かながわ社会福祉サービス第三者評価推進機構

評価結果

多摩川あゆ工房

対象事業所名 多摩川あゆ工房
経営主体(法人等) 社会福祉法人なごみ福祉会
対象サービス 障害分野 生活介護他
事業所住所等 〒 214 - 0012
多摩区中野島4-3-28
tel:044-911-1315
設立年月日 1994(平成6)年04月01日
公表年月 2018(平成30)年03月 〜
使用評価項目 川崎市版
評価機関名 株式会社 学研データサービス
総合評価(事業所の特色や努力、工夫していること、事業者が課題と考えていること等)

 
《施設の概要》
 多摩川あゆ工房は、JR南武線登戸駅から徒歩18分程度の閑静な住宅街にあります。平成6年4月に社会福祉法人なごみ福祉会が開設した生活介護と就労継続支援B型事業の通所施設です。障害の有無・程度を問わず、地域で生きることを理念に掲げています。また、働いて得た工賃で自分の生活を豊かにできることを目指しています。日常的な活動を施設の中だけでなく、一般市民の活動の中で展開しています。生活介護と就労継続支援B型利用者を最初から区別し作業を分けるのではなく、利用者の希望と作業に合った能力に応じて、日中作業に取り組んでもらいます。焼き菓子作り、園芸、清掃、リサイクル、チラシ配布、室内軽作業等の作業活動、療育音楽、カラオケ、ウォーキングなどの創造活動など盛りだくさんです。利用者は希望の作業を実習して体験し、自分の意思で決定します。


《特に優れている点・力を入れている点》
○働いた成果で自分の生活を豊かにできることを利用者は実感しています
 一般雇用の難しい障害をもつ利用者に働く機会を提供することで、賃金で生活することの意味、やりがいのある生活を過ごすことの大切さを感じてもらいます。一人ひとりが働く意味を達成できるように、個別支援計画に基づいて支援します。年金と工賃で地域生活を送れるようにするため、清掃班を平成23年に立ち上げました。清掃班だけの平均工賃は5万円を超えます。利用者の一人は8万円の工賃を得て、生活保護を脱することができました。平成28年度には「みんなのお菓子屋さんレゼル」を立ち上げ、働く場の拡大に努めています。

○職員は人権擁護の意識を徹底し利用者一人ひとりの日常生活の支援に努めています
 虐待防止委員会を立ち上げ外部に開かれた虐待のない施設を目指しています。年度初めに個別支援のあり方、対人援助の基本を再度振り返る研修を行い、また、虐待防止法・利用者の人権尊重をテーマに内部研修を行っています。毎日の職員ミーティングでは利用者の行動障害等への制止方法が身体拘束や虐待に当たらないか等、支援の振り返りを行っています。職員はネームプレートの裏に「利用者さんの人権擁護に努めます」「体罰 呼び捨て ニックネームは認めません」と明記した職員宣言を常時携帯し、人権擁護対する注意を喚起しています。

○利用者一人ひとりの障害特性と支援ニーズの優先度に応じた個別支援計画を作成しています
 アセスメント表作成ソフトウェアを開発し、アセスメント手順の標準化を図っています。利用者支援ニーズの優先度を定め支援課題を明確にし、課題ごとに優先順位をつけて順位の高いものから支援内容をまとめてアセスメント表を作成しています。アセスメント表から一貫して支援ニーズの優先度に応じて個別支援計画を作成するソフトウェアを開発しています。利用者の希望・要望を尊重し、総合方針を明記し長期・短期目標を設定しています。個別支援計画の課題に沿って6か月毎にモニタリングを行い、個別支援計画の見直しに反映しています。


《事業者が課題としている点》
サービスの質の向上は、人材の育成に期待される部分が大きいので、職員が自発的に能力開発に取り組むことが重要との認識からキャリアパスの体制を構築していきたいと考えています。まずは、施設長が職員を育成する姿勢を明確にするため、職員とともに目標管理を実施し、定期的に面談を実施する体制を継続していきたいと考えています。さらに、それに基づき、それぞれの現場で人材育成が定着するように研修体制の整備とOJTの体制作りに努めていきたいと考えます。

評価領域ごとの特筆事項
1 人権の尊重

 基本方針に「一人ひとりの希望に応じた作業活動や音楽活動、体を動かす活動を実施して充実した日中活動を支援します。本人が自ら取り組む意欲を大事にしていきます」と明示しています。朝の会でボードにその日の活動を示し希望を取っています。納品の締め切り等で調整が必要な日もありますが、意向を聞き無理強いすることはありません。新しい作業の希望や他施設への関心を示された場合も実習ができるようにし、体験を積み重ねたうえで選択できるようにしています。

