かながわ社会福祉サービス第三者評価推進機構

評価結果

横浜市南部地域療育センター(2回目受審)

対象事業所名 横浜市南部地域療育センター(2回目受審)
経営主体(法人等) 社会福祉法人 青い鳥
対象サービス 障害分野 地域療育センター
事業所住所等 〒 235 - 0033
磯子区杉田5-32-20
tel:045-774-3831
設立年月日 1985(昭和60)年08月01日
公表年月 2017(平成29)年02月 〜
使用評価項目 横浜市版
評価機関名 特定非営利活動法人 よこはま地域福祉研究センター
総合評価(事業所の特色や努力、工夫していること、事業者が課題と考えていること等)

【施設の概要】
地域療育センターは、心身に障害のある児童及びその疑いのある児童の地域における療育体制の充実及び福祉の向上を図るため、設置されています。センターでは、(1)児童に対する療育訓練 (2)児童に関する相談及び指導 (3)児童の医学的、心理的、教育的及び社会的な診断、治療、検査、判定及び評価 (4)地域への巡回相談及び指導を行っています。児童福祉法の児童発達支援センターと医療法の診療所とから成り立っています。(横浜市地域療育センター条例より抜粋)

 

横浜市南部地域療育センターは、JR根岸線新杉田駅、シーサイドライン新杉田駅より徒歩約7分、横浜市営バス215系統(循環線)「療育センター」下車、または京浜急行線杉田駅より徒歩約15分の産業道路沿いにあり、新杉田公園と磯子スポーツセンターに隣接しています。
昭和60年8月に、社会福祉法人青い鳥により横浜市で初めての地域療育センターとして開設されました。
同法人は、前身の『財団法人神奈川県児童医療福祉財団』において、全国初の通園施設「青い鳥愛児園」と、全国初の療育相談機関「小児療育相談センター」を開設しました。その後、『社会福祉法人青い鳥』を設立し、横浜市内では、南部地域療育センターに続き中部地域療育センター・東部地域療育センター、さらに横須賀市と川崎市でも療育センターの運営を受託しています。
施設の建物は、鉄骨鉄筋コンクリート造2階建てで、1階には通園指導室・早期療育室・感覚統合訓練室・水治療室・事務室等があり、2階には診察室・言語相談室(聴力検査室)・心理療法室・相談室等があります。指導室前に園庭が設置され、園庭の端に弟妹預かり(青いことり)の部屋が設置されています。
施設種別とそれぞれの定員は、通園部門では、児童発達支援センター(定員50人)、医療型児童発達支援センター(定員40人)、診療部門は、訓練科、臨床指導科、診療室(診療科目:児童精神科、小児科、リハビリテーション科、耳鼻咽喉科、摂食外来)、早期療育科となっています。
その他に、児童発達支援事業所「はらっぱ」(定員12人、週48人)が、JR新杉田駅よりセンターとは反対の方向に徒歩5分、京浜急行杉田駅より徒歩10分のところにあります。対象は、知的に遅れがなく、集団生活や家庭生活において配慮が必要な児童で、年齢は4歳児(年中)、5歳児(年長)となり、センターにて、専門医の診察及び諸検査等の結果、サービスの利用が必要と判断された児童となります。
磯子区・金沢区を対象エリアとし、「私たちは、利用者に選ばれる療育センターを目指します」という運営方針をもとに、横浜市、関係機関および保護者会等と連携して、地域における様々な療育活動をすすめています。

 

1.高く評価できる点

 

● 子ども一人ひとりとその家族の状況に応じた支援を実施しています 
センターには、心身に障害のある児童及びその発達において支援を要する児童とその家族から、多様な相談が入ります。しかし、相談者・利用者が初診に入るまで平均2〜3ヶ月程度の期間を要するため、初診までの間にソーシャルワーカーが面談を行い、保護者の意見を積極的に聴取しながら一緒に子どもの強み・長所を探り、家族の心理的負担の軽減を図り、初診につなげています。
初診後は、各部門ごとに評価シートを用いて、運動機能や情緒、理解力、コミュニケーション、食事、排泄等のアセスメントを行い、子どもの総合的な評価を元に、子ども一人ひとりの状況に応じた支援計画を策定しています。
支援の内容は、保護者と同じ “生活の視点”から、子どもの障害特性や家庭環境・家族背景などを捉え、子どもの発達の課題だけに注視するのではなく、子どもの個性を伸ばし、家庭で実践可能な支援方法を提案するよう努めています。
また、幼稚園、保育所、学校などの巡回訪問を通して、地域での子どもの生活を大切に考え、将来を見通し、親子に寄り添ったサービスを提供することを全職員が意識し、法人のビジョンである「障害児者の地域での育ちと暮らしの支援」「ライフステージに沿った伴走性の重視」の実践に取り組んでいます。

