は、見る・聞く・動く・考える、そして楽しむことをテーマに、自立と機能の維持・回復、意欲向上などリハビリの一環としても取り入れています。また、生活支援と同様、利用者自身の希望に基づいた活動を提供すると同時に、利用者が興味や関心を示す事柄を積極的に取り入れ、利用者の主体性と機能回復、活動性の向上につながる活動作りに努めています。
「いきがい倶楽部」では、編み物や手芸、絵手紙、パソコン、囲碁・将棋、音楽、体操、健康麻雀など様々な活動を実施し、利用者の希望で自由に選択し、参加できるようになっています。書道や俳句、ペン習字では、講師や指導者の経歴を持つ利用者を中心に活動を実施するなど、利用者主体のプログラムも設定しています。
俳句の会(シルバーの花)では、各々が創作した俳句をパソコンのクラブが文書化し、印刷・製本するほか、俳句に添える挿絵は絵画のクラブで作成したものを活用するなど、複数のクラブがコラボレーションして創作活動を行うケースもあります。制作した作品は、各ユニットの共有スペースや施設ロビー、廊下など随所に飾り、展示を行っています。利用者・家族や施設に訪れる人々の目を楽しませるとともに、作品づくりに関わった利用者同士で手に取って感想を伝え合うなど、お互いに成果を共有しています。利用者からも、活動参加を楽しむ意見のほか、身体機能が回復したことやパソコン操作が出来るようになったことなど、活動を評価する意見が多く聞かれています。


3. 関連施設との緊密な連携のもと、医療対応の充実化を図っています

施設では、法人関連の医療機関との密接な連携を通じて、医療依存度の高い利用者の受け入れとともに、医療との連携が必須な終末期ケアの対応を積極的に推進しています。医療対応を要する利用者の受け入れは、胃ろうや経管栄養をはじめ、在宅酸素療法やストーマ、長期留置カテーテルのほか、過去には気管切開の利用者を受け入れた経緯もあります。
人工透析が必要な利用者の受け入れについても積極的に実施しており、施設に隣接する法人関連の内科診療所と連携して、常時30名以上の対象者を受け入れています。また、利用者・家族の希望に基づき、終末期ケアも積極的に実施しています。
対象者の支援にあたっては、毎月ケアプランの見直しを実施するほか、ステージの進行状況に応じて医師を交えたカンファレンスを行い、具体的な対応を協議するとともに、家族の心理的ケアにも努めています。なお、平成29年度は、全退所者の約7割が施設で最期を迎えています。看取り介護の終了後は、家族からアンケートや意見聴取を必ず実施して職員間で共有し、さらなるケアの質向上に努めています。


4. 健康経営の取り組みを通じて、職員の健康維持・増進と利用者支援の質向上を両立しています

近年、社会全般において企業の従業員への健康配慮の必要性が高まりを見せる中、施設では職員の健康の維持・増進を図ることが利用者支援の質の向上につながることに着目し、健康経営推進担当者を選任し、平成29年度から組織全体で「健康経営」の取り組みを推進しています。
「健康経営」の方法として、食生活や運動、飲酒、喫煙、ストレスチェックなど、職員に対する働きかけを行い、労働時間や就業環境など組織体制の改善に向けた対応を実施しています。職員アンケートを実施して睡眠時間や通勤の状況、生活習慣、運動、嗜好等の実態把握を行い、ストレスチェックや健康診断の分析結果を踏まえて食生活や運動など健康増進のための提案を行っています。職員の精神・身体の両面で健康の保持・増進に向けた対策を実施するとともに、週休三日制の採用や禁煙デーの導入、施設屋上の「森林浴広場」を活用したリフレッシュ休憩の実施など、これまでの枠組みにとらわれない新たな取り組みを行っています。
これらの取り組みの成果として、職員の職場満足度の向上とともに、離職率の大幅な削減に成功したほか、2018年1月18日付けで「横浜健康経営認証2018」の最高ランクであるAAAの取得に至り、この業界のパイオニアとして活動を促進しています。また、神奈川県が推進する「CHO(健康管理最高責任者)構想推進事業所」の登録、及び協会けんぽ神奈川支部の「かながわ企業宣言健康優良企業」の認定も受けています。


