かながわ社会福祉サービス第三者評価推進機構

評価結果

川崎市特別養護老人ホーム長沢壮寿の里 (3回目受審)

対象事業所名 川崎市特別養護老人ホーム長沢壮寿の里 (3回目受審)
経営主体(法人等) 社会福祉法人川崎市社会福祉事業団
対象サービス 高齢分野 特別養護老人ホーム
事業所住所等 〒 214 - 0035
多摩区長沢2丁目11番1号
tel:044-976-9003
設立年月日 1989(平成元)年01月01日
公表年月 2017(平成29)年04月 〜
使用評価項目 推進機構評価項目ガイドライン準拠版
評価機関名 一般社団法人 アクティブ ケア アンド サポート
総合評価(事業所の特色や努力、工夫していること、事業者が課題と考えていること等)

【施設の概要】
 施設は、社会福祉法人川崎市社会福祉事業団が運営する介護老人福祉施設として、多摩区長沢にあります。聖マリアンナ大学病院に近接し、緑に囲まれた静かな環境に恵まれています。2016年8月現在、定員は53人です。利用者の平均要介護度は4.3、平均年齢86.1歳の利用者が、施設が提供するサービスを利用しています。運営法人の理念等に従った方針・目標が明確で、施設長の取り組む姿勢を次のように明記しています。
 「利用者の生活の質を維持するため、現行の提供サービスの見直しを行い、一元化した介護サービスの提供と併せて利用者一人ひとりの尊厳を尊重した個別ケアの向上に取り組んでいる。53床ワンフロアーで、多床室が多い環境を活用し、いつも人の気配がし、目が届くよう配慮している。利用者家族は家族会に参加し、バザーや夏祭り、ボランティア交流会等の施設行事は、家族会の主催で職員が協力して実施する形をとっているため、施設職員と家族が気軽に日々の状況について話が出来ている。」
 職員に対し職務基準等を明示するとともに、育成に力を注いでいます。


【特に良いと思われる点】
・参加や選択の機会を工夫し、その人らしい生活を尊重しています
 外出や行事への参加にあたり、利用者が希望を出し意思を示す機会を増やすよう取り組んでいます。利用者の重度化に伴い、選択や意向を表わすことが困難になっている利用者が多くなっています。買い物や食事メニュー、おやつ、衣類販売など日常の機会をとらえ、利用者が個々の状態に合わせた方法で選択し、その人らしい思いで過ごせる場面を増やすよう努力しています。
・○PDCAサイクルにより個別支援計画(ケアプラン)を充実させています
 これまでの「意向調査票」を「支援意見書」に改め、利用者の意向をより多面的にとらえるようになりました。アセスメントを深めることができ、「課題抽出シート」に整理し、日誌や多職種の職員の情報から介護支援専門員がケアプランを作成します。PDCAサイクルを繰り返し、現状を把握して対応していくシステムを構築しています。この流れを1つのファイルにまとめ、ケアプランの目標設定の経過と内容を把握することによって共通認識を高めるとともに、支援への動機づけを図っています。
・重点目標の達成を目指し、A・B・Cの3プロジェクトチームにより具体的に取り組んでいます
 施設の重点目標として設定した内容を、A「一元化した介護サービスの提供」、B{利用者の生活の質の維持」、C「利用者一人ひとりの尊厳の尊重」の3プロジェクトチームが取り組み、実現に努力しています。各チームの実施状況は、それぞれの会議録に残し、目標達成に向けた見直し・改善の取り組みが進んでいました。


【特に改善が望まれる点】
・苦情を言いやすい、出しやすい環境つくりが期待されます
 事業計画書に、「苦情は宝」と受け止め、施設全体のものとして積極的に対応する姿勢を示しています。重度化により言葉で表すことが少なくなった利用者の声に耳を傾け、苦情となる前に対応し改善に努めています。理解や認識の違いや説明不足、確認ミスなどが傾向としてあり、課題と考えています。現状、苦情箱やメール受付は活用度が低く、手順の表示や利用のしやすさなどを工夫し、活発なコミュニケーションが広がることが期待されます。
・軽度の事故から見直した支援の改善を施設全体の改善に役立てる工夫が期待されます
 事故防止検討委員会は、軽度の事故も分析・検討し、マグネットシートやミーティング一覧ファイルで即時に職員へ周知し、事故防止に役立てています。発生状況と原因分析などに基づく改善提案をしっかり記録しています。受診結果や改善後の経過も報告書にまとめて記載しています。こうした個別事故の改善にとどまらず、施設としての見直しに活用してさらなるサービスの向上を図ることが期待されます。
・実習生について、対応方針や実習の手引き・要領などが必要ではないか、検討が期待されます
 実習生の受入れに、担当職員を配置するなど積極的に対応しています。現状、実績校を中心に受け入れていることから、学校の要求事項に応える対応が主となっています。これまで問題となる事例は発生していませんが、今後、受け入れに当たっての対応方針や実習の手引・要領などの整備が必要ではないか、検討が期待されます。