 

● 専門性とチームアプローチよる一貫した質の高い支援を実施しています 
センターでは、診療部門、通園部門、地域支援部門の3つの部門が専門性を発揮しながら相互に連携し、療育に関する一貫した支援の実践に努めています。
定期に開催する職員間のミーティングでは、各部門の職員が参加し、連絡事項だけでなく、個別の事例検討など様々な場面で職員が相互に支援技術の評価と確認を行なっています。全体研修では、「療育センターの職員にもとめられるもの」として共通するキーワードをまとめ、センター職員としての意識の共有化を図っています。
また、心理・言語・診療・PTOT等の専門職間で、日々進歩する発達障害の診断・支援方法の情報を共有し、職員相互の支援技術の確認と評価を行い、専門性の向上を図っています。
更に、保護者や地域の関係機関との良好な関係を築き、情報共有や意見交換、技術支援を通して、障害のある子どもとその家族が、地域の中で安心して生活を送ることができるよう、相談・指導・援助を実施しています。 
センターの運営方針に基づき、地域関係機関との密接な連携、利用者の多様性や将来性を尊重した支援、職員の専門性向上とチームアプローチ、横浜市民にとって安心で効率的なサービスの提供を目指し、職員が一体となって取り組んでいる様子が伺われます。

 

● 世代を超えて、通園児と保護者を支える地域の支え合いが行われています 
センターでは、ボランティアの導入と育成を積極的に推進しており、現在、通園児の弟妹保育ボランティア、療育補助ボランティア、教材作成ボランティアなど、53名が登録し活動を行なっています。
なかでも、きょうだい児を安心して預けることができる弟妹保育ボランティアの存在は、通園児のきょうだいを持つ保護者にとっては大きな安心とともに、とても心強い存在となっています。
センターでは、園庭に隣接した場所に専用建物を設置してきょうだい児保育のためのスペース提供を行なうとともに、地域のボランティアグループと提携して「弟妹保育ボランティア・青いことり」を発足し、保護者の希望に基づいて利用調整のサポートを行なっています。センターの設立当初からの伝統で、父母の会の活動の一環として、ボランティアの参加人数の取りまとめなど、運営に協力しています。
また、子育てに悩む保護者のためのリフレッシュの場として、センター卒園児の保護者が近隣の地域ケアプラザで月1回カフェを運営し、通園を利用する保護者の相談に乗ったり、自身の経験を伝えるなど、世代を超えた交流も行なわれています。センターの利用を通じて保護者同士の連携が深まり、“地域から支えられ、やがて地域を支えるようになる”といった、地域福祉のコミュニティ形成にもつながると思われます。
子どもと保護者、家庭、そして地域を支えるセンターのこのような取り組みは、法人のビジョン「障害児・者が地域で育ち、地域で暮らすための支援」の具現化として、高く評価できるものと考えます。

 

2.独自に取り組んでいる点

 

● 保護者による家庭療育支援プログラムの実践に向けた、新たな取り組みを推進しています   
現在センターでは、平成28年度からの3か年を通じて、法人モデル事業である「エビデンスに基づいた家庭療育プログラム事業」に取り組んでいます。この事業は、発達障害のある子どもに対し、円滑なコミュニケーション技術を学ぶための方法を、保護者が家庭で実践できるよう支援することを目的としており、医療・福祉各々の専門的視点から検討を重ね、より効果的な子どもとの関わりや支援のあり方を模索しています。
過去の法人モデル事業では、平成24〜27年度の4か年に亘り、児童発達支援事業所「はらっぱ」の卒園児を対象とし学校や家庭での様子を追跡するためにアンケート調査の実績があります。「高機能発達障害児の療育を考える」をテーマとし、「はらっぱ」での療育の有効性の検証、就学後も継続的に子どもの成長を追うことで得た知識・経験・情報を今後利用する保護者および子どもに還元することを目的としていました。
療育を必要とする子どもの数が増加し、療育センターの診療が数か月待ちとなっている状況をはじめ、保育所や幼稚園への障害児の理解促進、学齢期を迎えた障害児の支援のあり方、学校との連携強化など、療育を取り巻く環境には現在課題が山積しています。また、療育を必要とする障害児の特性として、個別性に配慮した関わりが求められますが、施設・人員ともに不足しているのが実情です。
そのような中、家族を“共同治療者”として育成し、家庭内で実践可能な療育プログラムを構築することは、これからの療育のあり方を考える上で非常に重要であると考えられます。センターでは、療育プログラムの検討のほか、子どもの強みに着目したワークショップなど、家族向け勉強会の開催にも積極的に取り組んでいます。
このように、子どもの障害特性への配慮と家庭的で個別性を尊重したプログラムの実践、保護者の学びと支援を推進する取り組みは、当センターの独自性として高く評価できるものと考えます。
※法人モデル事業:職員の自発的提案を受け、先駆的な事業を法人予算で実施し、よりよい療育の実現の為に、その実績に基づき横浜市への情報提供・意見提案につなげています。