≪課題や改善することが期待される事項≫

1.利用者の要望・ニーズの聴取に向けた、さらなる取り組みが期待されます

施設では、利用者一人一人の希望に沿った生活の実現に向け、利用者本人や家族から積極的に意見を聴取して意向の把握に努めるほか、利用者本人や家族から随時意見を聴取するとともに、満足度アンケートを定期的に実施するなどして、個々の意見の尊重と正確な意向把握に努力しています。また、施設長が施設内を定期的に巡回して直接意見の聴きとりを行うほか、法人の要職者が施設の第三者委員を務め、直接苦情や要望を受け付けることで、迅速な改善の対応と施設全体での情報共有化が図られるよう配慮しています。
一方で、利用者の意見では、更なるリハビリの実施や食事、入浴など、日々の生活に関する潜在的な要望が聞かれたほか、職員への気兼ねなどから、要望や意見を伝えにくいといった声も聞かれました。今後はオンブズマンの導入など、法人・施設と直接利害関係のない第三者を介し、利用者の意向を聴取する等の取り組み検討が期待されます。

評価領域ごとの特筆事項
1 人権の尊重

職員が守るべき倫理・規範は、法人主催で新任研修、継続研修を定期開催して職員教育を行うほか、就業規則・服務規程にも明示して配布を行っています。全職員にクレド(credo:従業員が心掛けるべき企業の信条)を配布し、法人理念と支援方針のほか、虐待防止や身体拘束廃止について明示し、職員全員に常時携帯を義務付け、全職員の意識強化に努めています。

個人情報保護に対する基本方針を策定し、新任研修を通じて個人情報保護やプライバシー保護に関する教育研修を実施するほか、全職員に説明の上、個人情報保護に関する誓約書を取得して守秘義務と個人情報保護を周知徹底しています。利用者の個人情報に関する書類は、事務室で施錠管理しているほか、施設内PCもパスワード設定を行うなど適正な管理に努めています。

身体拘束廃止指針を策定するとともに、運営規程、重要事項説明書等に「身体的拘束の禁止」を明文化し、施設として身体拘束を行わない姿勢を明示しています。身体拘束廃止委員会・事故防止委員会を発足し、行動制限・身体拘束の廃止に向けた検討・協議を行っています。なお、やむを得ない状況から身体拘束を実施する場合は、施設長を中心に委員会を招集・開催し、必要性の検討を実施するほか、必ず家族に確認し同意を得るなど、一連の対応をルール化し、実施を徹底しています。また、内部研修を定期的に実施し、職員の意識強化にも努めています。

2 意向の尊重と自立生活への支援に向けたサービス提供

一人一人の生活リズムや身体状況に応じた個別ケアの実践に取り組むとともに、排泄の自立に向けた支援に努めています。日中は声かけとトイレ誘導を随時実施して排泄感覚や機能回復を促すほか、利用者の排泄パターンに沿って支援を行い、排泄の自立に向けた段階的な支援を実施しています。また、姿勢の維持が難しい利用者に対しては、機能訓練指導員と協議し、日常生活に移乗や立ち上がりなどの動作を積極的に取り入れた生活リハビリを実施するなど、排泄支援と生活リハビリの組み合わせによる自立度向上の取り組みを行っています。

機能訓練計画書の内容を全職員で共有し、日常生活の中の様々な動作をリハビリとして位置づけ、一貫した対応を行っています。日中活動(いきがい?楽部)の参加にあたっては、楽しみや生きがいなど心身の活性化を図るだけでなく、移乗や歩行はもとより、歌や会話等を通じた発声、創作活動を通じた手指の操作や想像・思考力のトレーニングなど、様々な訓練要素を含む活動であることを共通認識として、参加のためのサポートを行っています。



3 サービスマネジメントシステムの確立

ケアプランの新規作成時や、利用者の状態に変化が生じた際など、定期・随時でアセスメントを実施し、利用者の状態と支援ニーズの把握を行っています。アセスメントは独自様式を用い、介護やリハビリ、看護、管理栄養士など複数の職種が関わり情報収集と把握を行っています。歩行や移乗、入浴、排せつ等の状況に加え、食事・栄養摂取や咀嚼・嚥下機能、情緒・心理面や行動等におけるケアの必要性など、項目別で課題を抽出しプランの内容に反映しています。

利用者の支援にあたっては、アセスメントの結果や診療情報提供書に基づき、必要な医療対応と実際の支援を想定した具体的な内容を明示して職員間で共有しています。退院後入居となる場合は事前に医療機関を訪問し、医師から直接説明を受けるなど、正確な状況把握に努めています。利用者に関する情報は、サービス担当者会議を通じて支援方針を明確化し、日常の業務伝達や施設内PCのネットワーク等を通じリアルタイムで情報共有を図っています。