 毎日夕方職員ミーティングでは利用者の行動障害等への制止方法が身体拘束や虐待に当たらないか等、支援の振り返りを行っています。職員はネームプレートの裏に職員宣言「利用者さんの人権擁護に努めます」「体罰 呼び捨て ニックネームは認めません」「(自分の宣言)」のカードを入れ、常に意識しています。資料を外部に持ち出さない、プライベートな場で利用者の個人名を出さない、利用者の前で他の利用者の事を言わないなど常に意識するようにしています。

 個別支援のあり方、対人援助の基本を再度振り返る研修を行い、7月には虐待防止法・利用者の人権尊重をテーマに内部研修を行いました。日常支援では同性介助に努め、利用者の気持ちに寄り添う努力をしています。何かに取り組むことで他害をしないような配慮もしています。利用者の自治会「つばめの会」で利用者が発表したいことを一緒にイメージ化したり文章化し、「あゆまつり」で発表しています。数か月かけて利用者の話をじっくり聞く機会になっており、利用者自身がどう感じているかに思いを巡らせています。

2 意向の尊重と自立生活への支援に向けたサービス提供

 利用者の状況から全員のアンケート実施は困難ですが、第三者評価と「福祉サービス利用者意向調査キット」による利用者調査を交互に行い(それぞれ3年に1度)、また、半年ごとに定期面談での聞き取りから、利用者の満足度を把握しています。保護者会での意見交換や虐待防止委員会での保護者代表の意見は、職員とは違う見方が示され、利用者の代弁として視野を広げた支援に繋げています。それぞれの報告は職員会議で議論し改善に向けています。ヒヤリハットについて振り返り、利用者の満足に繋がるよう努力しています。

 「多摩川あゆ工房苦情解決システムの案内」「川崎市苦情解決支援事業のご案内(川崎市障害福祉施設事業協会)」を掲示し、相談や意見を受付けています。掲示には施設長、主任、ケースワーカーの写真があり、日常的に「困ったら相談してね」との声掛けを行っています。利用者が希望した職員と話せること、その時に聞くことを心がけていますが、聞けない時は聞ける時間を約束しています。その場で解決(回答)できないことに職員側での対応は迅速ですが、利用者へのフィードバックについては実施の方法を検討しています。

 アセスメントにより、ゆっくり話す、文字を交える、絵・写真で示すなど一人ひとりに合わせて実施しています。パーテーションで仕切ったり、聴覚過敏であれば声かけよりカードを使って伝えたり落ち着いて聞ける状態を作るよう配慮しています。支援業務ガイドブックに、似た特性でも同じ人はいないこと、その人にわかりやすい言葉で話すこと、急がす言葉や制止する言葉を不用意に使わないこと等利用者支援の姿勢を示しています。

3 サービスマネジメントシステムの確立

  利用者支援ニーズの優先度を定め支援課題を明確にし、課題ごとに優先順位をつけて順位の高いものから支援内容をまとめてアセスメント表を作成しています。アセスメントから一貫して個別支援計画を作成し、支援ニーズの優先度に応じて個別支援課題を定めています。利用者の希望・要望を尊重し総合方針を明記し、長期・短期目標を設定しています。

  利用者状況については、毎日朝・夕のミーティングで職員間の情報共有を図っています。朝のミーティングでは前日の業務日誌を確認し、帰りのミーティングでは利用者ごとの一日の生活状況、作業の取り組み状況を記録に残しています。当日の作業の売り上げ金額等を発表したり、一日の成果を振り返り職員間の意識を共有しています。

 感染症発生時対応マニュアル、交通事故、救急車通報、外作業の行方不明者の捜索等に関するマニュアルを整備し、緊急時の対応に備えています。ヒヤリハット報告の仕組みを整備し、虐待に関する気付きや転倒、服薬、誤食、怪我等各種の事故につながる職員の注意を喚起し、安全確保を目的としたリスクマネージャーを配置しています。リスクマネジメントに関する外部研修を受講するなど、職員相互の安全を保つ気付きを大切にしています。