評価領域ごとの特筆事項
1 人権の尊重 ・運営法人の一員として、職員に求める基本姿勢として「接遇」対応の徹底を挙げています。施設においては、「マナーブック」(2011年12月版)に「笑顔で応対」、「丁寧な言葉遣い」、「プライバシーに配慮」などを明記し、職員はその実践に努めています。
・人権教育の徹底により、個人情報保護やプライバシーの確保の重要性が、各職員に周知され徹底されています。個人情報の漏えいの可能性については、その防止策が月例の職員会議において取り上げられています。また、市販のチェックシートを活用し、コンプライアンス(法令順守)への配慮を職員に周知しています。来訪者の施設見学に際しては、「施設見学受け入れ要綱」に従って、プライバシー保護の対応を求めています。
・人権尊重に関する対応については「職員必携」にも明記され、各職員に周知・徹底されています。この必携は各職員が常時所持するなど、人権の尊重の重要視するサービス提供の姿勢がうかがえました。
2 意向の尊重と自立生活への支援に向けたサービス提供 ・協力病院による年1回の健康診断を受けるほか、毎月体重測定を行ない、また、日々排尿・排便や食事量などのデータをタブレット型端末に入力することによって、体調の変化を細かく把握しています。1日4回の申し送りで、情報を共有し、状態の変化の検討と対応の実施・評価を重ねています。毎月モニタリングを行い、アセスメントシートを作成し、ADL(日常生活動作)を確認しています。生活状況や利用者の意向をもとに、可能な活動をケアプランに組み込み、社会性を保つよう配慮しています。
・日常の関わりの中で利用者のニーズを聞いたり、観察で読み取るほか、ケアマネジャー(介護支援専門員)や栄養士もケアプランに反映するよう聞き取る機会を作っています。週に1回傾聴ボランティアや川崎市介護相談員派遣事業の制度を活用した外部の相談員に利用者が思いを表せる機会を設けています。
・重度化により自分の意思を表すことが困難な利用者が多くなってきました。「支援意見書」に食事・栄養、排泄・入浴、移動・移乗、医療・健康、楽しみ、人間関係などの記入枠を設定し、利用者や家族から聞き取ったこと、職員が気付いたことをまとめ、「課題抽出シート」に記入しています。巡回の歯科医・歯科衛生士、理学療法士、音楽療法士などの評価も活用し、利用者の意向や希望、課題を多面的にとらえ、ケアプランを作成しています。
3 サービスマネジメントシステムの確立 ・「苦情は宝」と受け止め対応しています。苦情解決・相談の窓口を廊下に掲示し、受付担当者や対応の流れを示しています。契約時に、こうした苦情解決・相談の窓口を明記した「重要事項説明書」を説明し、配布しています。運営法人が第三者委員会を設置し、電話と来所だけでなくメールでも受付けています。
・食事を始め、誤飲、移動・移乗、車の乗降、入浴、転倒・転落、トラブルなどに関する「事故防止マニュアル」を作成しています。事故防止策と留意点をまとめ、「職員必携」(ファイル)に綴じています。利用者のADL(日常生活動作)から想定されるリスクをケアプランに織り込み、対応しています。軽度の事故についても報告書を作成し、事故防止検討委員会で分析・検討しています。
・一人一人の要望や状態の変化にきめ細かな対応ができています。利用者の持っている能力や安全・安楽に配慮しています。新たな福祉用具の導入時には納入業者から実技を学んだり、理学療法士から利用時の活用法を写真入りの説明資料をもとに指導を受けるなど、統一した支援が行えるよう努力しています。
・「介護マニュアル」、「健康管理マニュアル」を整備し、支援内容ごとに手順や留意点を示しています。職員の気づきは、「備忘録」に記録し、毎年の見直しに役立てています。食事・口腔、入浴、排泄、活動(参加)、身だしなみ、リハビリ、写真、リネン、環境についてそれぞれ係を決め、課題や対応方法の見直しを行っています。
・「職員必携」(ファイル)に「感染症マニュアル」があり、インフルエンザを始め、ノロウィルスや食中毒の予防と対応法などを図や写真などを使ってまとめ、いつでも閲覧できるよう備えています。毎年6月と11月に研修を実施し、そのほか流行前にも関連情報を周知しています。インフルエンザの予防接種に加え、マスク着用を徹底し、外来の面会者にも促して予防に努めています。感染症罹患者には周囲へのまん延防止に努め、日常生活をできるだけ維持できるよう努めています。