 

3.今後の取り組みが期待される点

 

● 療育センター全体にかかる課題解決に向けた、さらなる検討と改善が期待されます 
現在センターでは、新規利用者の待機解消に向け、申し込みや待機状況を確認しながら初診前の面接相談を実施しているほか、事例の緊急性など内容に応じて優先順位を調整し、キャンセル枠を活用するなどして待機期間の短縮化と効果的な診療の確保に努めています。また、申し込みから初診までの待機期間の保護者の不安解消のため、待機児育児支援事業「ありんこ」(集団療育開始前の期間の育児支援グループ)を実施するなど、診療を待つ保護者への育児支援と学習機会の提供を行っています。
療育を必要とする子どもの増加に伴い、療育センターのニーズが高まる中、サービスや支援の充実に向けて横浜市こども青少年局や各区の福祉保健センター、横浜市内の他療育センターと定期的に話し合いを行ない、横浜市全体の療育に関する課題や懸案事項、将来展望等について意見交換を実施していますが、診療待機の解消や幼稚園・保育所との連携、学校支援など、改善すべき課題は山積しています。当センターだけでなく横浜市全体の課題として、改善に向けたさらなる取り組みが大いに期待されます。

評価領域ごとの特筆事項
1 人権の尊重 ・法人として、理念「道なきところに道を」のもと、「障害児者の地域での育ちと暮らしの支援」「ライフステージに沿った伴走性の重視」「専門性の高いサービス提供に向けた人材育成」「医療・福祉の一体的で良質な経営」の4つのビジョンを明示しています。センターの運営方針として、「地域に開かれた療育センターを目指します」「選ばれる療育センターを目指します」「良質で安全な療育と効率をバランスよく提供します」の3つを掲げ、地域関係機関との密接な連携、利用者の多様性や将来性を尊重した支援、職員の専門性向上とチームアプローチ、横浜市民にとって安心で効率的なサービス提供の実践を明文化しています。
・子ども・保護者の権利に関する内部研修を定期開催しているほか、各部門で開催する事例検討を通じて、多様性の尊重と気持ちの理解について話し合いを重ねています。職員は優しい言葉と明るい表情で気持ちを受け止めながら、イラストや音楽を用いて子どもが親しみやすく理解しやすい関わりに配慮しています。また、プログラムも子どもの希望で選べるようにしたり、自分の気持ちを伝えられるよう支援を行なっています。
・子どもの虐待防止と対応に関する内容は、全体会を通じて所長から説明するほか、内部研修を開催して周知を図っています。虐待防止対応マニュアルを策定し、虐待の定義や考え方を明示しています。
2 意向の尊重と自立生活への支援に向けたサービス提供 ・子どもの年齢や障害特性に応じた様々な勉強会を通じて、障害の理解や保護者、家族への支援を行っています。子どもとその家族が地域生活に役立つ内容を組み込んだ保護者プログラムを実施しています。
・職員が保護者のストレスマネジメントについて学ぶ機会を設け、家族の精神的、心理的な負担、健康状態等を踏まえ、気になることはいつでも相談に応じることを伝え、実際に相談できる時間を作れるよう配慮しています。
・訓練指導等に関する説明は、現状だけでなく、目標の確認とプロセスを伝え、保護者にとってわかりやすく、先々の状態への不安に配慮した内容づくりに努めています。また、保護者からの質問には、具体的な説明を心がけ、適切に対応しています。
・個別支援計画は、保護者から「療育への願いアンケート」に家庭での子どもの様子や保護者の希望などを記載してもらい、保護者ニーズを把握した上で、全体の支援計画をもとに、一人ひとりの子どもとその家族の状況やニーズに応じて作成しています。支援計画には現状と課題、短期と長期の目標と具体的な手立てを記載し、児童発達支援管理者と園長が、内容が適切であるか確認しています。
3 サービスマネジメントシステムの確立 ・法人の苦情対応規程のほか、センター独自の「苦情解決の手順」を策定し、苦情受付の流れと対応手順を明確化しています。センター内の掲示とともに、通園部門の重要事項説明書にも附表「苦情受付から解決までの流れ」を添付し、苦情解決制度の積極的活用を働きかけています。