感染・食中毒予防まん延防止マニュアルや衛生管理マニュアルを策定し、認識共有と対応の統一化を図っています。複数職種が参加して感染対策委員会、衛生委員会を開催し、施設内の感染防止と衛生管理に関する検討を実施しているほか、感染症対策に関する内部研修も年2回開催しています。介護事故防止・対応マニュアルを策定し、事故防止委員会を毎月開催して事故・ヒヤリハット事例の収集と分析・統計を行うほか、身体拘束廃止委員会も毎月開催して検討・協議を行い、実務や内部研修の内容に反映しています。

苦情処理規定を策定し、施設の苦情解決体制を明確化しています。苦情解決体制を利用契約書等に明示し、入所時には必ず利用者・家族に説明を行うほか、施設内にも掲示して周知を図っています。また、施設長が施設内を随時巡回し、利用者・家族から直接意見を聴取して苦情・要望の把握に努めています。施設第三者委員に法人関連の病院長と顧問の2名を選任し、直接苦情を受け付けるとともに、必要に応じて運営会議など施設の重要な意思決定機関に提示し、迅速な対応と早期改善が図られるよう配慮しています。


4 地域との交流・連携

法人評議員に地域の自治会副会長を選任し、地域住民の意見・要望や課題等を聴取してニーズ把握に努めています。自治会の要望を受け地域住民向けの健康教室や体操教室を毎月開催しているほか、居宅介護支援事業所のケアマネージャーによる相談会も同時開催し、地域住民からの相談に応じています。また、緑区からの要請に基づき健康講座を開催するなど、高齢者福祉にとどまらず、広く専門性を生かした保健福祉活動を推進しています。

代表的な施設行事として、毎年恒例で「しょうじゅ祭(納涼祭)」を開催し、利用者家族はもとより地域住民やボランティア、近隣の高齢者グループホームなどから広く受け入れを行っています。そのほか、地元町内会の盆踊りや地域の小学校の運動会、桜まつり、花火大会など様々な地域行事に参加し、地域交流の促進に努めています。

5 運営上の透明性の確保と継続性

施設の運営状況は、法人・施設のホームページをはじめ行政のポータルサイト等に財務諸表を掲載しているほか、施設ロビーに年度の事業報告や事業計画、中長期計画等の冊子を配して随時閲覧できるようにしています。また、施設ロビーに大型モニターを設置し、施設行事や日中活動の風景のほか、法人関連事業の概要や健康経営の取り組み等を映像化して紹介するなど、積極的な情報公開に努めています。モニターの映像は週替わりで随時最新情報に更新しています。

施設運営に関する重要な意思決定にあたっては、職員会議やユニットリーダー会議をはじめ、各種委員会や部署間会議等を通じて職員意見を集約しながら多面的に検討し、説明と周知を行っています。また、利用者・家族に対しても、家族会を通じて説明し、理解浸透に努めています。

平成27〜31年度の5か年での中長期計画を策定し、社会的ニーズを踏まえた施設機能の向上と、その実現に向けた事業経営の健全化等を改善目標に掲げています。事業収支の改善や既存サービスの質向上、新規地域福祉事業の展開などを重点施策に位置付け、事前分析に基づく地域の特性や実情、福祉ニーズの状況に合わせた具体策を明示するとともに、計画の工程表や収支予算書も添付して施設ロビーに設置し、誰でも閲覧できるようにしています。

6 職員の資質向上の促進

法人・施設として福祉人材の育成に努めているほか、中長期計画にも次代の地域福祉を担う人材の育成を重点施策として位置付け、実習生や研修生の受け入れを積極的に推進しています。

職務分掌において職員ごとの職責や役割権限を規定するとともに、現場への権限移譲も積極的に推進しています。年度ごとに研修計画を策定し、定期的に内部研修を開催しています。内部研修は常勤・非常勤問わず全職員を対象に研修受講を義務付け、人事考課の査定にも反映するなど、組織的に職員の育成に取り組んでいます。また、アンケートや効果測定を実施して職員からの要望やニーズを反映し、毎年研修内容を見直すほか、外部関係機関の専門家を研修講師として研修を開催するなど、研修内容の充実化にも努めています。

介護や衛生管理、事故防止など複数職種で構成する様々な委員会を発足し、業務に関する検討を実施しているほか、部署間会議を月2回開催し、施設内共通の様々な課題の改善に向けた協議を行っています。具体例として、離設可能性のある利用者に対し、事務や営繕、清掃等を含む全部署の職員が情報を共有・連携して対応を行い、行動を制限せず安全に支援を実施した事例などが確認されています。

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