・日中・夜間それぞれの緊急時、感染症の発症時や疑いを発見した時の対応法と救急連絡について必要事項を定めるとともに、「救急連絡フロー図」と協力病院や消防署など関係機関の連絡先をワーカー室に掲示しています。「急変時マニュアル」は「職員必携」(ファイル)に綴じ、職員が同時に確認できるよう複数冊を備えています。
・自衛消防隊(兼地震消防隊)を編成し、休日・夜間についても編成と任務を明確にしています。「緊急時事業継続計画」に、災害発生による影響を予測し、支障が発生する事態、協力業者との連携など現状の対応と事後の対応を明示しています。また、職員の出勤状況の変化による業務縮小の度合いや起こりうる利用者の生活面の予測を行っています。地域と連携した防災体制を整えるとともに、大規模災害発生時には二次避難所としての役割を受けもっています。
4 地域との交流・連携 ・地域の福祉向上に向けて、特に、ボランティアによる活動に取り組んでいます。ボランティア担当職員を配置し、受け入れや募集業務を担っています。ボランティアによる活動は、昨年度、延べ2100人を超える実績がありました。活動は多岐にわたり、利用者の生活面の支援のほか、ボランティア交流会も開催しています。交流会では、介護保険や地域包括ケアシステムに関するミニ講座を開催し学習しています。
・地元自治会の回覧板を利用して、夏祭りやバザーなどの施設行事を人々に案内し、参加を呼びかけています。地元自治会には、会員向けパンフレットを施設の行事に合わせて作成してもらうなどの協力を得ています。また、災害時の連携を重視し、避難訓練に自治会の参加を求め、併せて情報交換を行うなど、連携関係を深めています。
・併設の地域包括支援センターと連携し、在宅の高齢者やその家族などの様々な相談に応じ、ニーズに合ったサービスを利用できるよう支援を行っています。
5 運営上の透明性の確保と継続性 ・事業環境の変化やニーズを踏まえて年度事業計画を作成し、年度末に実施状況の総括を行い、事業報告としてまとめています。それらは、施設内に掲示するなど利用者及び家族などが自由に見られるよう開示しています。川崎市指定管理者制度導入施設として、市の監督を受けています。2013年度から3年ごとに第三者評価を実施し、サービスの内容や質の振り返りを行っています。評価結果報告書は、施設内に掲示しているほか、運営法人のホームページなどに開示しています。
・施設長を始めとする管理層の役割及び責任は、運営法人の「職務基準」(2014年11月改定)に定め、施設長(課長級)を始め、係長級、主任、中堅社員、新任社員、新規採用、契約職員などの期待する力量を明らかにしています。
・法令遵守及び施設の経営の改善について、運営法人が施設長研修を開催し、各施設長に対する教育と組織内への徹底を図っています。
・施設は、その方針・目標を実現するため、運営や業務の効率化に関わる課題をテーマとして設定し、3チームが分担して取り組んでいます。各チームに参加する職員の意識改革とともに達成感を得ることをねらいとし、やりがいや目標の達成感が感じられる就業環境の整備に力を注いでいます。
6 職員の資質向上の促進 ・施設は、運営法人の基本理念を踏まえて、重点目標を設定し、月例の運営会議や職員会議において、繰り返し確認しています。期待する職員の力量の確保・向上を図るため、計画を策定し実施しています。研修結果は、「研修報告書」にまとめ、研修委員会に報告するとともに、職員会議を通して各職員に周知しています。
・運営法人は、新人・中堅・主任・管理者クラスの階層別研修を研修計画に織り込み、実施しています。新規採用職員及び異動職員には、施設の研修委員会が年間計画を立て、実施しています。特に、新規採用職員には、「新規採用職員研修の手引き」に基づいて計画を作成し、実施していました。研修成果は、業務の遂行状況の観察などを加味し、人事考課に反映しています。
・「目標管理シート」を活用し、施設長は職員と個別面談を行い、併せて意見・意向を把握しています。運営法人は、本年5月27日、「働きやすい職場をつくる〜管理者の技術とマネジメント法〜」をテーマとした研修を実施し、働きやすい楽しい職場作りに取り組んでいます。
・産業医が毎年1回訪問し、その際、有給休暇の取得状況のチェックを行っています。時間外労働に関しては、衛生委員会が担当し、毎月会合を開き就業状況を話し合っています。
・実習生は、これまでの実績をもとに受け入れてきましたが、こうした受け入れ対応の見直しの必要がないか、検討が期待されます。

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