・意見箱の設置のほか、診療や通園の場面、送迎バスの車内などで随時保護者から意見を聞いています。寄せられた苦情・要望は主任会議等で検討するほか、苦情解決委員会を招集し対応を協議しています。横浜市福祉調整委員会など、外部の権利擁護機関への相談も可能であることを伝えています。
・事故対応マニュアルや安全点検マニュアル、通園部門の安全チェックリスト等を用いて安全な環境の整備・維持に努めています。
・センター内で発生した事例は、ケガ・ミス・ヒヤリハットの3つに分類し、月ごとに統計と分析を実施して事故の予防と発生防止に努めるほか、収集した統計データを主任会議で協議・検討し、センター全体で改善に取り組んでいます。ヒヤリハット事例の収集・分析は、職務上の危険を認識し改善に向けた具体策の共有化を図ることが目的であることを明示し、全職員の認識強化に努めています。事故防止に関するマニュアル・チェックリストは、部門ごとの実務に照らして毎年定期的に見直しを行ない、主任会議で確認の上適宜改訂を実施しています。
4 地域との交流・連携 ・幼稚園・保育所からの依頼に基づき、センターを利用していない子どもへの対応についても技術支援を目的とした巡回訪問を年間180回以上実施しています。幼稚園・保育所への助言は、発達が心配な子どもの理解と対応について、発達障害のとらえ方や考え方を具体的に伝えるなど、幼稚園・保育所の職員が受け入れやすい内容になるよう心がけています。
・各区福祉保健センターと療育相談実施上の課題を整理、検討する場として、各区福祉保健センターとの連絡会の場を設けて、職員との意見交換や技術支援を行っています。
・利用に関する相談はソーシャルワーカーが毎日対応し、子どもの状態や保護者の意向を充分聴取出来るよう事前予約制としています。
・通園児の弟妹保育、療育補助、教材作成のボランティア53名が登録して活動を行なっています。通園児の弟妹保育は、センターの園庭に隣接して専用建物を設置し、保護者の希望に基づいて随時日程調整して受け入れを行なっています。「ボランティアのしおり」に基づき、活動内容や注意事項、子どもへの配慮事項等について説明しています。ボランティア担当は通園部門の中堅職員を専任で配置し、毎月定例でボランティア連絡会を開催して意思疎通を図っています。現在、通園児の弟妹保育ボランティアの増員に向け、地域住民や福祉系大学・専門学校に募集を案内しています。
5 運営上の透明性の確保と継続性 ・法人及びセンターのホームページを開設して積極的な情報提供を行なっています。
・就業規則・服務規律において虐待やハラスメント等の不正行為を明示し、職員の不適切行為を禁止しているほか、就業規則、権利擁護、虐待防止等の研修を開催して、全体周知と理解浸透を図っています。ハラスメント防止マニュアル「なくそう!ハラスメント」を発行し、法人内の相談窓口を設置して随時相談可能な体制を整備しています。
・センターの運営に関わる様々な重要事項の検討は、安全衛生委員会や医療対応委員会、人材育成委員会等の検討チームを発足して各々の課題の検討を行なっています。
6 職員の資質向上の促進 ・障害児療育の普及啓発と社会貢献の一環として、保育士や養護教諭、行政や他療育センター等の関係機関から研修生を多数受け入れています。受け入れに際し、障害児支援の内容に加え、診療・通園・巡回訪問・相談支援など、療育センターの機能と目的を説明しています。
・「人事考課の手引き(H28年度版)・人事考課(意欲と能力評定)」に基づき、業務遂行能力や理解判断、改善提案、統率力など、職種や経験年数等に応じた役割や期待水準を明示して、全職員に周知しています。
・センター独自に「療育センター職員に求められるもの」を編纂し、利用者尊重の視点や専門性、チームワークなど、職員のあるべき姿を明示するとともに、研修ほか日常場面でも活用し、職員間の認識を共有しています。
・所長のリーダーシップのもと、診療・通園・地域支援など各部門が使命感を持って業務遂行に努め、全体的なモチベーションは高い状態となっています。また業務効率化や経費削減、職員の安全衛生の推進など、様々な場面で管理部門が環境調整と業務サポートを実施して、組織全体の士気高揚を図っています。

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