4 地域との交流・連携


 基本方針に、「日常的な活動を一般市民の活動の中で実施し共に活動する場面を多く作ること」「年間の行事を通じて地域との交流を図っていくこと」と掲げています。ホームページでは写真を多く用いて活動の内容が見えるようにし、地域での販売や清掃、リサイクル回収の様子を伝えています。毎年秋に「あゆまつり」を開催し地域の方々と模擬店やイベントを楽しみます。今年は「共に」をテーマに行いました。利用者の自治会「つばめの会」の利用者発表は、活動を見ただけではわからない利用者の心情や願いを伝える機会になっています。

 区の自立支援協議会や社会福祉協議会との定期的な連絡会で意見交換や困難事例に取り組むなど横のつながりを持っています。市の障害福祉施設事業協会で市への要望書作成や、県の社会就労センター協議会との連携、地域福祉推進委員会の研修に参加するなど関係機関と積極的に関わっています。区社会福祉協議会での地域福祉活動計画作成を通して、地域の課題をとらえ連携しています。民生委員見学研修や福祉人材養成実習の受け入れも行っています。

 高齢になった障害者が介護保険のグループホームに入所しています。その方たちに向けて、「ぷらっと」という場所を提供し、地域に施設を開放し顔馴染みの施設の利用者と自由に歓談できるようにしています。地域での高齢化、高齢になった障害者の生き方を共に考えることは現在の利用者の将来を見据えていくことになります。地域での清掃や焼き菓子の受注などを通して地域から助けてもらうだけでなく利用者が地域の役に立つ存在となっていると考えています。地域の防災訓練や運動会にも参加し、地域の住民として活動を深めています。


5 運営上の透明性の確保と継続性

  ホームページに法人理念「障害の有無・程度を問わず、地域で生きることを目指します」を掲載し、また、施設の運営方針を明示しています。広報紙「あゆだより」の平成29年6月号に施設長が理念を取り上げています。障害のある人もない人も一緒に地域で生きる社会を目指す歩みは、よりよく生きるという歩みだけでなくその根底は障害のある人の命を守る歩みであることを述べています。あゆだよりを利用者・家族に配付し理念の理解を深めています。

 「せせらぎ沿線事業部中・長期計画」を策定し、3年間を想定し多摩川あゆ工房の新たな事業展開について明記しています。中・長期計画に施設を取り巻く事業環境と事業計画策定の基準、及び人材育成等について定めています。中・長期計画を踏まえて単年度の事業計画を策定しています。事業計画は当該年度の事業の成果と課題を踏まえ年度末に策定されます。事業計画の課題項目に沿って実績を評価し、課題を整理し事業報告に明記しています。

 施設長は、職員会議で理念の実践や事業計画の達成状況に関する職員の意識の共有を図っています。また、虐待防止委員会、研修委員会、工賃検討委員会等各種委員会を立ち上げ活動を推進しています。工賃の向上や利用者選択の場の拡大、販売能力の強化等を目的に平成28年4月に焼き菓子の分場作業所「レゼル」を立ち上げました。従来の焼き菓子作業室がいっぱいで新規利用者の希望者の受け入れが困難な状況の解決につながりました。

6 職員の資質向上の促進

 次年度の勤務意向調査を実施し、半年ごとに面談を行っています。職員面談シートで6か月間の自分の取り組み、自己評価、具体的成果や反省、当面の処置(目標)、今後の目標、学習目標を整理しています。事業に必要な人材として有資格者や事業拡大に向けての増員、同性介護での男女比、年齢構成バランスなど意識して求人を行っています。施設長から職員に向けて「障害者支援の基本理念」を配付し、障害者総合支援法についての研修ではわかりやすく資料を編集して周知する工夫をしています。

 「支援業務サービスガイドブックー求められる職員像」を基に人材育成に取り組んでいます。障害のある人の生きづらさに配慮し本人や家族の哀しみに思いを巡らし、一緒に考え一緒に行動する姿勢を職員に期待しています。「菓子職人を目指す障害者を支援するプロジェクト」に利用者と共に参加し、焼き菓子の質向上と支援について学びました。事業を利用者と共に展開する意識を持っています。キャリアパス職務基準表では階層別研修を併記し、1つ上の職位への取り組み、役職の経験などを期待し職員に周知しています。

 年に2回個人面談により就業状況や意向を聞き取り、職務上の課題について話し合いを行っています。職員間の連携が良く有給休暇や病気欠勤などでは進んでフォローに入る風土が培われ、相互の助け合う雰囲気は利用者支援にも良い影響を伝えています。休憩時間は非常勤の昼休み取得と常勤職員は午前午後の2分割体制を規定し、しっかりした利用者支援のため職員がきちんと休憩をとる工夫をしています。

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